大人でも避けたくなるリハビリ。対象が子どもなら、なおさら、リハビリに積極的になれるきっかけづくりが必要だろう。そうしたリハビリの新たなツールとして、デジタルアートを使った「楽しいリハビリ」を支援するNPO法人がある。ユニークなのは、デジタルアートのプログラミングに子どもが参画する点。同じ視点だからこそ求めているものを理解し合うことができ、従来にない効果を期待できる。

音楽フェスやアート、バーチャルリアリティ(VR)を使ったシミュレーションゲームなど、これまでにない要素を医療・福祉業界に持ち込みたい。そんなことを考えるNPO法人が東京・三軒茶屋にある。本部を構えるUbdobe(ウブドべ)だ。代表理事の岡 勇樹氏は介護業界で働いていた経歴を持ち、「医療や介護にも楽しさがあっていい」とのビジョンで活動を続ける。

ウブドべ代表理事の岡氏

そのウブドべの中心事業の一つが「デジリハ」である。デジタルアートを活用したまったく新しい仕組みの小児向けリハビリテーションプログラムで、正式名称は「Digital Interactive Rehabilitation System」という。デジタルアートのプログラミングに子どもたちを参加させ、受け手・作り手が同じ目線を共有することで、楽しく能動的に参加できるリハビリの確立を目指している。

デジリハの紹介動画

この斬新なリハビリのプロジェクトは2018年に入って本格的に動き出したばかり。まだプロトタイプの段階だが、今まで作成したものにはモーションセンサーのLeap Motionによって手の動きを感知し、PC画面のアニメーションを動かすゲーム的要素をリハビリに組み込むものなどがある。これまで福祉系、テクノロジー系などのいくつかの展示会に参考出展し、障がい児・健常児の隔てなく好評を得ているという。

キッズプログラマーが考案している様子。Leap Motionが手の動きを拾ってハートを動かす

デジリハが誕生することになったそもそものきっかけは、2016年に開催された音楽フェス「AIR JAM 2016」だった。それまでも同フェスでキッズエリアを担当していたウブドべに主催者側から「デジタルアートを使って面白いことができないか」との相談が届いた。初めての挑戦で手探りだったものの、無事に成功。手応えをつかんだ岡氏は、「デジタルアートに可能性を感じた。これまでクロスさせてきた医療やリハビリ分野に使えるのではないか」との思いに至った。

ちょうどその頃、ウブドべにスタッフとして加藤さくら氏が参加してきたことが動きを加速させた。加藤氏の次女は筋ジストロフィーを患っており、立位訓練の際には特殊な器具を装着せねばならない。毎日のことなのでやりたくないと嫌がることがよくある。「生活する上でリハビリは欠かせないもので、さらに毎日取り組むことが大切。とはいえ、きついリハビリは大人でさえ音を上げる。せめて楽しんで取り組めるようにしてあげたい。リハビリを必要とする子どもを持つ親御さんからも、同様の声を多数聞いている。だからこそ、デジタルアートを使って楽しめるデジリハには希望を感じている」。加藤氏はこう話す。現在は、デジリハの窓口として奔走する。

クリエイティブディレクターの金箱淳一氏は、産業技術大学院大学の産業技術研究科 創造技術専攻で助教を務めるメディアアートの専門家。自らが蓄積したノウハウを惜しげもなくデジリハに注ぎ込む。デジリハの開発リーダーを担当する野呂ゆき乃氏は作業療法士で、これまでの知識を生かしながら今度はテクノロジーで子どもたちのリハビリをサポートする。

デジリハのメインチーム。左から野呂氏、金箱氏、岡氏、加藤氏