外出から戻ったらこまめに手を洗い、消毒する。移動中はマスクを着用し、可能な限りソーシャルディスタンスを確保する。2020年5月のコロナ禍による緊急事態宣言の解除以降、徐々に動き始めた社会では、すっかり「新しい生活様式」が定着した感がある。紫外線によるウイルス不活性化、非接触エレベーター、コロナ疲れの可視化など、新たなスタイルに寄り添ったテクノロジーをまとめた。

実装が始まったコロナ対策、大型イベント復活に期待も

気温35度を超える猛暑日でもほとんどの人がマスクをしている――。そんな夏は今年が初めてである。2020年9月現在、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)と共生するWithコロナの時代は依然進行中だ。こうした時代を支えようと、さまざまな企業が新型コロナに立ち向かうテクノロジーの実装や開発を進めている。

9月1日、ウシオ電機はウイルス抑制・除菌フィルター搭載の「Care222 U3ユニット」の販売を開始した。Care222は人体に安全な200~230nm(ナノメートル)の紫外線だけを照射する技術。有人環境下で、ウイルスや細菌の付着が疑われる空間、または建材、器具、衣服などに直接照射することで、ウイルスの不活性化や殺菌ができるという。

Care222 U3ユニットは、222nm遠紫外線をピークに持つエキシマランプと独自技術の特殊フィルターを組み合わせたもので、人感センサーやタイマーを搭載。8月には先行して医療機関に提供してきたが、今後はオフィス、学校、商業施設などでの活用を見込む。

Care222 U3ユニット(出所:ウシオ電機)
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さらに「Care222 光源モジュール」を組み込んだ紫外線除菌・ウイルス抑制装置を、東芝ライテックと共同開発する。装置は公共交通機関の電車やバス、自家用車向けなどを想定し、2021年1月からの販売を目指す。本技術に関しては日本環境感染学会も新型コロナ感染拡大阻止への期待を寄せており、本格的な実装が望まれる。

左がCare222 光源モジュール、右が電車内の照射イメージ(出所:ウシオ電機)
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広島県のアスカネットは、同社が開発した「ASKA3Dプレート」を大手回転寿司チェーンの無添くら寿司の受付機に提供。2020年7月から実証実験を開始した。画像や物体の光線を特殊構造のガラスプレートを通過させ、画面を空中に結像する仕組み。これにより、非接触でのタッチ操作を実現した。宙に浮かんだ映像をタッチする未来的な感覚が最大の魅力だが、新型コロナ以降は非接触をキーワードとした展開も視野に入れている。

ASKA3Dプレートを用いたくら寿司での非接触受付機(出所:アスカネット)
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同じく非接触テクノロジーで注目したいのがエレベーター大手のフジテック。既設エレベーター向けに非接触ボタンの販売を8月から開始した。もともとは新設エレベーター用の機能だったが、衛生対策ニーズの高まりによって商品化に踏み切った。赤外線ビーム式センサーを採用し、手をかざすとエレベーターを操作できる。

非接触エレベーターの動画。万一のために開閉ボタンは物理式を残すが、抗菌機能を付加(出所:フジテック)

高度な医療関係者向けコミュニケーションアプリ「Join」を手がけるアルムは、早くから積極的な新型コロナ支援策を打ち出してきた。今年2月の段階で感染対策用途の追加IDを無料にしたほか、4月には医用画像症例集を無償提供。8月には新型コロナ対策プロジェクトの一環として、ブラジルの遠隔診療ソリューションに採択された。

さらに、救命・救急補助のスマホアプリ「MySOS」を改良。スマホ内蔵カメラの技術を組み込むことによって新型コロナウイルス診断の重要指標であるSpO2(血中酸素飽和濃度)や呼吸数の自動計測・記録を実現した。9月には、本アプリを用いた新型肺炎感染対策ソリューション「MyPass」によるサッカーJリーグの試合での実証実験を開催予定。チケット情報とMySOSで計測した身体データ、事前配布したPCR・抗体検査キットの結果を連動させることで、参加者の感染リスク状況を把握する。

MyPASSの検査フロー(出所:アルム)
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来場時にもスクリーニングを行い、万が一イベント後に感染が発覚した場合は電子チケットシステム情報から座席を確定して濃厚接触者や保健所への連絡、医療機関への受診勧奨をすみやかに行う。事前の登録やスキームは簡単なものではないが、スポーツに限らず、コンサートや舞台、大規模セミナーなどが大きな打撃を受ける中、一筋の光明となるソリューションと言えよう。