定年の概念にとらわれているのは、むしろ現役世代

こういう事例がたくさん出てくることによって、これからの日本は救われる。超高齢のエリートが今の2倍、3倍の数になれば、平均寿命が伸びたところで日本は全然怖くないと思います。

今、日本に100歳以上の方々は6万7000人ほどいますが、6万7000人の中に日野原先生のような人が10人ほどいれば、その世代のすべての人の面倒を見られるほど稼いでくれるわけです。そうすれば、若者の世代に迷惑をかけることなく、社会システムをまわしていけるはずです。

私はこれを“世代の浄化作用”と表現しています。病気の予防法を確立し、病気になる人を減らせれば、病気の人がいても、同じ世代で健康な人が救ってくれる。生産年齢の生産性が高齢期の働かない人を支えている、といった考え方はもう捨てたほうがいいんです。90歳でもバリバリに働いている現役が同世代を救ってくれれば、何ら問題はありません。

これからはますます、超高齢のエリートが必要だという(撮影:小口正貴)


――日々現場で対応されて、そうした考え方の高齢者が増えている実感は?


白澤 あります。今後ますます“65歳で定年”という考え方は少なくなるでしょう。仮に65歳で定年しても、80歳は当たり前、90歳まで生きる人も年々多くなってきています。すると下手したら定年後に25年、4分の1世紀を生きることになります。その長い期間を“定年後の隠居”として過ごすのでは、すでに時代にそぐわなくなってきているのです。むしろ定年の概念にとらわれているのは、現役世代の企業戦士だと思いますね。

ですから本来は、今の寿命に合わせて一刻も早く考え方をパラダイムシフトしていかなくてはならないのに、現実はまったく追いついていません。


――ようやく昨年、政府が「人生100年時代構想会議」なる有識者会議を立ち上げました。


白澤 遅いですよね。私はかつて東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)に在籍していましたが、総合研究所は既に1990年の時点で今の姿を予測していました。東京都ができたのですから、国が予測できないはずがありません。

要するに、十分に予測できたことなのに見て見ぬふりをしてきた。2000年を超えてから、介護費用、高齢者医療費が国の予算を圧迫しているのは誰の目にも明らかです。今のままでは国の経営が成り立っていかない。会社だったら潰れているレベルです。人生100年時代のスケールに合わせて社会システムの改革にもっと早くから取り組んでおけば、こんなことにはならなかったと思います。

これから求められるのは、今のようにケアをして寿命を延ばすことではなく、きちんと病気の予防をして健康寿命を伸ばし、生涯現役で暮らすこと。最後の最後まで自分らしく生きる人生が大事になってくるのです。