サイクリングの裾野拡大には女性、E-BIKEがカギ

実は長距離を高速で走る自転車の愛好者は男性がほとんどで、サイクルツーリズムのマーケットの拡大には女性サイクリストを増やすことが課題とされてきた。しかし、初心者でも安心して走りやすい環境を整えているしまなみ海道では、女性もじわじわと増えているという。

シクロツーリズムしまなみが2015年から始めた女性限定のサイクリングツアー「シクロ女子旅」は20~30名の定員がすぐに埋まってしまうほどの人気で、リピーターも多い。北海道から九州まで全国から集まる女性は20代から60代まで幅広く、初めてスポーツタイプの自転車に乗る人がほとんどだという。ツアーは「無理のない距離」「普段着OK」「ひとりでも気軽に参加」を打ち出し、ガイドも女性が務める。地元グルメやスイーツを味わうといった女性にうれしい体験を盛り込みつつ、1泊2日で90㎞程度を走る本格的なものだ。

(写真提供:シクロツーリズムしまなみ)
(写真提供:シクロツーリズムしまなみ)
人気の「シクロ女子旅」。仲間との出会いもサイクリングの魅力の一つだ(写真提供:シクロツーリズムしまなみ)
人気の「シクロ女子旅」。仲間との出会いもサイクリングの魅力の一つだ(写真提供:シクロツーリズムしまなみ)

「女性が自転車を敬遠する理由は、日焼けやゴリゴリ走る男性と走るのが嫌、メカニックが苦手、ということが多く、その問題を解消すれば走ってみたいという女性は少なくないと思います」と山本さん。日焼け対策やアンダーウエアを含めた季節ごとの快適な服装は、ガイドからもアドバイスしているが、同じ悩みを持つ参加者同士の会話の糸口にもなっているという。「女性ばかりだからこそ頑張れる、という声も多いです。皆で走りきった達成感とガイドも含めた仲間づくりによって、自転車を楽しむ女性が増えることに手応えを感じています」と話す。

サイクリングの裾野を広げる、もう一つのカギとなりそうなのが、スポーツタイプの電動アシスト付き自転車(E-BIKE)だ。欧米で爆発的に人気となり、日本で大手メーカー各社がそろって参入したことから、2018年が日本におけるE-BIKE元年と言われている。しまなみ海道では2019年7月からメーカー8社の協力を得て、公共のレンタサイクルで、通常の相場より価格を抑えた6時間3000円で貸し出す実証実験を開始した。

愛媛県によると、利用者のアンケートでは4割が女性で、特に若い女性が多い。8割程度はE-BIKEに乗るために来ていた。「夫婦でサイクリングするために借りた」「後遺症のため力強く踏み込めないが、E-BIKEで楽に走れた」など、予想以上に高評価だったという。また、トリップアドバイザーの「旅好きが選んだ! 日本の展望スポット2017」で2位になったほど、絶景のパノラマが開ける亀老山(標高307.8m)をE-BIKEで登るツアーを企画したところ、定員20人に100人もの応募があった。

レンタサイクルで借りることができたE-BIKE(写真撮影は筆者)
レンタサイクルで借りることができたE-BIKE(写真撮影は筆者)

スポーツタイプの自転車と縁のない筆者も初めてE-BIKEに乗り、あまりの快適さに驚いた。こぎ出しに全く力が要らず、かなり急な坂でも楽々。予定の約20㎞の行程をあっという間にクリアしてしまったため、近くの展望台まで寄り道したほどだ。初心者や体力に自信のない人でも、E-BIKEがあれば山登りやロングライドに挑戦できる。

愛媛県ではしまなみ海道、県内での取り組みをさらに四国全体に広げ、他の3県と連携して「四国一周1,000キロルート」を策定した。5㎞ピッチで敷設する路面案内ピクトも今年度末までに整備が完了する予定だ。お遍路をモデルに、四国一周サイクリングにチャレンジしている人が一目でわかるよう、登録すれば専用のサイクルジャージを進呈している(登録料8000円)。ルート上にある29カ所の道の駅のスタンプを集めるか、GPS付きサイクルコンピューターで証明されれば、完走証とバックル式記念メダルを贈呈する。3年以内であれば、複数回に分けてチャレンジできる。お遍路のお礼参りのように、四国一周後に「聖地」であるしまなみ海道の多々羅しまなみ公園を訪れれば、記念品をプレゼント。関係の深い台湾一周と両方を達成した人には、特別なジャージを贈っている。台湾など海外の旅行会社が四国一周のツアーを組むことも増えてきたという。

四国一周にチャレンジする若者たち(写真提供:愛媛県)
四国一周にチャレンジする若者たち(写真提供:愛媛県)

「中国地方、瀬戸内、淡路島など、さまざまなところで自転車道を広げる構想があり、最近では大分県からも視察に来られました。サイクリストの方に県境は関係なく、同じフレームで発信することによってターゲットとする人たちに響きやすくなりますから、我々も大きな広域連携ができると面白いと考えています。交通全体の中で自転車のポジションを上げていくことも含め、いろいろな県と手を組んで進めていきたい」と河上課長は話す。

インバウンド効果や地域活性化への期待だけでなく、生涯スポーツ、環境にやさしい移動手段としても、見直されている自転車。広域的な連携でサイクルツーリズムを突き詰めた先に、より豊かな日本の地域の未来が見えてくるのかもしれない。