最新技術の見守りに医療関係者らのマンパワーをプラス

生体データを計測する非接触センサーでは、マイクロ波ドップラーセンサーが多く用いられる。これは対象者にセンサーがマイクロ波を照射し、反射した電波の周波数を比較することで脈拍、呼吸、体動を検知する仕組みだ。パナソニックのエアコンみまもりサービスでもこうしたセンサーが利用されている。

福岡市に本社を置くワーコンも同様に、ドップラーセンサーを用いて在宅の高齢者を見守るサービス「おるけん」を展開している。代表取締役の青木比登美氏は看護師時代、高齢者の孤立死に2度も直面したことから、そうした悲劇を繰り返したくないとの思いで2016年に起業した。

武器は最新テクノロジーと医療関係者による手厚いマンパワー。高齢者の自宅にルームタイプとベッドの下に敷くタイプの非接触センサーを設置し、生体データをリアルタイムで収集する。取得したデータはワーコンのコールセンターで見守り看護師が24時間監視し、異常があれば即座に対応。基幹病院やかかりつけ医、訪問看護師と提携し、緊急時には迅速に連絡を取り合う。

ワーコンが提供する非接触センサー。左がベッド下タイプ、右がルームタイプ(出所:ワーコン)
ワーコンが提供する非接触センサー。左がベッド下タイプ、右がルームタイプ(出所:ワーコン)
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現在は非接触センサーに加え、NTTドコモ九州、NTTデータ九州、ロボットベンチャーのMJIと共同開発した在宅医療用対話ロボット「anco(あんこ)」を加え、サービス内容を拡充させた。もとになったロボットはMJIが提供している家庭用コミュニケーションロボットの「Tapia」。そこにNTTドコモの「AIエージェント基盤」を組み込み、ワーコンが蓄積した遠隔見守りのノウハウをベースにシナリオを作成し、NTTデータ九州が対話シナリオを完成させた。

高齢者が話しかけるだけで、雑談や簡単な問診が可能だ。例えば、会話の中で「今日は頭が痛い」と返答がくれば、AIが判断してコールセンターにつながり、ancoの顔部分のディスプレイを見ながらビデオ通話ができる。顔を見て話しかけることで、独居高齢者とのコミュニケーションを円滑にする狙いもある。このシステムにより、看護師1人で約200人を見守ることができるという。

ワーコン代表取締役の青木比登美氏(写真:前原猛)
ワーコン代表取締役の青木比登美氏(写真:前原猛)
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青木氏は「簡単に人につながる仕組みがほしかった。ancoが何かをするわけではなく、あくまで優秀なインターフェース。苦しいときに『助けて!』と叫べばコールセンターにつながる安心感は大きい」と話す。今は福岡市を中心にサービスを展開するが、青森市浪岡地区を舞台にしたヘルステックによる健康まちづくりに、フィリップス・ジャパン、カゴメ、ネスレ日本らと参画。そのほか、横須賀市や熊本市とも連携を開始し、全国各地の開業医から問い合わせが舞い込む。昨今では新型コロナウイルスの影響でオンライン診療システムとしての引き合いも多い。

医療や介護が密接に絡む見守りの領域は、IoTやAIなどのテクノロジーだけですべてを解決できるものではない。高齢者の体調変化を検知した後にどうすべきか。医療関係者のネットワークまでを一気通貫で整備するワーコンのようなスタイルは、これからの見守りに最も求められる姿かもしれない。