6月のオープン以降、問い合わせは引きも切らない。現場でリストを見せてもらったが、ITや製造、サービスなどあらゆる業界の大手企業が名を連ねていた。「ワーケーションがバズワードになっていることもあり、開所式には予想を超える人が詰めかけた。足を運んだ企業の担当者は目がハートになって帰っていく」(赤堀氏)と、手応えは大きい。

キャンプ場を望む特等席。椅子は地元の職人が地元の木材で作った工芸品
キャンプ場を望む特等席。椅子は地元の職人が地元の木材で作った工芸品
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プランは1週間貸し切りの滞在を基本とする。初日は午前中にセッティングをして午後から仕事。夕方になると投宿先から迎えが来る。2日めは宿の手配で“出勤”し、午前中は仕事、午後はネイチャーガイドが周囲の自然を案内したり、ヨガ教室を体験したりする。平日5日間はこのサイクルを繰り返し、最後の2日間はゆったりと休暇を取る流れだ。周辺には野尻湖や黒姫高原、妙高高原など豊富な観光スポットがあり、自然と触れ合う機会には事欠かない。

企業向け貸し切り用の部屋「Work Space 01」の料金は5日間の平日利用(30人)が定価50万円(税別)だが、2019年度は30万円(同)で提供している。

ノマドワークセンターのエントランス。この日はキャンプ場のチェックインをここで受け付けていた
ノマドワークセンターのエントランス。この日はキャンプ場のチェックインをここで受け付けていた
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「内容は産業医とともに考えた。自然の中で森を歩いたり、ヨガをしたりする中で“本質的な生活の価値”を1週間で感じてもらうのが狙い。この効果は1泊2日の短期間では無理なので、1週間の滞在を前提で各社にお願いしている。体を動かすことで睡眠の質が良くなり、メンタルが整う。何よりこの風景を前に仕事をしていると太陽の動きとともに時間の流れを感じられる。ワーキングゾーンにはエアコンがないが網戸にしているだけで十分に涼しい。こんな体験は都会では無理だろう」と赤堀氏は言う。

「自然体験を通じて新しいアイデアやイノベーションが起こせるのではないかというのが我々の仮説。事実、海外の調査ではハイキングやウォーキングが創造力を高めることが証明されている。ワーケーションで事業競争力のあるビジネスモデルが生まれれば、それは企業の武器になる。その点もメッセージとして発信していきたい」(赤堀氏)

次世代産業育成の拠点としても活用

ノマドワークセンターのもう1つの目的として、次世代産業育成がある。3Dプリンターを置いた3Dラボがあり、現在、工房も建設中だ。

3Dプリンターも備えたラボ兼オフィス
3Dプリンターも備えたラボ兼オフィス
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「信濃町は産業人口が減少し、高齢化が進んでいる。そのうえ、豪雪地というハンデもある。逆に言えば、これから日本中の市町村が抱えるだろう課題が少し早く訪れている『課題先進地』だ。そこでロボット、AI、IoTを使った事業を誘致して地域課題の解決支援をしていく。大手外資IT系のハイパフォーマーはカヤックやトレッキングなど、アウトドア好きが多いことで知られている。彼らいわく、自分のコンディションを整えるのは自分の責任だから当然なのだという。今後、田舎にいながら最先端の仕事をする時流はきっと生まれてくると思う」(赤堀氏)

Nature Serviceでは顧客情報をクラウドベースの顧客管理システムのSalesforceで管理し、Marketoというツールをフル活用してマーケティングを自動化。さらにはBIツールを用いてキャンプ場の入場者数などをリアルタイムで可視化し、そのデータを町役場の担当者と共有している。およそNPOとは思えないほど先進的な取り組みだが、ここには赤堀氏の本業でのスキルが存分に生かされている。デジタル化の恩恵を受けながら自然体験を促進させる――まさに2019年ならではのハイブリッドな姿勢と言える。

なお、“ノマドワークセンター”はNature Serviceの登録商標である。「ヒルトンホテルと言えばサービスの質が連想されるように、ノマドワークセンターもブランド化したい」と赤堀氏。具体的にはこれからだが、横展開する計画もある。信濃町ノマドワークセンターが“ワーケーションの中心地”として根付けば、ブランド化も夢ではない。