――精子検査のキットもありますが、それらとの違いは。

精液は精巣で作られる精子と、前立腺と精のうから分泌される液体の精しょうから成っています。BUDDY CHECKで測るのは、精しょうの部分。ここには、精子の能力を活性化するさまざまな成分が含まれています。BUDDY CHECKではテストステロン、クレアチン、スペルミン、亜鉛、8-OHdGと最大で5つの成分を検査します。

発売前の2017年秋にはクラウドファンディングで支援者を募り、最終的に194人に検体協力していただきました。不妊治療での採精はありますが、普通は精液の成分を測る機会はありませんので、一般の人の精液がほしかったからです。

――調査の結果、どんなことが見えてきましたか。

例えばお酒を飲まない人よりも飲む人、ブリーフよりもボクサーパンツを好む人のほうが精液中のテストステロンが多いことがわかりました。テストステロンは男性ホルモンの1つで、男らしさの源として知られています。また、精子の持久力を上げると見られるクレアチンは、早朝勃起(朝立ち)の頻度が高い人ほど多い傾向にありました。とは言え、これらはあくまでクラウドファンディングに参加した方々のサンプルであり、まだ実現したいことの1%ほどしか進んでいないのが現状です。

精液は検体として宝の山だと思っている

――どんな人たちがBUDDY CHECKを利用していますか。

メインは不妊で、30〜40代がボリュームゾーンです。ここ数年で男性不妊に対する意識もだいぶ変わってきたと感じています。妊活にもかなり協力的になってきたので、妊孕性(にんようせい、妊娠しやすさのこと)のサポートであれば、排卵日にあわせてコンディションを保つために継続検査を推奨しています。それでもいまだに女性と男性では隔たりはありますが。両者の大きな違いはプライド。男性は検査した結果、自分が問題で妊娠がうまく行かないことを直視したくない。一方、女性は現実を直視して原因を探ろうとします。

BUDDY CHECKの同梱物。採精カップはハスの葉の構造をヒントにした超撥水性素材を採用(写真:小口正貴)
BUDDY CHECKの同梱物。採精カップはハスの葉の構造をヒントにした超撥水性素材を採用(写真:小口正貴)
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50代以上の中高年だとEDが増えますね。テストステロンの低下はEDに関係があることがわかっていますから、結果を見て診療を受けられる方も多いのではないでしょうか。タブー視されがちですが、性欲は食欲、睡眠欲と並ぶ大事な欲求であり、性生活は生きていく上での大きな楽しみでもあります。しかも生命に直結しないためアカデミアのメスが入りにくい領域。この部分の研究を突き詰めればQoL(生活の質)向上にもつながります。

――確かに、ほかの検体とは違いタブー視されることも多そうです。

はい。精液を採取して送るなんて恥ずかしい、そうした見方があるのは理解しています。ただ、将来的には当たり前になるだろうとの思いもある。ヘルスケアシステムズで2012年から提供している「ソイチェック」は、女性の更年期症状や美容に関わるエクオールを検査するキットですが、当時は人前で女性が更年期症状を明かすことはほとんどありませんでした。それが今では累計30万人を超えるユーザー数にまで成長しました。

ダンテと前後してSeemやTENGA MEN’S LOUPEのような精子測定ソリューションが出てきたこともあり、医師たちが注目していることも確かです。精液は血液のように採取に痛みを伴わず、普段は捨てているわけです。それを健康のために再利用すると考えれば、見方も変わるはず。社会の風潮が変われば、きちんと普及するポテンシャルを秘めていると思います。

――ブレイクスルーのための課題は?

ユーザーに検査結果を示した先の「解決策」を提供することです。そのために明確なエビデンスを蓄積して、改善に資するサプリや運動プログラムなどと結び付けていきたい。いずれにしろ、検体としての精液が宝の山との考えは変わりません。アカデミアからの精液成分に対する興味は高く、今も横浜市立大学や静岡県立大学と共同研究をしています。今後はテストステロンやクレアチン、スペルミンなどの成分が男性の健康にどのように作用するかの研究を続け、大学発ベンチャーの強みを生かしていきたいと考えています。精力増進、男性機能回復の領域はどうしても昭和のイメージになりがち。我々は確かなエビデンスでそこにイノベーションをもたらすことができる。そんな自信を持っています。