雲梯(うんてい)、ボルダリングウオール、トランポリン器具、さらにはブランコ、滑り台まで、子どもたちが楽しみながら運動できる遊具を自宅内に設置する人が増えている。のびのび遊べる場所や時間、仲間が減り、子どもたちの体力や運動能力の低下が懸念される中、「少しでも運動する機会を与えたい」と考える親の意識の表れだ。新型コロナウイルスの脅威によって、その傾向はさらに強まる。子どもの運動能力は自宅でも伸ばすことができるのか。住まいの可能性を探った。

リビングに雲梯 池江選手の影響で人気沸騰

「天井に取り付けるタイプの雲梯は4、5年前から造り始めました。お子さんのために自宅に設置を考える方がほとんどで、競泳の池江璃花子さんが幼少期からリビングに設置した雲梯で鍛えていたという話が広まってから、注文が急激に増えました。さらにコロナ禍で人気に拍車がかかっています」

そう話すのは、佐賀県唐津市にある中島鉄工建設の2代目、中島博之さんだ。二級建築士の資格も持つ中島さんは、家族経営の鉄工所内に設計事務所「スチール空間設計」を立ち上げ、客のニーズにきめ細かく応える鉄製品を製作する。製品は雲梯のほか、懸垂棒、はしご、階段など。ホームページを見た工務店や設計事務所、個人客からの問い合わせは月100件以上に上り、雲梯は11月1日現在、納期まで7カ月待ちという人気ぶりとなっている。

施工例の一部。外出の機会が少なくなった子どもたちにとっては楽しい仕掛けだ(写真提供:スチール空間設計)
施工例の一部。外出の機会が少なくなった子どもたちにとっては楽しい仕掛けだ(写真提供:スチール空間設計)

バーにぶら下がりながら腕の力で進む雲梯運動は、握ったものを離さない受動握力やバランス感覚を鍛えるほか、自然と胸郭が広がる動きのため、呼吸機能の改善や肩関節の可動域を広げる効果もあるとされる。自宅を新築やリフォームする際に取り付けたいという依頼が多く、スポーツジムや高齢者福祉施設からの引き合いもある。同社が施工まで行うこともあるが、製品の発送は全国に対応しており、ヨーロッパや米国、香港、台湾など海外からも依頼が舞い込むという。

雲梯を製作するきっかけは、大手ハウスメーカーからの「造れないか」という相談だった。同社が製作する雲梯は、はしごのような形をした一体型のタイプだけでなく、1本1本のバーを好みの間隔で取り付けられるタイプもある。サイズはミリ単位で対応。どんな色でも塗装可能で、ツヤあり・半ツヤ・3分ツヤ・ツヤ消しなども選べる。インテリアとしても楽しめるスタイリッシュなデザインは、すべて客の依頼に対応する中で生まれた。

スタイリッシュなデザインでインテリアとしても映える(写真提供:スチール空間設計)
スタイリッシュなデザインでインテリアとしても映える(写真提供:スチール空間設計)

「取り付けについては、天井の下地がしっかりしていないと設置できませんから、工務店さんやハウスメーカーさんに相談してくださいと伝えています。ただ、工務店さんも『取り付けたことがない』と戸惑われることがほとんど。そういう場合には、お客さんが提供してくださった下地の写真などをお見せしています」と中島さん。

同社のポリシーは、個人でも工務店でもすべて同じ価格で販売すること。直接取引にこだわり、客との関係性を大切にする誠実なモノ造りの姿勢に感銘を受け、設置後に「これから検討する方の参考になれば」と厚意で写真を寄せる客も多いという。雲梯を取り付ける場所はリビングや廊下などさまざま。ロフト用のはしごやボルダリングウオール、既製の縄ばしご、ターザンロープと組み合わせるなど、客の自由な発想で施工例が蓄積され、ホームページで写真を見た人がまたアイデアを膨らませて注文する。その好循環が、同社製品の人気の秘密でもある。

「筋トレブームのせいか、最近は懸垂棒の注文も増えています。雲梯や懸垂棒は比較的場所を取らずに設置できますから、人気なのかもしれません。7カ月待ちでも楽しみに待ってくださるお客さんが多いのは本当に有り難いですね」