排便・排尿タイミングを事前に感知する――。こんなウエラブルデバイスがある。トリプル・ダブリュー・ジャパンが開発した「DFree」だ。2015年春の発表時、その斬新なアイデアに、日本はもとより、海外の企業や投資家が大きな関心を寄せた。中西敦士・代表取締役が目指しているのは「あらゆる生体データを採取して寿命を予測すること」。その第一歩となるDFreeの出荷が、いよいよ始まろうとしている。コンセプトやビジョン、社会との関わりについて中西氏に話を聞いた。

Q:ウエアラブルデバイスで排泄を予測するという観点はとてもユニークですね。どのようにしてこのコンセプトを思いついたのでしょうか。

トリプル・ダブリュー・ジャパンの中西敦士氏。右手に持っているのがDFree。

私は以前、路上で大量に排便してしまった経験があります。その悔しさをバネに、便漏れゼロ社会を目指そうと考えたのがきっかけです。ビジネスの主対象は、排泄に関しての悩みが大きい介護施設や、在宅で高齢者などを介護している方々です。

そもそもの開発経緯もあって、当初は排便予測にフォーカスしていましたが、介護施設の実証を通じて排尿予測のニーズがより大きいことが分かりました。そのため、現在は排尿の予測に注力しています。

Q:DFreeのメカニズムを教えていただけますか。

DFreeは超音波センサーを内蔵したウエアラブルデバイスです。下腹部に装着すると、本人が便意・尿意を自覚する前に、排便・排尿の兆候を察知して知らせてくれます(写真1)。具体的に言うと、排尿の場合は、膀胱が膨らむ速度を計測して、データをクラウドに記録します。これを弊社が独自に作成したアルゴリズムを用いて解析して、次に尿が出るタイミングを予測します。この予測結果を、例えば介護士のスマートフォン(スマホ)に配信すれば、適切なタイミングで排尿の準備ができるわけです。

(写真1)下腹部に装着して排尿・排便を予測するDFree(写真は製品イメージ)

Q:中西さんが掲げる事業ビジョンとは?

2020年ぐらいまでは、排泄に困っている方を助けるというビジョンに特化していきます。とにかく困っている方に最速で製品を届けたい。介護施設はもちろん、「自分の親の介護が大変で今すぐほしい」といった個人ベースでの問い合わせも多数ありますから。

個人向けにはネット販売を含め直接販売も考えていますが、便ひとつとっても、いろいろな症状の方がいます。下痢で困っているのか、便秘で困っているのかで、求められるサービスやアプリの内容は違ってきます。トイレマップが必要な人なのか、はたまた腸運動体操や食生活チェックシートが必要な人なのかといった具合です。基本的にデバイスは1種類だけにして、そこに様々なアプリやサービスを付加して差別化を図っていこうと考えています。

実際のところ、DFreeの超音波センサーを利用すると、皮下脂肪の厚さなどもすぐに測れます。違ったアプローチでの利用も可能なわけです。ただ、単純に「儲かる、儲からない」の話ではなくて、我々は困っている方に社会的にコミットしていきたい。それしか考えていません。

Q:当初は認知症の方が対象ですか。

そうですね、自分で排泄を管理できない方が対象になります。もちろん、介護用の尿パッド(おむつ)には専用製品がありますが、排尿が予測できないためにパッド代が馬鹿にならないのです。そのうえ、排尿は排便に比べて圧倒的に回数が多い。大体、施設の入居者は平均して1日6~8回程度おしっこでトイレに行くそうですが、便に関しては2~3日に1回程度だそうです。排尿を予測することは、パッド代の節約だけではなく、トイレに連れて行く、おむつ交換をするといった介護職員の作業負担軽減につながります。

Q:これまで実証実験を重ねていらしたようですが、DFreeを発表してから1年3カ月ほどがたちました。製品発売の時期について、現在の見通しを教えていただけますか。

時間がかかっていたのは、トライアルを重ねて、より汎用的に使用してもらえるまで練り込みたいと考えているためです。

実は発表当時は、対象者として、排泄や排尿を上手くコントロールできない子どもを想定していました。今は、より強いニーズがある介護分野を最初の対象にしようとしています。ですから、製品を練り込んでいくための時間が必要になります。

現在(2016年6月初旬時点)は、排尿に関する予測機能を用いて、関東近県の4つの介護施設、20人ほどの規模でトライアルを続けています。今後は、この結果を踏まえて本格的に商用展開していきます。まずは2016年7月から、影響力のある介護施設に重点的に提供したいと考えています。この初期提供も、あくまでもテスト導入という位置づけではありますが、10~20個というレベルではなく、もっと大きな単位で、商用として展開します。