キーエンス出身ならではの顧客の潜在ニーズの追求

医療AIのスタートアップは、メディカルドクターが起業するケースが多い。例えば、脳の領域では手術支援AIを提供するiMed Technologies や内視鏡AIを開発するAIメディカルも現役医師が立ち上げた。だが、青山氏は慶應義塾大学法学部の出身。この分野では異例の存在である。

卒業後はキーエンスに就職し、入社2年目で史上最年少の全国のトップ営業マンになった。米国、ブラジル、メキシコと海外における現地法人立ち上げやマネジメントに従事したが、メキシコ駐在時代に父親が深刻な脳疾患であることを聞き、それが人生の転機となった。

「おかげさまで今は全快したが、疾患の原因がわかるまでにいくつもの病院をたらい回しにされ、十数年も苦しんでいた。そのときに脳の領域に関することを片っ端から調べた結果、有効なテクノロジーが存在しないことが見えてきた。その発見が起業のきっかけになっている」(青山氏)

高い企画開発力を持ったグローバルテック企業出身ゆえ、青山氏はその経験を生かしたモノづくりを行なっている。ソフトウエアの使いやすさ、すなわちUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)を重視し、顧客が欲しいと気づいていない潜在ニーズの追求をしている。特にBraineerは医療機器プログラムであるため、製品の上市後に頻繁にデザインを変えることはできない。CQ testやBrain Life Imagingで作り込んだUI/UXや付加価値の高い機能をBraineerに反映していくという。

2021年11月には11億2000万円の資金調達に成功し、さらなる飛躍を目指す(出所:Splink)
2021年11月には11億2000万円の資金調達に成功し、さらなる飛躍を目指す(出所:Splink)
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「医療機器プログラムだからといって、UIに甘えは許されない。提供した製品がどれだけ使いやすいかが鍵を握る。モノづくりの企業で研鑽を積んできたので、製品を出しておしまいではなく、使い続けてもらう仕組みをどのように作っていくかに注力している。その点は、Splinkならではの強みだと思う。

医療ベンチャーを立ち上げてあっという間に5年が経ったが、医療はしっかりと地に足が着いていないと信頼されない厳しい世界。逆に、確たるエビデンスを伴って良質なサービスを提供すれば、認知症には大きなペインがあるので間違いなく受け入れられるはずだ」(青山氏)