Q:具体的なビジネスモデルはどのように考えていますか。

まずはBtoBの月額モデルを目指します。例えば高齢者のご夫婦がいるとして、スマホとDFreeを渡せばすぐに使えるかというと、それは難しいでしょう。やはり介護施設や地域包括ケアシステムの枠組みの中で、どのように展開していくかが鍵になってくると思います(写真2)。

(写真2)介護施設での実証実験の様子(提供:トリプル・ダブリュー・ジャパン)

もちろん、施設ではなく在宅ケアのほうが明らかにニーズは高い。ですから、恐らくデイサービスやショートステイなどの施設を介して提供する、BtoBtoCのような形に発展していくのではないかと考えています。

子どもに対する実証も7月頃から始めるつもりで、既に小児科の先生と相談しています。まずは日本に数十万人の患者がいると言われる夜尿症の子どもに対してのアプローチですね。夜尿アラームという製品群が存在しますが、それらは尿が出てから知らせるタイプが主流です。DFreeなら予測デバイスの特長を生かすことができます。つまり尿意を催しそうだと分かった時点でトイレに連れて行って排尿させ、それを繰り返すことで習慣づけることができるわけです。

Q:発表前、ここまで介護業界を巻き込むことになると想定していましたか。

いいえ、「介護のニーズがあるだろうな」という程度でした。最初にネットで記事が出た後、ものすごい反響があったのですが、あれには自分自身も「こんなに反響があるのか?」と驚きました。しかも国内だけではなく、世界中からリアクションがありましたからね。

米国、韓国、欧州……世界中から問い合わせが殺到している状況は今も変わりません。まさに今、欧州で最大規模の介護施設を展開しているフランスの大手事業者から「今すぐトライアルさせてほしい」というオファーを受けています。日本国内に限らず、早い段階で海外に展開していきたいのが本音です。

Q:この7月にはシリーズA(初期段階投資)として各方面から約5億円の資金を調達するなど、スタートアップとしては盤石の体制を築いているようにも見えます。課題はあるのでしょうか。

それはもうたくさん。例えば海外展開では、海外各国の法律の問題がネックになってきます。DFreeは日本では医療機器ではありませんが、フランスはどうなのか、米国ならFDA(食品医薬局)の許可が必要なのではないかとか。あちらは訴訟大国ですから、慎重に全てをクリアしてから展開していく必要があります。

法律の壁に加えて、人材の問題もあります。今までにない製品ですから、現場に送りつけて終わりというわけにはいきません。どのようにして使うかを教えていかなくてはならない。現状では、誰がフランス語を話すの?という感じですが(笑)。

いずれにせよ、外国でもサポート体制が必要になっていくでしょう。ですから今は採用活動に注力しています。現在の陣容は8人ですが、エンジニアも非常に専門的な人材が加わり、新しくCTO(最高技術責任者)も迎え入れました。そういった人材面とともに、トライアルを含めてモノの開発を貪欲に進めていくつもりです。

Q:この先には、どのような未来を描いていますか?

排便・排尿に限らず、さまざまな生体データを予測していくことが目標です。介護の現場では、親族が急に倒れて苦労されているという話をよく耳にします。突然入院するわけですし、場合によっては麻痺が残ってリハビリもしなくてはならない。その間、家族で分担して世話をしていくことになります。

もし倒れる兆候を予測できるようになれば、ある程度の準備ができるようになるはずです。生体データを測り、異常を予測することの価値が、今まであまり世の中には理解されていませんでした。食欲でも何でも構わないのですが、体内のデータ、身体の変化を予測していくことを通じて、不測の事態をどんどん減らしていく。そういったサービスに寄与していけたらと思っています。

究極の目標は寿命そのものを予測することです。これが実現すれば、年金、保険、貯金、遺産相続など、お金に絡む問題の一部も解決できる可能性があります。こうした考えは、DFreeというプロジェクトに取り組んでから生まれてきたもの。ですから今後は、医療機器に踏み込む部分も当然出てくると思います。その場合は別の企業とパートナーシップを組んで、我々はバックヤードを担当するなど、上手く棲み分けをしていきたいですね。