新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的な感染症の流行)は、スポーツ産業に大きな変革を迫っている。米国サンフランシスコと東京を拠点に、シード/アーリーステージのスタートアップに投資するスクラム・ベンチャーズ アソシエイトの黒田健介氏によれば、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」の“コロナ時代”に浮上してきた新たなトレンドは5つあるという。今回はその内、観戦体験の「分散化」とスタジアムの「スマート化」を解説してもらう。

観戦体験の「分散化」

世界のスポーツリーグでは、試合が再開された後も感染拡大を防止するため、しばらくの間は無観客あるいは観客数を制限した興行を余儀なくされる。

その環境下では、「分散化」した観戦体験をどうやって実現していくかが大きなテーマになる。言い換えると、多くの人が直接スタジアムに行けない状況下で、リアルタイム性や臨場感、選手や他の観戦者との一体感を伴った観戦体験をいかにつくり上げることができるか、に主眼が置かれるということだ。

まだ実証段階のものも多いが、この領域ではVR(仮想現実)や5Gといった新たなテクノロジーに期待がかかる。

NTTドコモと電通は2019年、VR空間内のバーチャルVIPルームでスポーツ観戦ができるサービス「docomo Sports VR powered by DAZN」を期間限定で提供した。ユーザーはスマートフォン(スマホ)やタブレット、VR用のHMD(ヘッド・マウント・ディスプレー)でバーチャル空間にログインし、任意のタイミングで複数の視点切替えが可能な「マルチアングル視聴」や、リアルタイムで更新されていくプレイ情報を確認しながら観戦できる「スタッツ表示」といった機能を利用することができる。

また、NTTデータは米大リーグ(MLB)と提携し、 「Ultra Reality Viewing」 と呼ばれる技術を駆使して高精度の4K映像を超ワイド映像に合成して遠隔地に伝送する取り組みを進めている。

近い将来、これらの技術が商用化されれば、少人数かつ遠隔地で臨場感のある観戦体験を楽しむことが可能になるだろう。もはやスタジアムという実際の“場所” にこだわる必要はなくなるのかもしれない。