早い段階からオンライン診療に着手

もう1つの柱であるcuronは、“時代の波”に乗った事業とも言える。2018年度診療報酬改定で「オンライン診療科」が新設され、オンライン診療に点数がつくようになったためだ。curonは2016年から開始したオンライン診療サービスの老舗であり、2019年3月時点で全国約1100件の施設で導入実績がある。

特徴はワンストップのサービス体系や操作の簡便性にある。医師はタブレットやPC、患者は主にスマートフォン(スマホ)といった汎用的な機器を活用。予約、問診、ビデオ通話による診察、決済、処方箋・薬の配送までをトータルで提供し、医療機関、患者双方にメリットをもたらす。さらにクリニック側の初期費用と月額固定費用を無料とすることで、飛躍的に施設への導入を伸ばしてきた。

「オンライン診療自体が非常に新しいモデルのため、これからどの程度利用されるかが未知数。現状では点数も低く、月額モデルでは医療機関にとっても負担が大きい。しかし我々は“真に役立ち、利用されること”を重要と考えた。だからこそシステムの導入に関しては料金を取らず、どんどん使ってもらうことを想定している。まずはオンライン診療の利便性を理解してもらい、普及を進めていきたい」(原氏)

その結果、「医療機関から信頼される存在になってきている。ともにオンライン診療を切り開いていくパートナーとして考えてくれる医師も多く、紹介案件も多い」と原氏は語る。2015年に厚生労働省から通達が出され、にわかにオンライン診療の可能性が拡大し、今では日本でも数々のプレイヤーがいる。だがMICINによるこうした信頼関係の構築は、競争の激しい世界において大きなアドバンテージとなっている。

curonの利用イメージ(資料:MICIN)

実際のユースケースとしては、スマホやITに慣れ親しむ情報リテラシーの高い世代が多いようだ。平日の仕事の合間に遠隔から診療を受けられるのは、働き盛りにとっては心強い。多くはないが離島、へき地からの利用もある。通院自体が困難な場所に住む患者にとっては、オンライン診療による定期的な医師のフォローが気持ちの支えになる。

患者側でもスマホで診療を受けられるとの認識が高まれば市場も大きくなり、医師の意識も変化していくはずだ。「今後も一層の成長が期待できる領域。他社とも共闘しながら貪欲に政策に働きかけていきたい」と原氏。5年前にはサービスとして成立することすら難しかったオンライン診療が現実のものとなったように、さらに5年後には違った景色が広がっているに違いない。

すべての人が納得して生き、最期を迎えられる社会を目指す

原氏は東京大学医学部を卒業した医師でもある。研修医として現場で働く中で「すべての人が納得して生きて、最期を迎えられる社会を作りたい」と考えるようになった。この考え方がMICINのビジョンとなり、日進月歩で発展するテクノロジーを用いて社会に貢献していきたいとの思いから起業した。

この強い信念に共感し、MICINには多くの優秀な人材が集う。CTOを務める共同創業者の巣籠悠輔氏はGunosy、READYFORの立ち上げに携わり、電通、Googleなどを経た強者で、日本におけるディープラーニングの第一人者だ。ほかにも外資の大手コンサルティング、金融、はてはメルカリの創業期メンバーなど錚々たる社員をそろえている。これら卓越した頭脳と明確なビジョンの相乗効果により、2018年4月には三菱商事など4社から11億円にも及ぶ資金調達に成功した。

MICINの幹部。左から原氏、CTOの巣籠悠輔氏、COOの草間亮一氏(写真:MICIN)

「もっと社会の接点に近いところで何かを変えていく必要があることを医師時代に痛感した。患者は病気になってから病院にやってきて、“あの時点で生活を改善しておけばよかった”“もっと早くわかっていれば対処できたのに”と後悔する。ならば最新技術やデータを使って、今よりもずっと早い段階で気づきを与えることができるのではないか。そのタイミングで生活や環境を変えることができれば、より自らが納得して健康をデザインできるようになる」(原氏)

いずれにしろ、基盤となるのは医療データの収集と精度の高い解析である。そのために原氏は、医療におけるAI活用を突き詰めてエビデンスを積み重ねていきたいという。彼らのような高い志を持ったプレイヤーが、医療と健康の未来を変えていくのだろう。