日常的な悩みへの対策にもヘルステック

バックテック 代表取締役社長の福谷直人氏
バックテック 代表取締役社長の福谷直人氏

バックテック社長の福谷直人氏は理学療法士として臨床業務を7年間経験した後、京都大学大学院にて博士号を取得。現在は法人向けの肩こり・腰痛対策アプリ「ポケットセラピスト」を提供している。

1年前にβ版の提供を開始した同サービスの戦略は、健康経営と連動したものだ。肩こりや腰痛は我慢してしまうことが多いが、「我々が着目しているのは目に見えない部分の損失。我慢を重ねて働いていて集中できなかった場合、1万人規模で7億6000万円ほどの損失との試算もある」(福谷氏)と警鐘を鳴らした。そこでアプリによって遠隔から肩こり・腰痛相談のコンサルティングを行い、この1年で相談件数は3万件を突破。痛みの軽減はもちろんのこと、間接的に生産性向上にも貢献していると話す。

活動量計の「Fitbit」とAPI連携して運動・睡眠ログを収集し、コンサル側の医療職のチェックに役立てている。ユニークなのは肉体的な部分のみならず、メンタル面も重視している点。「職場の人間関係が強く影響しているとのデータもある。そのため、脳科学からもアプローチしている」(福谷氏)。法人事業でのエビデンスを蓄積した後、個人向けサービスの展開も視野に入れている。

HoloAsh Inc. CEOの岸慶紀氏
HoloAsh Inc. CEOの岸慶紀氏

最後に登壇したのはHoloAsh Inc. CEOの岸慶紀氏。自身がADHD(注意欠陥・多動障害)を抱える岸氏は、「大人のためのADHDセラピー」ソリューションをテクノロジーによって提供したいという。ADHDのセラピーは予約が取れず診察料も高額。薬物治療には副作用の危険性もある。そこで岸氏は、「モチベーショナルインタビュー」という手法を用いて、スマートスピーカーによる自動セラピーを考案した。モチベーショナルインタビューは、共感を表現したり、議論を避けたり、肯定しながら導いたりする手法である。これにより、24時間、手軽に安価でセラピーが受けられるようになる。

当面、デバイスには「Amazon Alexa」を活用。現在は回答の自動化に向けてデータ収集に励んでおり、将来的には立体視できるオリジナルデバイス「Holoash」を発売したいと話す。これは立体視することでADHDの人たちがキャラクターにより集中できるようにするためだ。米国を中心に活動予定だが、サービス化された暁には日本でも大きな需要があるに違いない。

最優秀賞を受賞したバックテック
最優秀賞を受賞したバックテック

審査の結果、最優秀賞はポケットセラピストのバックテックが受賞した。今回のコンテストでは審査員の評価と並行して、イベント協賛企業が支援したい企業を選んだが、バックテックには支援企業が1社もなかっただけに意外だった。それほど、同社のサービスは完成に近いと判断されたのだろう。

Health 2.0のピッチに登壇したのは、全体的に専門性が高いBtoBサービスを手がけるスタートアップが中心だった。どの企業にも共通していたのは、“現場での課題”を強く認識していたこと。とりわけ現役医師によるT-ICU、ジーケアは事業としてスケールするか否かではなく、「いま、ここにある課題をどう解決するか」に注力していた点が印象深い。

Health 2.0 Asia - Japan 2018では起業する医師たちのセッションもあった。昨今はますます現場のニーズに突き動かされた具体的なサービスが増えてきている。一つひとつはニッチかもしれない。しかし、この動きが大きなうねりとなって5年後、10年後に医療業界に大きな地殻変動をもたらすであろうことは想像に難くない。