“オンライン診察×薬”のプラットフォーム「スマルナ」を展開するネクイノ。同社ではスマルナを皮切りに、日本での本格的なPHR(Personal Health Record)活用に向けた動きを加速していく構えだ(前編)。その先にある医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現について、ネクイノ代表の石井氏に聞いた。

PHRを軸にストレスのない医療体験が実現可能になる

スマホアプリでオンライン診察を受け、医師が処方した上でピルをユーザー宅に届ける「スマルナ」。日本では入手しづらいピルを時間や場所に縛られずに入手できるとあって、リリース開始から3年余りでアプリの62万ダウンロードを超えるなど、対象年齢の女性から支持を得ている。

スマルナを展開するネクイノは、大阪市が拠点のスタートアップ。ミッションに「世界中の医療空間と体験をReDesign(サイテイギ)する」を掲げるように、描くビジョンは大きい。2021年10月に公開した「ネクイノFuture Vision Movie」では、医療における未来をわかりやすい形で切り取った。

<a href=" https://www.youtube.com/watch?v=CdHM5QwbN4k" target="_blank">ネクイノFuture Vision Movie</a> から。空間上に個人の健康・医療情報が浮かび、常にAIなどが管理しているイメージ(出所:ネクイノ)
ネクイノFuture Vision Movie から。空間上に個人の健康・医療情報が浮かび、常にAIなどが管理しているイメージ(出所:ネクイノ)
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動画は2018年から2028年までの時間軸で、ある1人の働く女性と1人の医師の関係を追う。テクノロジーの力により、2028年には「患者、医師ともにストレスを抱えないスマート医療が実現される」ストーリーとなっている。

ネクイノFuture Vision Movieから。AIが患者のPHRを報告して医師の診断を仰ぐ(出所:ネクイノ)
ネクイノFuture Vision Movieから。AIが患者のPHRを報告して医師の診断を仰ぐ(出所:ネクイノ)
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鍵を握るのは、個人の保健・医療情報を記録したPHR(Personal Health Record)である。ネクイノを率いる石井健一氏は、アストラゼネカ、ノバルティスファーマと大手外資系製薬企業を経て2013年に医療系コンサルを設立。コンサル時代に数多くのリサーチを重ね、「将来の医療像」がどうあるべきかを700ページにも及ぶレポートに蓄積し、2016年にネクイノをスタートさせた。その成果の1つが“オンライン診察×薬”のプラットフォームのスマルナだ。だが、石井氏は「スマルナはPHRを軸とした医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の登山口に過ぎない」と語る。

「根本には、2011年に大学院に進学して研究した“超多忙な医師”の現実があります。卒論では、ある専門医に密着して1日の内容を徹底して調べたのですが、どうしても専門医でなければできない仕事はわずか17%しかありませんでした。残る時間のほとんどが、専門医以外の医師、あるいは医療従事者でもカバーできるものだったんです。

日本の医療は世界的に見てもかなり高水準であることは間違いありません。これは、我々の世代まで健闘してくれた医師たちが、自分の生活を犠牲にしてまで作り上げてくれたシステムです。しかし、持続可能性の観点では医師が燃え尽きてしまったら替えがきかないわけです。いまの時点でテクノロジーを導入して生産性を高めておき、次の10年、20年に向けて一刻も早く医師の働き方を最大化できる仕組みを作っていく必要がある。だからこそ、我々は医療DXという高い山を登ることを目標にしているのです」(石井氏)