技術面のカギはソーラーパネルの“端”を正確に見極めるセンサー

自律制御による掃除ロボットと聞くと、ルンバなどといった家庭用のものを思い浮かべるだろう。家庭用掃除ロボットは掃除をする範囲や形状がさまざまで、障害物を避けて自ら掃除マップを作成したりする。対してソーラーパネル掃除ロボットは、掃除をする範囲が四角形と決まっているので、パネルに沿うように規則的に動く。その動きそのものは単純で、パネルのエッジをセンサーで検出して端まで来たら方向転換する。しかし、傾きを持たせて設置され、さらに砂が積もったパネルはすべりやすく、ロボットも時折スリップしたりずり落ちたりするため、その修正が必要になる。

言葉にするとわりと簡単そうに見えるかもしれない。ただ、実際に砂漠のメガソーラー環境で、これを安定的に、しかも自律動作で実現するとなると、決してハードルは低くない。

実は、このセンサーの性能も、屋内で使用するものと屋外で使用するものとでは大きな違いがある。家庭用掃除ロボットに搭載されているセンサーを屋外で使用すると、光の外乱や気温の変化などさまざまな自然的要因によって誤動作が多発し、まともにセンシングができない。ロボットの開発時点で、屋外でまともにソーラーパネルのエッジが検出できるセンサーがなかったので、結局未来機械が独自に開発した。自社開発のセンサーは光の外乱や温度の変化にも強く、高温や砂が舞うような環境でも利用可能だ。自律走行を行うロボットには、カメラによる画像処理で移動を制御するものもあるが、ソーラーパネルを敷き詰めた状態では目印となるものがないので制御が難しい。また、砂漠ではレンズ表面に砂が付いてカメラが使えなくなる。最近ではレーザー光によって自律走行を制御するケースも多いが、「やはりレンズ表面に砂が付いたり、光や影が影響するので使いにくい」(三宅氏)。

ソーラーパネルには傾斜が付けられているが、滑りにくいタイヤの材質や形状、硬さ、重心のバランスなどを研究し、15度までの斜面に対応した(写真2)。複数のパネルの一塊(アレイ)の掃除が終わったらそこで停止し、アラームを鳴らしたり無線通信機能を使って作業者に知らせる。次のアレイに運ぶのは人手によるが、「少人数の作業者と複数のロボットを組み合わせた作業が一番効率がよい」(三宅氏)。

(写真2)広大なメガソーラーを自律走行で掃除するロボット
パネル面の傾斜は15度まで対応している。

また、砂を除去する際のキモとなっている特殊な回転ブラシと効率よく砂を吹き飛ばす仕組みについては、既に特許を取得している。なお、砂は非常に細かく、弱い力によってパネル上にくっついているため、ブラシで引きはがすと風によって遠くまで飛んでいく。

自律走行のプログラムにも独自のノウハウが盛り込まれ、アレイによって異なるパネルの数をあらかじめ入力することなくロボット自らが掃除範囲を判断する。砂の加減でタイヤがスリップした場合でも、センサーでずれを検出して自動的に修正するアルゴリズムが組み込まれている。

現在ソーラーパネル掃除ロボットは、カタールやサウジアラビア、UAEで試作機がノートラブルで動いているという実績がある。このため、「海外からの引き合いが既に多くあり、2017年1月から量産を始める」(三宅氏)。

橋脚やトンネル検査でも利用できるロボットも開発可能

砂漠のような過酷な環境でも自律移動ができるロボットであれば、日本においてもさまざまな工事現場で活用が可能だろう。既に屋内用では、高所で壁や天井のボード貼りを行うロボットや鉄骨を溶接するロボットなどが開発されている。しかし、屋外で活躍するロボットは少ない。ソーラーパネル掃除ロボットが持つ屋外でのセンシング技術や過酷な環境でも使用できるロボットを実現する設計ノウハウを生かせば、人間にとって危険で過酷な環境での作業を代行するロボットが開発できる。

例えば高速道路の橋脚におけるコンクリートの検査・補修工事では、現状は足場を組んだり幹線を通行止めにして作業を行わなければならない。そこで、ロボットが自律的に橋脚を登っていって検査を行うことができれば、足場を組まず通行止めも必要なくなるので、工期を短縮することもできるだろう。橋脚のクラックの有無を調べるには、すでにコンクリートを叩いて検査する装置があるので、未来機械ではそういった装置と連動して自律移動しながら検査を行うようなロボットの開発も視野に入れている。

また近年、天井の崩落による大規模なトンネル事故が顕在化している。トンネル内の天井崩落を防ぐには、コンクリートで作られた覆工板の表面や覆工板の目地部にできた損傷を確認する、3次元測定も有効とされている。未来機械ではレーザー光を使った画像処理によって、1mm以下の精度で大型の測定物の形状を測定できる3Dセンサーも開発しているので、自律移動ロボットと組み合わせれば、安全かつ正確なトンネル検査が実現できるようになるだろう。

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