励まし合う「ピアサポート」が継続の力に

行動変容に効果をもたらすとして関心を集めるサービスがある。東京のスタートアップ「エーテンラボ」が運営する「みんチャレ」は、三日坊主防止アプリとして誕生した。5人1組で匿名のチームを結成してピアサポート(参加者同士による相互支援)を重ね、習慣化を身につけるプラットフォームである。

エーテンラボ代表取締役CEOの長坂剛氏は「同じ悩みを抱えている仲間と励まし合うことで楽しく続けられる」と話す。2015年のアプリ公開以降、実に1000回にもわたるアップデートにより改善を図ってきた。現在、1万3000人のデイリーアクティブユーザーがそれぞれの習慣化に取り組む。

当初はダイエットや勉強の継続が主力だったが、サービスを続ける中でハイライトされてきたのが糖尿病に関するピアサポートだった。食事療法、運動療法は個人で継続するのは辛く、センシティブな情報を含むために従来のSNSなどではカミングアウトしにくい。だが、「みんチャレの中であれば糖尿病の仲間と匿名でつながり、どんな食事療法をしているかを共有できる。それがモチベーションになり、同じ目的に向かって頑張れる」(長坂氏)。この傾向を踏まえ、エーテンラボでは2019年からヘルスケア機能を強化した。

エーテンラボ代表取締役CEOの長坂剛氏(写真:小口正貴)
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「糖尿病は予備軍を含めて日本国内に2000万人とも言われている。本来であれば対象者が自分の近くにいるはずだが、誰も周囲に言わないために分からない。みんチャレも最初はヘルスケアに寄せていたわけではなく、自然発生的にユーザーが集まってきた。現在は糖尿病のカテゴリーを設けており、40〜70代ほどの人たちが切磋琢磨している。成果が生まれ、感謝のメッセージも数多く届くようになってきた」(長坂氏)

何かにチャレンジした写真をチーム内で毎日投稿し、その報告に対してメンバーがリアクションをしていく。これにより毎日データを振り返るきっかけとなり、行動変容へと結びつく。「ゲーミフィケーションの基本は入力に対するフィードバック。みんチャレは習慣を身につけるためのナッジ(自発的に好ましい行動を取る仕掛け)をふんだんに採り入れており、フィードバックループがコミュニケーションの中で繰り返されることが結果に表れている」(長坂氏)。新たにAIチャットボット機能を付加し、ちょっとした励ましで背中を押す工夫も施した。

チャレンジ写真を投稿してメンバーが励まし合う(写真:小口正貴)
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ただし、サービス内で特定の治療法を薦める行為はNGだ。あくまで継続にフォーカスし、習慣化のサポートだけを行う。そのため、糖尿病のみならず高血圧症、脂質異常症など「生活習慣病とされている病気の改善に幅広く使えるだろう」(長坂氏)と語る。

アクサ生命の保険商品に組み込んだみんチャレの機能(出所:エーテンラボ)
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前述したように、もともと健康意識が低い人たちをどのように巻き込むかといった課題については、「みんチャレは行動変容ステージの準備期以降のユーザーがターゲット」と長坂氏。続ける意志はあるものの挫折しそうな人たちに対してサポートを行い、まずはみんチャレで2週間ほどピアサポートを体験してもらうのだという。「効果が出ると気持ちが前向きになり、続ける意欲がわいてくる。準備期から実行期、実行期から維持期への移行をスマートに支えてあげたい」(長坂氏)。

2019年12月にはアクサ生命保険とコラボし、保険商品の中にみんチャレを組み込んだ。経済産業省が実施する「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2020」ではビジネスコンテスト部門でファイナリストに残り、2020年1月23日には決勝の舞台に立つ。

一方、神奈川県とは共同で未病改善の実証実験「神奈川ME-BYOリビングラボ」に着手した。ここでは東海大学病院とも連携し、医学的エビデンスを蓄積。将来的にはより医療に特化し、保険適用されるようなサービスにしたいと意気込む。ピアサポートの概念は世界共通だけに、今後はグローバルの展開も視野に入れている。