“書く瞑想”と言われるジャーナリングの手法を採り入れたアプリ「muute」(ミュート)。10〜20代後半のZ世代を中心に人気を集め、リリースから1年余りで約60万ダウンロードを記録した。muuteが次に狙うのは、学校教育での活用だ。実証に協力した東京の三田国際学園中学校・高等学校の教諭を交え、ジャーナリングの効果について話を聞いた。

リリースから約1年で60万ダウンロードを達成

コロナ禍で浮き彫りになったメンタルヘルスの重要性。大人に限らず、実りある学校生活を制限された中高生も例外ではない。2021年2月に発表された国立成育医療研究センターの「コロナ×こどもアンケート」第4回調査では、中学生の24%、高校生の30%が中等度以上のうつ症状があると回答した。コロナ時代特有の閉塞感が、子どもたちのメンタルに重くのしかかっている証左と言える。

親や友だちに相談して解決できればいいが、的確に“心のモヤモヤ”を他者に伝えることは難しい。ましてや多感な思春期だけに、悩みや不安を抱え込んでしまう傾向が強く、心が疲れる悪循環に陥ってしまう。モヤモヤを吐き出したくても紙の日記や日記アプリは長続きせず、Twitterの鍵垢(鍵付きアカウント)では愚痴の垂れ流しが目的になり、根本的な問題は解決しない。

心の揺れをもっとうまく整理できるツールはないのだろうか?――。そんな若者のニーズにうまく刺さったのが、2020年12月にリリースされたスマホアプリの「muute」(ミュート)である。muuteは感情の赴くままを書き連ねる「ジャーナリング」という手法を採用。ジャーナリングは“書く瞑想”と呼ばれ、マインドフルネスやウェルビーイングとしても注目されている。

ポジティブ、ネガティブにかかわらず、ユーザーはアプリ内でひたすら思い浮かんだ感情を表現し、書いた内容に対してAI(人工知能)がフィードバックを返す。その結果、自分自身と向き合い、客観的に自分を振り返ることができる。

左はmuuteのホーム画面。感情の変化をグラフで可視化する。暖色系のほっこりするデザインが優しい。右は用意された感情のメニュー。直感的に今の感情をタップして投稿可能(出所:ミッドナイトブレックファスト)
左はmuuteのホーム画面。感情の変化をグラフで可視化する。暖色系のほっこりするデザインが優しい。右は用意された感情のメニュー。直感的に今の感情をタップして投稿可能(出所:ミッドナイトブレックファスト)
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自由記述はもちろんのこと、例えば「あなたにとって大切な人は誰ですか?」といった設問に答えながら書いていくガイドジャーナリング機能もある。これなら気分が乗らないときでも気軽に書くことができ、継続も苦にならない。そして心を可視化する習慣が身につく。

1990年代後半以降に生まれ、いわゆるZ世代をメインターゲットに開発した背景もあり、デジタルネイティブがなじみやすい仕様となっている。ユーザーインターフェース(UI)は直感的かつシンプルで使いやすく、デザインはポップで明るい。写真や音楽と連携することも可能だ。構えずに心の裡(うち)をさらけ出すことができ、AIがフラットな視点で気づきを与えてくれる点が受け、リリースから1年余りで約60万ダウンロードに達した。

2022年1月、muuteは全国9校の中学校や高校との共同実証プロジェクト「muute for school β」を実施した。実証では約2週間にわたり、ホームルームの時間や自由なタイミングを使って心に生じた感情をmuuteに記録した。muuteを開発・運営するミッドナイトブレックファスト代表取締役の喜多紀正氏は、プロジェクトの経緯についてこう語る。

「Twitterなどでいただくユーザーさんの声の中から、多くの学校の先生が利用していることがわかった。そこから先生たちに連絡を取り、少しずつ輪を広げてきた。先生たちと話す中で学生の感情に向き合う力や感情、思考の言語化に課題を感じることがわかった。muuteは感情の揺れを記録して、自分の感情をラベリングしたり、解像度を上げることが可能であり、とても親和性が高いと感じた。中高生の感情を基点とした自己理解力とコロナ時代のメンタルヘルス向上にmuuteを役立てたいと考えたのが出発点だ」(喜多氏)

実証プロジェクト「muute for school β」の様子(出所:ミッドナイトブレックファスト)
実証プロジェクト「muute for school β」の様子(出所:ミッドナイトブレックファスト)
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