――実際の応募基準は。

オーソドックスに“500 Startups流のヘルステックはこれ”というプログラムにします。対象分野は診断・治療支援、病院の業務改善、健康増進、栄養管理、障がい者支援などのヘルステックでハードウエアも含みます。重要なのはVCなど外部資金が調達可能なビジネスであること。創薬や高度な医療機器のように何年もかかるようなものは除外しています。むしろこれらは、銀行や製薬企業などの支援を受けるべきですから。

まさに今、応募期間の真っ最中(取材は8月29日)なのでまだ目を通していませんが、受付状況を見るとこれまでよりも応募が増えそうな勢いです。テーマを絞ったのになぜと思われるかもしれませんが、ヘルステックに振り切ったことで逆に「これは私たちが応募すべき」と思う企業が増えたのかもしれません。500 Startupsの取り組みは日本に限らずグローバルに門戸を開いてきたのが特徴で、2018年にはついに海外勢が日本企業を上回りました。今年もこの傾向は続きそうです。

貴重な医療データを豊富に保有する“生きたフィールド”

――神戸市ならではの協力体制を教えてください。

まず神戸医療産業都市として、1万1000人の中から専門分野のメンターにお願いするセッションを作りたいと思っています。実際に誰がメンタリングするのかは、企業を選んでからになりますが。それから神戸医療産業都市にある企業、研究所、病院への視察ツアーもやりたいですね。

ヘルステック特化プログラムの概要(出所:神戸市)
ヘルステック特化プログラムの概要(出所:神戸市)
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「ヘルスケア開発市民サポーター」は、6000人ほどの神戸市民にプロダクトをモニターで使ってもらう仕組みです。大企業ならいざしらず、何のツテもないスタートアップには市民モニターをゼロから集めるのは不可能に近く、10人でさえ四苦八苦します。生の声をフィードバックしてもらえるのはスタートアップにとって非常に大きな財産になるでしょう。

また参加した企業には、2020年にポートアイランドに完成する「クリエイティブラボ神戸」への入居優遇策を考えています。クリエイティブラボ神戸は交流スペースやウェットラボを備えたオープンイノベーション型の施設で、ヘルステックと従来の医療産業を融合する目的もあります。同じビル内にAIによる画像診断などのヘルステック企業とウェットラボがあれば、すぐに顔を合わせられるので、これまでになかったイノベーションが起きる可能性が高まります。

――ヘルステックが神戸市にとって新産業の1つになる、そんな展望もあるのではないでしょうか。

21年前に神戸医療産業都市を始めた目的と近い感覚なのかなと。そう考えると、早い段階からライフサイエンスに注目して医療集積地区を整備してきたアドバンテージは非常に大きいと感じています。

ただ、神戸医療産業都市にはこれまでのやり方があるわけで、そこに異文化の500 Startupsのやり方をそのまま放り込んでも押し付けになってしまいます。そうした狙いから両者をつなぐ施策をしていきたいし、デモデイでどんなビジネスなのかを見せてあげたい。

だからあえて、今年はデモデイを東京ではなく神戸市でやるのです。神戸医療産業都市の研究者、企業、病院に500 Startupsのピッチに触れてもらい、そこから協力関係が生まれるのが1つの理想です。神戸医療産業都市の企業や研究機関もデータをどのように活用すればいいか悩んでいるのが現状なんです。スタートアップにしても、貴重な治験データや生体データが豊富にあるのは魅力的です。

これまで採択してきた神戸市のトータルブレインケア、芦屋市のT-ICUなどのように地元に根づいたヘルステック企業も育ち始めているし、神戸市に拠点を置くKURASERUは500 Startups Japanから融資を受けています。方向性は間違っていなかった。生きたフィールドとして、神戸市からヘルステックと医療との相乗効果を生み出していきたいですね。