新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、学生スポーツの活動が制限される状態が続いている。そうした中、222大学・34競技団体が加盟する一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)は4月27日、ラグビー日本代表をはじめ、国内外のトップチームが導入しているコンディション管理ソフト「ONE TAP SPORTS(ワンタップスポーツ)」の一部機能を加盟大学の運動部所属学生向けに採用し、今年末まで無償で提供することを発表した。選手のコンディションを遠隔で一元管理できるという特徴が、コロナ禍中のニーズをとらえ、感染予防にも役立っている。

大学の部活動に無償提供 コロナ対策で医療機関も利用

ラグビー日本代表の躍進をIT面からサポートしたことで知られる「ワンタップスポーツ」は、株式会社ユーフォリア(本社:東京都千代田区、共同代表:橋口寛氏、宮田誠氏)が開発し、2012年にサービス提供を開始した。現在、16競技の日本代表チームをはじめ、国内外で40競技・350チーム以上に導入されている。

スマートフォンなどを使い、選手が入力した体調やトレーニングの記録、食事内容などのデータを組み合わせて分析・管理でき、選手のコンディションをグラフなどで「見える化」したのが特徴だ。選手のデータはクラウド上に保存され、管理者の画面で全員のデータを見ることができるため、指導者が選手一人ひとりの状態を把握しやすい。怪我を予防しながら、練習メニュー策定、試合前のピーキング(パフォーマンスのピークを合わせること)など適切な指導につなげることが可能となった。

「見える化」の肝は、客観的なデータと主観的な情報の組み合わせだ。例えば、体重や体温、睡眠時間などの数値に加え、選手本人の主観的な体調や体の部位別のコンディションを「良い」から「悪い」までのスクロールバーで入力する。

コロナ禍でニーズが増えているコンディション管理ソフト「ONE TAP SPORTS(ワンタップスポーツ)」の画面イメージ(画像提供:ユーフォリア、以下同)

大学スポーツ協会(UNIVAS)がまず導入するのは、ワンタップスポーツの一部を切り出した簡易な体調チェック機能。新型コロナウイルスの感染拡大対策に絞ったもので、入力できるのは、体温、倦怠感と咳の有無、喉の違和感、嗅覚・味覚の異常、家族や同居人の発熱などの症状の6項目。異常を検知すると、管理者が確認できる画面に赤くアラート表示され、即時にメールが届く。

新型コロナウイルス感染拡大対策に、簡易な「体調チェック機能」を無償提供している

今夏には、睡眠時間や睡眠の主観的な質、体重の変化、体の部位別の違和感などを入力し、怪我予防などにつながる選手のコンディション全般を可視化する機能も無償で利用できるようにする。学生主体の体制で運営されていることが多い大学スポーツにおいて、これまで聞き取りなどで選手のコンディションの情報を収集し、データを入力するなどして管理していた負担を軽減するだけでなく、指導者や選手のコンディション管理に対する意識を向上させ、怪我の防止につなげる狙いがあるという。

実は新型コロナウイルスの感染拡大対策に絞った簡易な体調チェック機能は、ユーフォリアが一般向けに無償で提供しているものだ。感染拡大に伴い活動自粛を余儀なくされた競技団体やスポーツチームの要望を受け、3月6日にコンディション管理のデータ入力項目に「体温」や「咳、倦怠感の有無」などを加える方法を示した案内をホームページ上に掲載したところ、高校・大学の部活動、プロ野球、Jリーグ、Bリーグなどのプロチーム、医療機関、介護施設などから「うちでも使えないか」という問い合わせが多く寄せられた。1カ月無料のトライアルを行っていることもあり、登録チームが大きく増え、登録選手数は倍増したという。切実なニーズを察知し、社会貢献として生まれたのが簡易な体調チェック機能だった。

ユーフォリア代表取締役の宮田氏は、このような反響について「コロナ禍により、体調というあいまいなものをきっちり数値化して把握することの重要性が顕在化したのだと思っています」と指摘する。思わぬ形で、トップアスリートだけではなく、広くニーズが生まれている、体調の「見える化」。宮田氏にその可能性を聞いた。