同部マネージャーの中川善貴氏は、こう補足する。「スポーツというのはパワーワードで、スポーツ団体で働くことに関心がある人は非常に多い。しかし、事業を協業した株式会社ビズリーチ(本社:東京都渋谷区)の転職サイト会員へのアンケートでは、スポーツ団体への転職にあたり半数以上が現在の年収と同等かそれ以上を求めており、やりがいだけで訴求するのは難しくなっています」。また、スポーツ団体にとっても、正社員として何百万円もの給与を支払うという意思決定は慎重になる。一方、副業・兼業であれば数十万円の単位で契約することも可能だ。「マッチングのハードルを下げることにもつながります」(中川氏)。

2019年度の事業で人材を募集したのは、中央競技団体4団体、地域のプロクラブ・リーグ8団体。営利団体ではない中央競技団体がビジネス人材を求めることについて意外に感じる向きもあるかもしれない。だが募集職種を見ると、例えば日本陸上競技連盟は「陸上界の発展を考える事業計画推進ディレクター」、全日本空手道連盟は「ブランディング戦略ディレクター」。新しい事業を戦略的に練り、実行できる計画に落とし込むといった部分で、ビジネス人材が備えるスキルや異なる視点を必要とするケースが多かったという。

一方、プロ野球独立リーグ「ルートインBCリーグ」を運営するジャパン・ベースボール・マーケティングなどプロクラブ・リーグ8団体では、マーケティングストラテジスト、営業戦略マネージャー、事業戦略ディレクター、集客戦略プランナー、顧客データアナリストなど、組織の課題に応じ、さまざまな職種にニーズがあった。

2019年度事業の募集に際しては、まずPwCあらたが経営課題を分析し、募集人材に期待される業務を明確化する段階までを支援。人材関連サービスを提供するビズリーチが人材要件や求人票への落とし込みを支援した。公募は173万人以上(2019年9月時点)が登録するビズリーチが自社のサイト上で実施。「スポーツ団体」「副業・兼業」をキーワードにマッチングを実施した。

PwCあらたの中川善貴氏(写真提供:PwCあらた)

参加した団体からは「自分たちではリーチできないハイレベルな人材と接点が持てた」と好意的な声が多かったという。「団体によっては、多数の応募者と会って今回限りではないネットワークを作ったり、潜在的ファンとしてチームをより深く知ってもらうため、説明会を開いたりメールを送ったりしていた経営者さんもいらっしゃいました。採用に至らなくても、応募者との対話を通して事業のアイデアや経営課題の示唆が得られ、とても良かったという声も非常に目立ちました」と中川氏。

多くの団体は副業・兼業での人材の受け入れは初めて。受け入れ体制の未整備などの理由で採用を見送った団体も一部あり、採用にあたってポストと権限を新設するなど既存の組織体制を見直した団体も半数に上った。スキルの高い人材に十分活躍してもらうためには、スポーツ団体側に副業・兼業の外部人材との関係性をいかに築き、活躍の場を提供できるかといった能力も求められている。

これまでのマッチングで得た感触について、大久保氏は次のように語る。「組織の課題や、支援が必要な事項が明確な団体は、求職者に対する具体的なイメージが持てるのでマッチングの精度は高くなります。一方、課題解決のために何をするべきなのか、そもそも何から着手すればいいのか、という点から一緒に考えてほしいという団体もあります。その場合は外部人材に任せたい内容の抽象度が増すので、幅広いスキルを備えた人材がふさわしいということになります。このような実態を踏まえますと、組織の成熟度に合わせたマッチングを実施することが重要だと感じています」。今後はビジネス人材が実際に働いた結果のフォローアップも実施しながら、ビジネス人材がスポーツ界で活躍できるモデルを構築していくという。

2020年度の事業では第1回が9月9日~10月6日まで、中央競技団体やプロクラブ4団体6ポジションについて、ビズリーチのサイト(https://www.bizreach.jp/job-feed/collaboration/sports_01。10月6日まで公開)上で公募を行っていく。今回は副業・兼業の募集だけでなく、正社員の募集も行っている。第2回は9月末に団体公募、12月頃に人材公募の予定。手を挙げた団体は、コロナ禍でスポーツビジネスが停滞する中でも、外部から人材を入れて新しいことに挑戦しよう、変えていこうという前向きな意思を持っている。ヴォレアス北海道のように、未来につながる出会いに期待したい。