小谷氏は、スマホなどのテクノロジーによって手軽に撮影できるようになり、アーティスティックスイミングの練習が大きく変わったことを紹介した。「複数の機器で様々な角度から、また水中からも撮影ができます。どこから見ても動きがシンクロできるように確認しながら練習することが可能になったので、競技のレベルは大きく向上しました」(小谷氏)。

澤邊氏は車いすユーザー、かつデジタル・クリエイティブの分野で数多くのプロジェクトを手がけてきた経験を踏まえ、「人類全体が持っている課題にテクノロジーを使って挑むフェーズが来たと感じています」と語る。「これから10年で物理的な壁の大半はテクノロジーで超えられるでしょう。一方で精神的な部分、例えば差別やジェンダーなどテクノロジーでは変えられない部分については、人間が努力しなくてはなりません。特に、テクノロジーによって増えた可処分時間をどう過ごすかは、大きな課題だと感じています」(澤邊氏)。

横瀬氏は「テクノロジーによって世界中の競技がいつでも簡単に見られるようになりました。一方で、『自分でサッカーをする』といった能動的なスポーツの体験は増えていないように感じます。(SCMへの参加を通じて)もっと体を動かしたり、周囲の人とコミュニケーションを取ることに繋がるようなテクノロジーの活用の仕方を考えられたらと思っています」と語った。

川合氏はパナソニックで開発中のSpoditについて紹介した。Spoditは試合の撮影、編集、配信を自動化するプラットフォームだ。川合氏は「お子様のスポーツを熱心に応援されているご両親がターゲットのサービスです。現在コロナ禍で観戦が制限されていますが、以前からお子様の試合を現地で観戦できず歯がゆい思いをしていたり、現地に行ったとしても撮影で観戦や応援に集中できないという親御さんがたくさんいらっしゃいました。そういった方をサポートしたいと考えています」と語った。

子供にコミュニケーションの機会を提供したい

次にSCMの中国、欧州、米国の各代表のビデオメッセージを流し、最後に日本代表の横瀬氏が登壇した。横瀬氏は「他の代表と違い、私は個人で参加しています。ですので私のプロジェクトは、自身の記憶や思い出に立脚したものになっています」とアイデアの一端を説明する。

SCM日本代表の横瀬健斗氏(京都工芸繊維大学)
SCM日本代表の横瀬健斗氏(京都工芸繊維大学)

各国の代表は、自身のアイデアについて「誰が壁を超えるための支援をするものなのか」というターゲットを設定している。横瀬氏が設定したターゲットは子供だ。

横瀬氏は「子供の頃、サッカーをやることが周囲の人とのコミュニケーションにつながりました。振り返ると、それが自分にとってのスポーツの一番の魅力だったと思います。プロジェクトでは、現在を生きる子供たちが自分と同じようにスポーツを楽しめる機会をもっと作れないかと考えています。最終プレゼンテーションで魅力的にお伝えできるよう、プロジェクトを進めていきたいと思っています」と意気込みを語った。

SCMの公式ページでは、代表者の氏名のほか、これまでの経緯や今後のスケジュールも掲載している。