ロボットの役割の一つは、人間が苦手な作業を代わりにやってくれること。特に、人間にとっては危険で過酷な環境での作業は、積極的にロボットに代行させたい。もちろん、そのためには過酷な環境での継続的な動作に耐え得るロボットが欠かせない。既にいくつかの分野で、そうしたロボットは実用化され始めている。

人が作業するには過酷で危険な環境。例えば超高温や超低温、放射能汚染といった環境である。落下の危険を伴う高所や、空気が薄い場所、水圧が高い深海なども挙げられる。それでも、こうした場所で監視、保守といった作業が必要になることがある。分かりやすい例は、発電所の炉、橋梁の裏面などの監視だろう。

こうした場面では、人が直接現場に行けないことが多い。そこでロボットの出番となる。ドローンを使った橋梁の監視などは好例である。パナソニックが2016年度内の事業化を目指しているダム水中点検ロボットなども同様だ。今回は、こうしたロボットのうち、広大な敷地に広がる大規模太陽光発電施設のソーラーパネルを自律動作で掃除するロボットを紹介しよう。主に、砂漠のような環境で使うことを目指したロボットを紹介する。ポイントは、過酷な環境で自律的に動き続けることである。

水を使わず、パネル上に堆積した砂を除去

再生可能エネルギーとして、大小含め日本の各地で見かける太陽光発電。出力が1メガワット(1000キロワット)以上の大規模なものはメガソーラーと呼ばれ、基幹電源としての活用に期待されている。

メガソーラーの建設には広大な用地が必要なため、日本では工場や製油所跡地、休耕地、山林、塩田など、僻地における土地の有効活用が考慮される、人里離れた場所に設置されることが多い。海外でもメガソーラーの建設は加速している。特に、人口増加が著しく電力需要が旺盛な中東地域では、将来の石油資源枯渇に備え、豊富な化石燃料の輸出収入があるうちに電源の多様化を図っておきたいなどの理由から、太陽光エネルギーへの投資が進んでいる。中東地域は天候の変化が激しい日本と比べ、平均日照時間が12時間もあるので効率的な太陽光発電が期待できる。今後も、豊富な資金を保有するサウジアラビア、UAE、カタールなどの産油国をはじめ、中東各国が、砂漠地帯における新たな大規模発電所建設を計画している。

そんな中東の砂漠地帯における太陽光発電の天敵は、砂である。ソーラーパネルの表面が砂で覆われると日射を遮ってしまい、発電効率が下がる。日本のように雨が多い地域では、パネルに傾斜があれば砂もすぐに流されてしまう。だが、ほとんど雨が降ることのない砂漠地帯では、太陽光パネルへの砂の堆積は深刻な問題であり、「1か月で10~15%くらい発電能力が失われる地域も少なくなく、1週間に1回は掃除が必要になる」(未来機械 代表取締役社長 三宅徹氏)。

これまで、中東地域ではソーラーパネルに堆積した砂を人がブラシやモップを使った手作業で除去していた。しかし、太陽光に最適な地域となると、日中の最高気温が40度を超える場合も多い。そういった環境での作業は過酷であり、気温が40度を超えると人の作業が制限される国もある。そんな過酷な環境において、人に代わってソーラーパネルに堆積した砂を除去するロボットを、日本のベンチャー企業である未来機械が開発した(写真1)。

(写真1)未来機械が開発したソーラーパネル掃除ロボット
小型で1人でも運べるように設計されている。(写真提供:未来機械)

ソーラーパネルに堆積した砂を落とすには、水で洗い流す方法を一番に思いつくだろう。しかしながら、砂漠地帯では水は大変貴重なので掃除に使うことはできない。そこで、未来機械が開発したソーラーパネル掃除ロボットは、特殊な回転ブラシで砂を掃き、ファンによってパネルの外まで砂を吹き飛ばす。ロボットは大人が一人で持ち運ぶことが可能な重さと大きさに設計されており、作業者がパネルの上に置いてスタートスイッチを押すと、敷き詰められたソーラーパネルの上を自動で走行して隅々まで掃除を行う。ロボットの連続稼働時間は1回の充電で最大約2時間。その間に約400㎡を掃除し、「1日6時間稼働させた場合、1台で3MW/週くらいの規模が掃除できる」(三宅氏)。砂の除去が終わると、自動的にその場で停止する。

海外の安価な労働力による手作業での掃除と比較しても、ロボットを利用する場合の方がコストを低く抑えられる。加えて、人が作業できないような炎天下の中でも安定した作業が行える。なお、バッテリー交換に要する時間は約1分で、交換作業は作業員が一人で行うことができる。このように、「水を使わず、自律制御によって自動的に掃除ができるソーラーパネル向けロボットは世界初」(三宅氏)。