少しずつトライアルも行われている。2019年2月には、静岡市で清水港に寄港したクルーズ船の乗客に向け、オンデマンド型相乗り移動サービスの実証実験を実施した。続く3月には、この実験のパートナーであるオンデマンド配車サービスのベンチャー、未来シェアと資本業務提携を結び、観光型MaaSを加速する方針を打ち出した。他方、70歳以上の高齢者向け定額乗り放題のタクシー定期券サービス「JTBジェロンタクシー」を福岡県や長野県で期間限定販売し、地域の交通弱者への解決策を探る。

「明確なニーズがあり、その課題を解決する技術や人的リソース、ファシリティがあるにもかかわらず、法規制の壁が立ちはだかっている。しかし官僚も広く意見を求めるようになってきており、現場の意見を吸い上げて政策提言を行う方向にシフトしてきた。そこで最初のシーズマネーとしてSIBが生きてくる。このスキームで将来的にビジネスが回転するとは考えていないが、1つの答えにはなるだろう。知見を蓄積し、次の解決策につなげる意味でも我々にとっては社会的意義がある。新しいシステムやビジネスモデルを模索する場としては非常にいい機会だ」(黒岩氏)

地域にもたくさんの資源。大事なのは“場”の提供――ルネサンス

フィットネスクラブ大手のルネサンスは、全国各地で介護予防教室を受託するなど、かねて高齢者向けのサービスを展開してきた。ルネサンス 健康ソリューション部部長の熊坂克哉氏は「運動を起点として場を作り、人を育てるのが我々の得意分野」と意気込みを述べた。

場作りと人材育成の両軸から地域創生を手がけた事例が、鳥取県伯耆町(ほうきちょう)にオープンした複合施設「パルプラスオン」だ。この施設は地元の保健福祉センターを改装した過疎地小型ジムで、高齢者をはじめとして多世代が交流する場として機能する。

2017年4月の開所以来、着実に会員数が増えて売り上げも伸び、地元で7人の雇用も生み出した。ルネサンスでは開設のサポートやノウハウを提供したが、事業そのものは伯耆町の社会福祉協議会が主体となって運営する。

ルネサンス 健康ソリューション部 部長の熊坂克哉氏(写真:小口正貴)

「人口1万人の町で成功したことは自信につながる。いろんな企業が地域に資源がないと嘆くが、まったくそんなことはない。住んでいる人たちが知恵を出し合えば良い結果が生まれ、知恵を出すこと自体が介護予防につながる。そして一旦動き出すと何かが変わる。我々はその動きを持続させるためにボランティアではなく、ビジネスとして協力している。

ただし伯耆町のような事業がすぐに横に広がるかといえばそうではない。組織や自治体にはさまざまな壁がある。それを解決するには1社だけではなく、異業種とのコラボレーションが最適。MY STAGE PROJECTのようなチームができると自治体は安心する。1社に仕事をお願いするよりも、いろんな企業が参加することで好きなメニューを選べるようになるからだ。いずれそうした提案ができるようになれば、事業展開も広がるはずだ」(熊坂氏)