働き方に対する世代間のズレがすれ違いを生む

――テレワークの環境では「部下がきちんと働いていないのではないか」と不安に駆られる上司も多いと聞きます。リモートでの評価方法がわからず、それがまたイライラの原因になっているのでは。

それは、オフラインのときの人間関係がしっかりしていなかったことの裏返しです。逆にオンラインで適切な距離を保つことができて、従来よりも活発にコミュニケーションが取れるようになったケースもあります。

ただ、テレワークが浸透する中でこれまでになかった問題が出てきているのは事実です。「上司がオンラインで仕事ができないので、自分だけでなく社員も出社させる。どうすればいいか」といった相談が実際にありました。そのときは、できること、やりたいことだけをやって、できないこと、やりたくないことの方法を考えてみなさいとアドバイスしました。

なぜなら、上司の性格を変えることは不可能だからです。ただし上司に対する接し方、行動は変えられます。できないことを無理にやろうとするからイライラしてしまう。関わりたいことと関わりたくないことの線を引くことはとても重要です。

日本アンガーマネジメント協会 代表理事の安藤俊介氏(出所:日本アンガーマネジメント協会)
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――世代によって働き方の価値観が異なる象徴的な例ですね。

私自身は48歳なのでギリギリ昭和の働き方ができますし、少し上の世代の気持ちも理解できます。でも平成以降に生まれた30歳前後になると、仕事よりもプライベートが優先ですから根本的にギャップがあります。

現在50代半ばの人たちは、コミュニティが会社しかなかった人が多い。だから会社にいる時間が長く、会社の仲間と飲みに行くことが癒やしになっていました。それに加え、働き始めた頃に思い描いていた30年後の現実があまりにも違うことにも苛立ちを感じているはずです。大企業でもリストラや配置転換が当たり前になり、「こんなはずではなかったのに」との思いがある。ずっと会社が面倒を見てくれるはずだったのに、あれよあれよという間にこれまでの仕組みが崩れてしまいました。

でも今の若者は会社の外にコミュニティを持っているので、そんな感覚はありません。そう考えると、コロナ禍の状況が居心地の良いコミュニティを壊してしまったことに対する怒りもあるのかもしれません。

――新型コロナの感染拡大以前から上司によるパワハラが取り沙汰されていますが、日本企業ならではの特徴などはありますか。

我々の企業研修ではほとんどが管理職を対象としています。その際、日本企業の悪い部分が透けて見えてきます。本当は研修を受けさせたい「怒りっぽい人」が決まっているのに、その人だけ受けさせると角が立つため、ほかの管理職も受講させるのです。私からすれば、こんなおかしなマネジメントはありません。

大抵、そうしたケースでは他人から「できる人なんですけど、人間関係が……」と注釈がつくのですが、本人の自覚がない場合が最も辛い。いくら能力が高くても怒りによって周囲の空気を萎縮させ、チームの能力を引き下げているのであれば、全体としてはマイナスでしょう。でも日本企業は1人の高パフォーマンス人材を優遇してしまうきらいがある。

パワハラは、社員が安心して自由に発言したり行動したりできる状態である心理的安全性を著しく低下させてしまうので、そんな組織は長続きしません。だからこそ米国にはアンガーマネジメントが文化として根付いているのです。日本企業も多様性が避けられない時代ですから、今後はアンガーマネジメントの重要性が増してくると考えています。