今や家族の一員である犬や猫。飼育環境の改善により長寿化が進み、ペットにも健康寿命対策が強く求められている。大阪の老舗動物薬メーカーは、2016年から新規事業探索プログラムを開始し、オープンな姿勢で新世代のアニマルヘルスケアを開拓している。ピッチイベントを通じて、昨今のペットを取り巻く医療・健康事情を探った。

家族同然のペット、今後の課題は健康寿命

犬や猫をはじめとするペットは、我々の生活にとってもはや家族同然だ。一般社団法人ペットフード協会の調査によれば、2019年10月時点の国内における飼育頭数は犬が879万7000頭、猫が977万8000頭。双方の推計飼育頭数の全国推計は1857万5000頭と、日本の人口比にしておよそ15%にも匹敵する。

昨今では単なる愛玩動物を超え、人間の生活の中で精神的に感情を共有する意味を込めて「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」とも呼ばれる。そして飼育環境が手厚くなるにつれ、猫のみならず犬も室内で家族と一緒に暮らすことが一般化してきた。その結果、長寿命化が進み、2019年には犬の平均寿命が14.44歳、猫が15.03歳(ペットフード協会調べ)。それに伴い、ヒトと変わらないような病気も増えている。皮膚炎や胃腸炎、慢性腎臓病、心筋症、糖尿病などが上位を占め、晩年に動物病院の世話になることも少なくない。

こうした風潮にあわせ、動物に対する医療・健康分野も進化を遂げている。大阪市に本社を置くDSファーマアニマルヘルス(以下DSPAH)は、動物薬事業に特化した研究開発型の製薬企業として、2010年に大日本住友製薬から会社分割を経て誕生した。ルーツの1つである大日本製薬は1950年から動物薬事業を開始しており、70年にわたりペットの健康を支えてきた。

DSPAHはコンパニオンアニマル事業や畜水産事業に加え、臨床検査事業を手がける点が特徴だ。臨床検査では動物専門臨床検査会社のマルピー・ライフテックを保有する。2016年4月には獣医療向けの動物用細胞製剤(動物用再生医療等製品)提供を目指し、研究・開発・製造を一貫して実施可能な「池田動物細胞医薬センター」を大阪府池田市に設立した。

2019年6月にはデジタルヘルスのサービスとして「あにさぽ」をオープン。あにさぽは獣医師向けのオンラインプラットフォームで、会員登録することで全国各地の獣医師が遠隔からでもコンサルティングを受けられる。現在は犬・猫に多く見られる皮膚疾患に精通した獣医師によるコンサルティングサービスを展開し、好評を博している。

2019年からDSPAHが開始した獣医師向けのオンラインプラットフォーム「あにさぽ」(出所:DSファーマアニマルヘルス)
[画像のクリックで拡大表示]

DSPAHの新規事業部兼経営企画部主席部員の柴田和彦氏は「犬や猫の疾患も大まかにはヒトと同じ。しかし動物病院の医師は多くが1人ですべての病気をカバーせねばならず、必要に応じて専門医に意見や指導を仰いだり、二次診療施設を紹介するのが現状だ。同サービスならばオンラインで簡単にコンサルティングを受けることができ、コンサルティング結果に基づく治療方針が立てやすい」とメリットを語る。事実、診断の精度向上だけでなく、飼い主への病状説明にも役立つと獣医師に重宝されている。

あにさぽに先駆け、2016年からは新規事業探索プログラムが始まった。今後はペット界でも健康寿命が不可避の課題となる。そこでこれまでのように検査、治療・投薬だけにフォーカスするのではなく、動物病院への来院からアフターケアまでの一連のヘルスケアサイクルに関与し、獣医療の分野でオープンかつイノベーティブなサービスを発掘していきたいとの思いが根底にある。「未来に向けて、新たなモノ、コトを巻き込んで課題を解決するためにさまざまな技術シーズを掘り起こすことが狙い。動物の健康を支えることで、周囲の人間たちも幸せになる世界を作っていきたい」(柴田氏)。