未来の社会を描くとき、必ず挙がるテーマの一つに高齢化対策がある。2015年11月時点で既に、日本人のおよそ4人に1人は65歳以上の高齢者となっている。問題は、高齢化とともに医療費などの社会保障費が膨らみ続けていること。そこで重要になるのが、健康管理を日常生活に浸透させたウエルネス社会の実現である。

日本の医療費は2014年度に40兆円を超えた。その大半が高齢者の医療費である。あと10年経てば、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」に直面する。人口が減少傾向となり、消費も冷え込んだ状態が続く現状で、社会保障費の継続的な増加は、国や地域の経済にますます重くのしかかることになる。

そこで重要なのが、医療費をかけずに人々が健康に暮らしていける環境、つまりウエルネス社会をつくることだ。普段から健康状態や生活習慣に気を使い、病気の予防に努めることが当たり前になった社会である。これにより健康寿命と実際の寿命の差を縮められれば、社会保障費を抑制できるはずだ。こうした狙いから政府は、「日本再興戦略」の中で「健康寿命延伸」を掲げ、規制緩和や補助事業を柱に医療・健康産業の活性化を推し進めるとしている。

この課題解決に大きく貢献するのがヘルスケアにおけるICTの利用促進だ。昨今、ヘルスケアに関する新しい技術やサービス、デバイスが続々と生まれ、個人の生活に浸透し始めている。ヘルスケアのデジタル化、すなわちデジタルヘルスが超高齢社会の問題に対する1つの解となるのは間違いない。本コラムのスタートとして今回は、ヘルスケア関連のデバイスやICT活用の動向を紹介する。

急拡大するデジタルヘルス市場

スマートフォン(スマホ)の普及とともに、我々の健康に対する意識は徐々に変わってきている。スマホアプリで自らの健康状態を可視化し、データを見ながら健康を意識する文化が生まれたためである。加えて米アップルの「Apple Watch」や米フィットビットの「Fitbit」など、スマートウォッチや活動量計と呼ばれる計測センサー付きのウエアラブルデバイスが登場(写真1)。身体に装着してスマホと連動させることで、歩数、心拍数、カロリー量、睡眠時間といったライフログを自動採取できるようになった。これも、日常生活の中での健康への意識向上に弾みをつけている。

(写真1)ウエアラブルデバイスのトップランナー、米アップルのApple Watch

ウエアラブルデバイスとヘルスケアアプリ/サービスの拡充・連携は、今後さらに進んでいく。富士キメラ総研の調査によれば、2020年におけるスマートウォッチ市場は2015年比で約1.7倍の600億円、活動量計は約3.2倍の80億円に達する。

デジタルヘルス市場の拡大を後押ししているのはウエアラブルデバイスだけではない。もう一つ注目されているのがIoT(Internet of Things、モノのインターネット)である。代表例はタニタやオムロン ヘルスケア、ソフトバンクなどが提供している通信機能付き体組成計などの機器だ(写真2)。利用者は計測データをスマホで管理できる。

さらに、より多彩な機器に通信チップとセンサーが埋め込まれ、ヘルスケアでのIoT活用が本格化していくと見ていいだろう。ウエアラブルデバイスとIoTの両輪によって、個人で健康状態を定量的に把握し、それを医療・福祉従事者と共有できる環境が充実していく。これにより、予防する文化が徐々に根付いていくことになる。

(写真2)ソフトバンクの「スマート体組成計 SoftBank 301SI」3G通信サービスを搭載。