年齢問わず、国境の壁をも越える「競わないランニング」

志水氏によると、GPSアートのイベントに参加する人は40~50代の男性が多いそうだ。加齢による体力の低下に伴い、タイムを追えなくなってきた人が新しいランニングのやりがいを探して参加しているケースも多く、「街巡りも楽しめるGPSアートは、まさに中高年に突き刺ささっているイメージがあります」と志水氏は言う。

ただ、地図を渡した時に自由な発想でどんどん絵を描けるのは、やはり頭の柔らかい子どもたち。志水氏がSNS上で開催している「全国GPSアート選手権」2021夏大会でグランプリに輝いたのは小学1年生の男の子だ。イベント参加をきっかけにGPSアートの作図にはまったそうで、夏休みの自由研究として約11キロメートルを自転車で巡り、アニメのキャラクターを描く大作を完成させた。

活動は海外にも広がっていた。2018年の台湾地震後に台湾を巡って応援メッセージを届けたり、ランニングアプリ「adidas RUNNING by Runtastic」のアンバサダーとしてヨーロッパで作品を作ったり。特に台湾では志水氏の活動が全国ニュースとして取り上げられ、「花蓮加油(花蓮頑張れ)」「日本♡台湾」の作品に、合わせて約35万件もの「いいね」が集まった。そんな志水氏にとって、外出自粛が広がったコロナ禍の社会情勢は、当初はモチベーションを低下させるものでしかなかった。

2021年10月16日、京都・吉祥院で行われたGPSマップ作り&ウォーク体験イベント。6グループに分かれて1文字ずつ描き「KYOTO♡」を完成させた(写真提供:志水氏、画像中のスマホのマップデータ:©Google)
2021年10月16日、京都・吉祥院で行われたGPSマップ作り&ウォーク体験イベント。6グループに分かれて1文字ずつ描き「KYOTO♡」を完成させた(写真提供:志水氏、画像中のスマホのマップデータ:©Google)

しかし、SNSの「#gpsart」や「#gpsartrun」といったハッシュタグを見ると、世界中から投稿が爆発的に増えていることに驚いたという。さまざまなイベントが中止になり、在宅ワークが広がる中で、「運動不足を解消したい」「モチベーションを維持するため、1人でも楽しめる新しいアクティビティに挑戦したい」といった人々のニーズをGPSアートはとらえていたのだ。

さらにはオンラインで開催された京都マラソンで、GPSアートの作品を募集するイベントが行われるなど、オンライン上のイベントコンテンツとしても注目されるようになった。先ほど紹介した志水氏主催の「全国GPSアート選手権」2021秋大会では、優秀作品に対して贈られる景品に東北の物産を数多く準備した。コロナ禍でもみんなでつながって楽しみながら、復興支援や町おこしにもつながるイベントにしていきたいという。

「最近は地域防災とGPSアートを結びつけて取り組もうとする人も増えています。僕自身、阪神淡路大震災を経験しているので、災害が起きて逃げるときに地域の道を知っておく大切さは実感しています。社会のあらゆる課題を解決するためにみんなで取り組まなければいけない、というSDGsの考え方がありますが、『みんな』というのは動ける世代だけではなく、小さな子どもや高齢者、あらゆる人が参加できるほうがいい。そういった意味で、国境を越え、あらゆる人が参加できるスポーツは社会課題解決に必要な力になっていくのではないかと僕は思っています。GPSアートを軸に地域やさまざまな団体などとつながりながら、大きなところでは世界平和に至るまで、社会課題を解決するスポーツにしていきたいですね」と志水氏は夢を語る。

社会課題を解決するツールとしても大きな可能性が広がるGPSアートの世界。SDGs時代にふさわしいスポーツの一つの姿なのかもしれない。

最後に、志水氏にGPSアートのコツを教えてもらった。GPSアートにトライしてみたい方にはぜひ、ご一読いただきたい。

志水氏に聞くGPSアートのコツ

【作図のヒント】
1.まずは簡単な図形からチャレンジ
(例:「A」、四角3つで作るハート、「田中」など)
2.複雑なものが描きたくなったら、川のカーブを利用する
3.数をこなす

「距離が長すぎると走るのが大変になるので、初心者は2~3キロメートル程度の移動距離で作図するのがベスト。『キョリ測』というインストール無料のアプリで距離を計測することができますが、最初のうちは距離の概算がしやすい自分がよく知る地域で作図するのがお勧めです。1と2を組み合わせれば、いろいろな形が描けるようになってきます。他の人の作品の真似から始めても良いので、楽しんでチャレンジしてください」(志水氏)

【作図の注意点】
1.トンネルや高層ビルに囲まれた場所はGPSが正しく機能しないことがあるので、避ける。
2.幹線道路を横断する際は、信号があって渡れるかどうか、事前にGoogleの「ストリートビュー」で確認しておくと良い。
3.安全に走るために、書き順をあらかじめきっちりと決めておく。

【走る時の注意点】
1.安全第一。歩きスマホ、走りスマホは絶対にしない。
2.地図はスマートフォンの画面のみだと小さいので危ない。紙に印刷しておくのがお勧め。

「スマートフォンを見るときは必ず止まってください。慣れてくると、だんだん道を暗記できるようになってきます。安全を意識すること自体も脳トレになりますよ」(志水氏)