人間の三大欲求の一つとも言われる睡眠。睡眠の質が労働生産性に影響を及ぼすとの報告もあり、最近は人工知能(AI)、機械学習、IoT(Internet of Things)、スマホアプリなど、最新テクノロジーを活用して睡眠改善を図ろうという動きが活発になってきている。眠っている間にITが人間の世話を焼く――そんな日常が訪れるかもしれない。

午後になると眠くて仕方がない、大事な会議なのにうとうとしまう……そんな経験はないだろうか。今に始まったことではないが、近頃は「睡眠負債」という言葉とともに、こうした話題をよく耳にする。睡眠不足の蓄積を解消し、病気を誘発する原因を取り除こうということだ。

経済協力開発機構(OECD)が2014年に発表した「Balancing paid work, unpaid work and leisure」によると、日本人の平均睡眠時間は7時間43分(調査は2011年)で、加盟諸国の中で韓国に次いで短い時間となった。

シンクタンクのRAND Europeは、短い睡眠がGDP(国内総生産)を押し下げる要因になっていると報告している。調査によれば、日本における睡眠不足による経済損失額のGDP比は2.92%で1380億ドル(約15.7兆円)。ほかの対象国である米国、英国、独、カナダも軒並み損失額が大きく、これらの課題が世界規模になっていることを物語る

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(写真1)睡眠不足による経済損失額のGDP比(出典:RAND Europe)

快適で良質な睡眠を求め、最近ではITの力を借りた睡眠改善・睡眠支援ソリューションが数多く提供されている。スマートウォッチや活動量計を経由して睡眠時間や質を計測できるスマホアプリはもはや珍しくなく、総じて“睡眠の質”への意識が高まってきた。

そんな中で、さらに一歩踏み込んだ睡眠特化型のデバイスやソリューションも出てきている。仏Rhythmが提供する「DREEM」もその一つだ。ヘッドバンド型のデバイスで、音を出して睡眠を誘導する。Rhythmによれば、これらの音のプログラムは長年の睡眠研究により獲得したもので、心地よい眠りを誘うとしている。

(写真2)仏RhythmのDREEM(出典:DREEMの紹介ページ)

数カ所に搭載したEEGセンサーにより睡眠時の脳波を計測。記録したデータはDREEMに埋め込まれた機械学習のアルゴリズムによってリアルタイムで分析され、睡眠の質改善に役立つ。同社ではさらに睡眠研究を推し進め、AIを活用した睡眠障害診断用プラットフォーム「Morpheo」も立ち上げた。

米Responsive Surface Technologyの「ReST Bed」は、マットレスが5つのゾーンに分かれており、それぞれのゾーンが頭部、肩、腰、臀部、足に対応。専用アプリを利用してゾーンごとのマットレスの支え具合を変更できる。加えてマットレスに採用している特許取得済みの生地が睡眠時の圧力や形状を監視し、マットレスの硬さを自動調整する。“スマートベッド”である。

(写真3)マットレスの硬さを自動調整するReST Bed(出典:ReST Bedの紹介ページ)

適温と外部温度に着目したアイデア催眠グッズもある。米国発の「MOORING」がそうだ。適温と外部温度に3度以上の高低差があると睡眠の質が20%低下すると言われる。

一見すると布団の下に敷くパッド。ただ、MOORINGはPP電圧フィルムを内蔵しており、睡眠中の心拍数・呼吸などを継続的に計測できる。そのデータを基に1分ごとに温度を調節して快眠をサポートする。温度調節や採取したデータの管理はスマホアプリで行えるため、例えば離れた部屋の子どもの睡眠状態も把握できるなど、睡眠とIoT技術をうまく組み合わせた。

(写真4)MOORINGの自動温度調節イメージ(出典:MOORINGの紹介ページ)