ハウスメーカーも提案 身体を動かす遊び空間のある住まい

コロナ禍によって家で過ごす時間が増え、住まいに求められる機能が変化する中、ハウスメーカーも新しい住まい方の提案を始めている。

パナソニック ホームズが提案する遊び空間の施工例。子どもたちの健やかな成長を育む提案は、「住まいは人間形成の場」という創業者、松下幸之助の理念の延長線上にあるという(写真提供:パナソニック ホームズ)
パナソニック ホームズが提案する遊び空間の施工例。子どもたちの健やかな成長を育む提案は、「住まいは人間形成の場」という創業者、松下幸之助の理念の延長線上にあるという(写真提供:パナソニック ホームズ)

パナソニック ホームズは今年6月からすべての戸建て住宅で、「おうち時間を楽しもう!」をコンセプトにした間取りや空気環境、IoT(モノのインターネット)技術活用の新提案に力を入れている。間取りプランの一つとして重視しているのが「家の中でもいっぱい遊べるプレイスペース」だ。多目的な遊びスペースとして、リビング横に6畳ほどの畳コーナーや広めの土間を作ることを提案しており、小さな子どものいるファミリーに好評という。遊びスペースにはスピーカー付きの照明を取り付け、スマートフォンなどとつないで好きな音楽を流すこともできる。

「コロナ禍の長期化により『おうちキャンプ』や『おうちヨガ』など、外で楽しんでいたことを家でも実現しようとしている方がとても増えている印象です。弊社のアンケート調査(※図参照)でも、自宅内で実施し始めたこと、楽しんでいることとして最も多く挙げられていたのは『自宅内での運動やトレーニング』でした。大ブームとなっている敷地内アウトドア、運動・宅トレなど、家族でいろいろな楽しみ方ができるスペースは、特にお子さまのいるご家族の住まいに必要な空間だと考えています」。パナソニック ホームズ商品開発企画部戸建商品企画課の石原奈実さんはそう説明する。

パナソニック ホームズが実施した「最近の暮らしニーズの変化」調査(WEBアンケート、全国30~40代、子どものいる戸建て居住の既婚男女計300人対象、男女とも有職者でコロナ禍での在宅勤務あり、2020年7月22~30日)より(出所:パナソニック ホームズ)
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パナソニック ホームズが実施した「最近の暮らしニーズの変化」調査(WEBアンケート、全国30~40代、子どものいる戸建て居住の既婚男女計300人対象、男女とも有職者でコロナ禍での在宅勤務あり、2020年7月22~30日)より(出所:パナソニック ホームズ)

実は同社が、こういった「遊びスペース」を提案するのは、コロナ禍に始まったわけではない。2018年10月から発売している子育て世帯向け戸建て住宅「KODOMOTTO(こどもっと)」でも、子どもの身体と生活の基礎を育む場所として、運動意欲を育てるスペースの設置を提案してきた。

学研ホールディングスと共同開発した「KODOMOTTO」は、学研の学びや子育てのノウハウを住まいに反映させた試みだけに、提案の根拠が明確だ。

「学研によると、子どもが生まれてから小学校低学年までに身につけさせたい能力として大切なのは2つ、運動機能と正しい生活習慣だそうです」と石原さん。運動機能については、文部科学省が2012年に出した幼児運動指針で、幼児期にはさまざまな遊びを中心に毎日合計60分以上楽しく身体を動かすことが推奨されている。脳や神経系の細胞は5歳までに80%、12歳までに100%完成するというデータもある。急激に細胞が発達する幼児期に多くの運動経験を積み、脳にさまざまな動きの神経経路をつくっておくことが、その後の運動能力の向上にもつながるという。

とはいえ、共働きが増え外遊びに連れ出す時間がとれなかったり、少子化のため集まって遊ぶ仲間が少なかったりといった理由で、子どもが外遊びをする機会は減少している。全国の保育園児567名を対象とする学研教育総合研究所の調査(2017年)では、園児が外で友達と遊んでいるのは1週間で平均1.2日。園以外で「外で友達と一緒に遊ぶことはない」という回答も55.6%に上っている。

「子どもの遊びもゲームなどインドアが多くなっていますし、車やエスカレーター、エレベーターの利用も当たり前になっています。加えて、猛暑など気候の変化によって外で遊べない日も年々増えています。そのような状況にあって、せめて家の中に身体を動かすきっかけになるような空間を作り、身体を動かすことは楽しいという運動意欲を育んでもらいたいと考えています」(石原さん)

パナソニック ホームズ商品開発企画部戸建商品企画課の石原奈実さん(写真提供:パナソニック ホームズ)
パナソニック ホームズ商品開発企画部戸建商品企画課の石原奈実さん(写真提供:パナソニック ホームズ)

「KODOMOTTO」や「おうち時間を楽しもう!」では、柔らかい床素材や、ボルダリングウオール、秘密基地のようなスペース、お絵描きできる壁なども提案している。特に「つかむ力を育むことが大切」(学研)という理由もあってモデルハウスなどに使用しているボルダリングウオールは、実際に導入する人も少しずつ増えているそうだ。石原さん自身の実感では、購入した自宅の遊びスペースやリビングにトランポリン器具を置いている人がとても多いという。

自宅の遊び環境が将来の運動能力を左右する。コロナ禍をきっかけに、そんな時代が来るかもしれない。