「スマートハウス」という言葉を聞くと、家電製品や照明、空調装置などがネットワークに接続され、声で操作してテレビのチャンネルを変えたり、外気に合わせて自動的に空調などを調整してくれるような家を想像するだろう。そうした機能を持つことが未来の家の条件であるなら、すでにほとんどのことが実現されている。一方で、わずか数日で完成できる家や、どこにでも移動できる家など、従来の概念を変えてしまいそうな未来の家も開発されている。

ロボットがブロックを積んで建てる家

ヨーロッパでは100年から200年の単位で、住居の建材が進化してきたという。今でもよく見られるレンガ造りの家は石造りの家が進化したもので、「耐熱性、耐火性に優れる」というメリットによって17世紀半ばからイギリスやオランダなど石材が豊富ではない国を中心に広まってきた。古くから続くレンガ造りの家の建て方は、職人が1つ1つレンガを積みながらモルタルで接着していく方法がとられているが、施工ミスによる破損や余分なレンガの廃棄などの無駄も生じている。そうした工事を、効率よくわずか数日でこなしてくれるロボットがある。

オーストラリアのFBRが開発したロボット「Hadrian X」は、家を設計する3D CADモデルからブロック構造を解析し、自律的にブロックを積んでいって家を作ってくれる。Hadrian Xは制御システムとブロック搬入システム、動的安定化システムなど複雑なコンポーネントが組み合わされた、トラック搭載型クレーンのような外観だ(写真1)。工事では人間が作業することを想定しなくてもいいので、Hadrian Xでの作業に合わせて独自に開発された、レンガの約12倍の大きさを持つブロックが使用される。

(写真1)自律的にレンガを積んで家を建ててくれるクレーン型のHadrian X(出典:FRBのYoutube動画より)
(写真1)自律的にレンガを積んで家を建ててくれるクレーン型のHadrian X(出典:FRBのYoutube動画より)

作業では投入されたブロックを1つずつ識別し、どこに並べるべきかを判断するが、必要に応じてブロックを1/4や半分、3/4などのサイズに切断する。それらのブロックが、実際に配置する順番に従って配置ヘッドへと運ばれ、プログラムされたロジックとパターンに基づいて並べられる(動画1)。

ブロックを積むだけの作業なら、従来の産業用ロボットでもそれほど難しくはない。だが、屋内での作業を前提に作られている産業用ロボットは、風などさまざまな自然環境の影響を受けてしまう屋外での作業は苦手だ。Hadrian Xはブロックを積む際に風や作業時の振動の影響などを受けないように、ブロックをしっかりと保持しながら1 秒に数百回もの補正を行って、正確な位置に配置している。また、従来からレンガの接着に使われてきたモルタルは、施工から乾燥までに24時間くらい必要になるが、Hadrian Xが使用する特殊な接着剤はわずか45分で硬化する上、モルタルよりも高い強度を誇っているという。

(動画1)「Hadrian X」がブロックを積んで家を建てる様子(出典:FBRのYoutube動画)

こうした効率化や24時間休みなく作業を続けることで、2019年には180平方メートルの敷地に、オーストラリアの建築基準を満たした3つのベッドルーム、2つのバスルームを備える家を3日で建てることに成功している。その後も国内外でさまざまな家の建築に関わっているが、FBRの目的は世界各地の住宅不足に対応するために、家の建築を自動化して大量生産することだ(写真2)。

(写真2)Hadrian Xは2階建ての家も建築可能になった(出典:FBRの発表資料より)
(写真2)Hadrian Xは2階建ての家も建築可能になった(出典:FBRの発表資料より)