忘れてはならない「データは誰のものか」という視点

 データの収集・分析・活用が一般に浸透していくことは大きなメリットがあるが、一方で「データは誰のものか」という点から目をそらしてはならないと、神武氏は訴える。

 例えばGoogleなどで検索をすると、その検索データはGoogleが保有して何らかの形で活用されている可能性が高い。そのため、サービスを使う個人は自分の行動によって企業にデータがたまる事実を認識し、一方で企業や政府も、個人や社会に対して何らかの形で還元をしなくてはならない。このような形の事業を「情報銀行」と言い、現在、三井信託銀行がその取り組みを進めている。そして、こうした考えは今後スポーツ界にも浸透していくだろうと、神武氏は予見する。

「情報銀行」の概念図。総務省の資料「「情報銀行」の社会実装に向けた取組」(平成30年7月31日)より
(図:総務省)
[画像のクリックで拡大表示]

 「日本のトップアスリートのスポーツデータを大量に集めていくと、日本人ならではのスポーツトレーニングプログラムを作っていけると思います。ただ今のところ、日本ではそういったことは行われていませんし、そもそも“人からデータをもらう”のは危険という意識がある。そこで、私たちとしても自治体や企業との取り組みを通じてデータを収集し、それを世の中に役立てていくことで、モデルケースを作っていきたいと思っています」

 スポーツは様々なデータが取得できる格好の“実験場”とも言える。データ駆動型社会の到来に伴い、スポーツをデータ収集の場とする企業は増えていくことになるだろうし、スポーツ業界としても自らが持つ資産を有効活用していくことになるだろう。「スポーツ×データ」は新たな局面に入ってきている。

この記事は、日経 xTECH(クロステック)の「スポーツイノベーターズ」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2019年10月24日)。