データ駆動型社会、3つのキーワード

 近年、政府資料や様々なメディアでも話題に上る「データ駆動型社会(データドリブンソサエティ)」。神武氏は「データを集めて分析し、従来は見えなかったもの・見づらかったものを見えるようにしたり、未来を予測できるようにしたり、人の生活をより便利にする社会」と説明する。

「例えば街中を走るタクシーにGPSを搭載して100万件の走行データを集めたとします。するとタクシーの走行状況が見え、どこで渋滞が起こっているかがわかるようになります。そのデータを他のデータ、例えば天気のデータと掛け合わせると、“雨が降るとこの道が渋滞しやすい”といったことが予測できるようになります。それらのデータを基に“信号機が切り替わるタイミングをデータに合わせて変えよう”であるとか、“都市計画を見直そう”といったこともできていくようになります」(神武氏、以下同)

 実際にデータを活用して人々の生活を快適にした事例として紹介したのがマレーシアでの取り組みだ。定期的にマレーシアを訪れ、ジャングルで植樹をする人々の手伝いをしているという神武氏。かつて現地では、1ヘクタールあたり130本ほどの木を植えることができるが、“広いから”という理由でいいかげんに測量をして、結果的に「100本ほどしか植えないという状況だった」という。それでは生産性の向上が見込めないため、様々なテクノロジーを駆使して、より正確に、より簡単に、最適な植樹をできるようにしたという。

マレーシアの植樹で使用しているデバイスと働く人のイメージ図。単にテクノロジーやデータを用意すればいいわけではなく、「いかにやりたいと思わせるか」も重要であると、神武氏
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 「まずはドローンと地球観測衛星を用いて地形に関するデータを収集しました。そのデータを分析して植樹する上で最適な配置を計算します。植樹する人はスマートフォンのようなデバイスを身に着けてジャングル内を歩き、最適なポイントに到達すると“ここに植えてください”とデバイスにメッセージが流れるようになっています。以前は3人でやっていた作業が1人で可能となった上、精度も大きく上がったので、生産性も収益も向上しました」

 まさしくデータを用いて利便性を向上させたわけだが、こうした取り組みを推進するには「俯瞰(ふかん)的観測」「掛け算」「人と事業の両立」の3つが必要になると説明する。

 「どのような課題があり、それに対してどんな策を講じるべきか、俯瞰的に、かつ緻密に考えていかなくてはなりません。さらに化学変化を起こすには掛け算が必要です。私の場合、データ×宇宙開発、データ×スポーツという具合に、得意なものや好きなものを掛け合わせることを心がけています。そしてデータ駆動型社会においては、人と事業が同時に育つ仕組みを持つべきでしょう。その2つを伸ばすことを意識すると、面白いものが創り出せると考えています」