健康長寿社会を実現する目的で発足した「MY STAGE PROJECT」。この団体はソーシャル・インパクト・ボンド(以下SIB)の仕組みを活用しながら、民間企業が主体となって高齢者の社会参加を促し、介護予防の推進を目的とする。理事を務める各企業はMY STAGE PROJECTに何を求めるのか。それぞれにビジョンを聞いた。

働くことが高齢者の健康につながる――リクルートジョブズ

リクルートグループで雇用サービス領域を担当するリクルートジョブズは、“高齢者の仕事”を促進するために参画した。リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター センター長の宇佐川邦子氏は「人材不足を背景に、2012年からシニアの雇用促進を手がけてきた。この5〜6年の取り組みは苦悩の歴史で、いまだに問題が解決していない。各企業と連携することでどのような解決の糸口が見いだせるかが楽しみだ」と話す。

同社の調査では、高齢者の4割が健康のため、そして社会とのつながりを保つために働きたいと答えた。その一方、2016年の数値として企業の7割が60歳以上の人材採用に消極的とも。「シニアの大半は仕事を探しても決まらないと諦めてしまっている。最も不安を感じているのは体力がついていくかどうかという点。それがブレーキになっていることが浮かび上がってきた」(宇佐川氏)。

リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター センター長の宇佐川邦子氏(写真:小口正貴)

そこで同社では、高齢者の体力や能力、判断力、性格・特性などを可視化するツールとして「からだ測定」を開発し、実証実験を行ってきた。スタッフが高齢者の体力を測定するとともに、高齢者自身が処理力と個性に関するテストにタブレットで回答する。宇佐川氏は「からだ測定とは、自分自身がどんな状況かを把握した後、改善のための一歩を踏み出す行動変容の仕組み」と説明する。今回のSIBでは、このからだ測定会を全国各地で行うために連携を図ることも1つの目的だ。

客観的データである測定結果を基に、同社では高齢者の状態に応じた仕事を紹介していく。「データで裏付けられると、薦めるときも恣意性が介入しない。まったく働く意欲がなかった高齢者に測定してもらったところ、約3割が提示された仕事に対して興味を示した。実際にハローワークに登録したり、合同説明会に足を運んだりした人たちもいる」(宇佐川氏)。

高齢化が加速する中、社会参加の側面はもとより、経済的な面からも高齢者の安定雇用は整備されていくべき課題だ。雇用マッチングのプロとして培ってきた同社のノウハウが高齢者世代にも適用できるようになれば、日本の雇用環境は少しずつ変わるかもしれない。

SIBはきっかけづくり。新しいビジネスを考えていく――JTBコミュニケーションデザイン

JTBグループは、早くからヘルスケアサービスに力を入れてきた。現在はJTBヘルスケアの名の下、ヘルスツーリズムや地域健康増進、健康経営、日本版CCRC、地域包括ケアシステムの5事業を軸に展開する。JTBコミュニケーションデザイン 営業企画部 アカウントプロデュース局アカウントプロデュース課の黒岩隆之氏は「今後は65歳を超えたら引退ではなく、より長く社会に貢献するために仕組みを変えていかなくてはならない。そこにツーリズムがどう重なるかを考えている」とJTBヘルスケアの狙いを語る。

その中でも黒岩氏は、モビリティの観点から課題解決に挑んでいる。「インバウンド(訪日外国人旅行客)は基本的にマイカーでは観光地に行けず、言葉も通じないことが多い。インバウンドがストレスなく観光地を回る仕組みづくりは、運転免許返納などで移動手段に悩む地域の高齢者を救うことにつながるのではないか。互いの問題点を解決するソリューションが鍵を握る。昨今はさまざまな交通手段がシームレスにつながるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)が盛んになってきている。地域にとって有益な交通インフラを作っていきたい」(黒岩氏)。

JTBコミュニケーションデザイン 営業企画部 アカウントプロデュース局アカウントプロデュース課 黒岩隆之氏(写真:小口正貴)