スポーツ×データ、発展の鍵はグラスルーツへの展開

 では、スポーツにおけるデータ活用は、選手やチーム、あるいは競技に対して何をもたらすのか。例えば選手の運動量やスピードを計測して身体への負荷データを収集し、ケガの予防やピーキングに役立てたり、戦術構築やパーソナルトレーニングの向上といったことに使われたりしているのは有名な話だろう。ただそれらは主にトップアスリートやそれに準じるレベルの選手たちの活用方法であり、その範囲にとどまっていては市場が広がらない。そこで神武氏が着目しているのが、学校体育や市民活動といった“グラスルーツ(草の根)”へのデータ活用だ。

 例えば慶應SDMが横浜市と連携した取り組みでは、学校体育の中でドローンやGPSデバイスを活用し、継続的に子どもたちのデータを計測。データを通じて自分の能力を知ると、運動への興味が高まったり、それまで運動が苦手だと思われていた子が実は大きな伸びしろを持っていることが見えてきたりするという。

 「将来的にはどのような地域・学校にも合うようにパッケージ化していきたいし、全国の子どもたちのデータを収集できればタレント発掘にもつながると思っています」

 その他にも、野村不動産と連携して工事現場の空き区画を地域の人に提供してスポーツなどのイベントを実施したり、女性向けファッション雑誌『VERY』とともに、母親世代やその子どもたちにスポーツとデータに慣れ親しんでもらう取り組みを展開したりしてきたという。これらを通して「事業化できる」と感じた神武氏は、運動とデータを通じて、子どもたちの体と心を成長させることを目指した一般社団法人「慶応キッズパフォーマンスアカデミー」を設立。地域貢献や研究材料・資金の獲得を実現している。このように、データを市井に広げていくことが、世の中にデータ活用の流れを生み、同時にスポーツ文化の普及発展につながっていくのだろう。