木製架台を使った住友林業の太陽光発電所

鋼材製より安く、作業性も向上

2014/02/25 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所

 茨城県鹿嶋市にある住友林業グループの住友林業クレストの鹿島工場。鹿島灘に面した沿岸にあり、年間を通じて安定した風が吹き、周辺には複数の大型の風車が回る。2013年11月、同工場の隣接地に出力876kWの「住友林業鹿島ソーラー発電所」が稼働した(図1)。太陽光パネルはカナディアン・ソーラー製、パワーコンディショナー(PCS)には東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した(図2)。ここまでは国内でもよく見るシェアの高い製品が採用されている。だが、太陽光パネルの後ろに回ると、一目で同発電所ならでは特徴がわかる。架台を木材で組み立てているのだ。無機質な鋼材製の架台に比べ、角材の木肌が醸し出す自然なぬくもりと存在感が印象的だ。

図1●「住友林業鹿島ソーラー発電所」の全景
(出所:住友林業)
[画像のクリックで拡大表示]
図2●東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナー(PCS)を導入
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 住友林業は、国産材など木を使った家造りで知られる。同社の「木化営業部」は、住宅以外の木材利用の用途開発に取り組んでいる。「太陽光発電システムの架台を木で作れないか」――。固定価格買取制度(FIT)が始まって太陽光発電設備の建設計画が急増するなか、ある個人事業主から木化営業部にこんな相談がもちかけられた。

スギの角材をシンプルに組み立てる

 同社では、山林環境本部に環境エネルギーグループを設置して、バイオマス発電や太陽光発電事業に取り組んでいる。木質系住宅関連資材や住宅設備機器の製造販売を行うグループ会社、住友林業クレストの鹿島工場に隣接した遊休地に、出力876kWの太陽光発電所「住友林業鹿島ソーラー発電所」を建設する計画が進んでいた。そこで、急きょ同発電所の一部を木製架台で建設できないか検討し始めた。

 台風などの強風にも耐える強度、こうした風雨に耐えながら20年間、太陽光パネルを支え続ける耐久性が求められる。加えて、架台建設を事業として軌道に乗せるには、コストが重要になる。鉄製やアルミ製など鋼材を使った架台に比べて、同レベルか安く作れなければ、事業性は確保できない。木化営業部で設計案を作り、強度や耐久性やコストを試算したところ、「なんとかいけそうだ。やってみよう」との結論に達し、本格的に動き出した。

 木材については、将来の量産とコストを考慮し、建材として一般的な105mm×105mm角のスギの人工乾燥材(KD材)を使った。この1種類の角材を極力、シンプルな構造で組み上げる設計を目指した。まず角材を一辺約4mの四角に組む。完成後、この上に8枚の太陽光パネルを載せることになる。この角材の枠を設置角20度の傾斜でコンクリート基礎の上に設置する。傾斜が高い方は角材を垂直と斜めに渡した(図3)。低い方は基礎と角材の間をレベル調整できる鉄の棒を渡して支えた(図4)。これが架台の1ユニット(基)となり、横に15ユニット並べて1列とした。

図3●架台1ユニットの構造
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図4●パネルの傾斜を低い方で支えるのは鉄の棒にした
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

3タイプの薬剤で腐食とシロアリを防ぐ

 木製架台で大きな課題になるのが、発電事業を続ける20年の間、腐ったりシロアリに食べられたりする被害からいかに防ぐかだ。木造建築の場合も同じリスクはあるが、木の柱は外壁などで守られている。20年間、直接、風雨にさらされ続ける架台の場合、一般的な建材以上の防食防蟻対策が必要になる。そこで、防食防蟻処理を手掛ける企業などとも相談し、薬剤を加圧・注入することで、十分な防食防蟻性を得られることが分かった。

 「住友林業鹿島ソーラー発電所」は、住友林業にとって初めての木製架台ということもあり、3タイプの防食防蟻剤を使った。ホウ素化合物を主成分とするホウ酸塩(図5)、銅化合物を主成分とするマイトレックAQC(図6)とCUAZ(図7)だ。いずれも公園などで広く使われている防食防蟻剤だ。また、虫害に強く、高い耐腐食性を持つとされるヒバ材を使い、防食防蟻剤で処理していない角材による架台も、実証的な意味合いから設置した(図8)。

図5●ホウ酸塩で処理した木製架台
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図6●マイトレックAQCで処理した木製架台
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図7●CUAZで処理した木製架台
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図8●ヒバ材を使って防食防蟻処理していない木製架台
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 建設コストを削減する上で重要になるのが、施工性の高さだ。架台を作るのに使う角材は、すべて事前に協力工場でプレカットしてから、防食防蟻処理したうえで、発電所の建設現場に運び込み、作業者が接合金具とビスで組み上げる。現場ではノコギリは使わない。角材と角材の接合部は、基本的に6本のビスで固定する(図9)。また、太陽光パネルと角材との固定は、専用の金具を作り、ビス2本で固定した(図10・11)。ビスの長さは約5cm。これを電動ドライバーで次々とねじ込んでいく。木製架台を組み上げた作業者は、大工などの専門家ではなく、こうした木材の接合作業を初めて担当した人がほとんどだった。それでも慣れてくると、4人1チームで1日に15ユニットも作れるようになったという。

図9●角材と角材の接合部分
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図10●パネルを角材に固定した箇所
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図11●パネルを設置中の木製架台
(出所:住友林業)
[画像のクリックで拡大表示]

1kW当たりの設置コストは鋼材製より安い

 1ユニットに使う角材の重さは140kg。鋼材製架台に比べるとかさ(容積)が大きいため、重いイメージがあるが、鉄製架台に比べると軽いという。実は、「住友林業鹿島ソーラー発電所」の総出力876kWのうち、木製架台を採用したのは全体の3割程度で、残りは鉄製架台で設置した。鉄製架台については、太陽光発電システム全体のEPC(設計・調達・施工)を担当したウエストグループが建設したが、1kW当たりの設置費用は、住友林業が担当した木製架台の方が安くなったという。加えて、「木製架台の部材は意外に軽いので、鉄製の設置より作業が楽」との作業者の声も多く、作業者への負担が小さいことも分かった。

 このほか、住友林業では、木製架台の利点として、鋼材製に比べ沿岸部でも塩害による腐食の心配がないこと、20年後に太陽光発電事業を終えて架台を撤去する際には、バイオマス発電などの燃料に活用して有効活用できること、などを挙げる。同社では、今後、全国で木製架台の採用を提案していく方針で、設置する場所に合わせた構造計算や、地域材の有効活用を視野に入れた提案も考えている。メガソーラー(大規模太陽光発電所)は、雇用創出効果が小さく、地域社会への貢献が常に課題になる。地元産の木材を活用できる余地のある木製架台はそうした視点からも注目されそうだ。

●施設の概要
発電所名住友林業鹿島ソーラー発電所
住所 茨城県鹿嶋市大字平井字灘2276-6
事業者住友林業
売電開始日2013年11月6日
発電容量876kW
EPC(設計・調達・建設)ウエストグループ
太陽光パネルカナディアン・ソーラー製
PCS(パワーコンディショナー)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
木製架台住友林業
■変更履歴
本文中で「住友林業ソーラー発電所」としていましたが,「住友林業鹿島ソーラー発電所」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2014/2/25]