メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

太陽光パネルの設置角を年間に6回、人手で変える

<第4回>可動式架台を独自に開発、雪国の不利を克服

2015/03/04 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所

 山形県南部、米沢市や高畠町などからなる置賜地域は、最上川の源である吾妻連峰の裾野に広がる米沢盆地に位置する。日本海を越えてきた湿った季節風の影響により、冬には最深積雪が1mを越える年もある。ひと冬での累積の積雪量は10mにも達する。

 出力1.147MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「露藤発電所」は、そんな日本有数の豪雪地帯にある。米沢市などを中心に建設業を営む高山工務店(山形県米沢市)が高畠町中島に建設し、2014年10月31日に稼働を開始した(図1)。1万5076.56m2の敷地に約4500枚の太陽光パネルを並べた(図2)。同発電所は、設置角を1年間に6回変更するというユニークな運営手法で、年間約133万1100kWhの発電量を見込んでいる。

図1●高山工務店が建設した「露藤発電所」(出所:高山工務店)
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図2●建設中の「露藤発電所」。設置高は約2mにした。太陽光パネルはSIソーラー製(製造元は台湾AU Optronics社)を採用(出所:高山工務店)
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積雪期はパネルを垂直に立てる

図3●冬には垂直して積雪を防ぐ(出所:日経BP)
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図4●3~4月には南向きに45度に傾ける(出所:高山工務店)
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図5●夏至を挟んだ5~8月の間は北向きに10度に傾ける(出所:高山工務店)
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 雪国にメガソーラーは向かない――と言われる。雪国の太陽光発電所は、一般的にパネルの設置角を30~40度にして、雪が滑り落ちやすくする。滑り落ちた雪はパネルの前側に積み上がって山を作り、その高さがパネルに達すると、それ以上、滑り落ちなくなり、パネル全体を長期間、雪が覆うことになる。そのため、設置高を2m前後まで高くして、滑り落ちた雪がパネルまで届かないようにする。そうすると建設コストが高くなる。また、豪雪地帯ともなると、設置高を2mにしても、パネル下に雪山が達するので除雪が必要になる。

 そこで、高山工務店の高山栄社長は、発想を変えた。「冬はパネルを垂直にして、雪がパネルに絶対に積もらないようにした方が、除雪をする必要がなくなり、積雪中や積雪直後の日射を有効に発電に使えるはず。雪国だからといって、南向きにパネルを30度で固定すると、夏の間に光が当たる時間が減ってしまう」と考えた。

 その結果、編み出したのが、太陽光パネルの設置角を変えられる可動式架台を採用し、年間を通じて6回、架台を調整してパネルの設置角を変えるという運用方法だ。積雪の多い12月から翌年3月の間はパネルを垂直に立てて雪が積もるのを防ぐ(図3)。3~4月には南向きに45度(図4)、4~5月には南向きに20度、夏至を挟んだ5~8月の間は北向きに10度(図5)、8~9月には南向きに20度、9~12月には南向きに45度にする。

5~8月には「北向き」に10度傾ける

 こうした設置角が発電量を最大化するために適していることを理解するには、まず、1年を通じた太陽の南中高度と日の出と日の入りの方角を把握する必要がある(図6)。春分(3月21日頃)と秋分(9月21日頃)には太陽は東から上って西に沈む。北緯38度の高畠町の場合、南中高度は52度になる。52度までの日射に垂直となる設置角は38度以上になるので、この間(3月~4月と9~12月)は南向きに45度にする。

図6●夏至前後には、日の出・日の入りは北側になる(出所:日経BP)
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 春分から夏至(6月22日頃)までと、夏至から秋分までの南中高度は60~70度になり、その高さの日射と垂直となる設置角は20~30度までになるので、この間(4~5月と8~9月)は南向きに20度にする。さらに夏至の南中高度は約75度になり、日の出と日の入りの方角は北側にずれる。そこでその前後(5~8月)は北向きに10度にする。

 また、冬至(12月22日頃)の南中高度は約29度となり、その高度までの日射と垂直となる設置角は61度以上となる。ただ、この間は大量の雪が降るので、パネルに雪が積もらないことを最優先して、設置角度は90度、つまり垂直に立ててしまう。

 こうした設置角の変更の中で、意外なのは、5~8月までは「北向き」に10度傾けるという考え方だ。実は、高山工務店では、野立てのメガソーラーに取り組む以前から、住宅用の太陽光発電システムを屋根上に設置してきた実績がある。高山社長は、「夏至の前後には、太陽は北側から上って北側に沈むので、朝夕は南向きのパネルに日が当たらない時間があることに気付いていた。架台を可動式にして、夏の間は北に向けるように変更すれば、この課題を克服できるかもしれない」と考えた。

3人が1日で1MW分の設置角度を変更

 理想的には、2軸方式の追尾型架台を電動で動かし、時々刻々と太陽の動きを追うのが理想的というが、費用対効果の点で、現実的ではない。そこで、1軸方式で設置角を変えられる架台を使い、季節に応じて、人手で角度を変える、という方式に行き着いた。

 可動式架台は、汎用の単管パイプを組み合わせ、稼働部分は、「自在クランプ」というジョイントを使って独自に開発した(図7)。パネルを縦向きに6枚セットに固定したアレイを作り、それを支える3本の単管パイプを固定する位置をずらすことで、角度が変わるようにした(図8)。2人でパネルを支えながら、1人がジョイントを固定するという手順で進める。3人一組のチームで延べ約1日あれば、1MW分のパネルの角度を変えられるという。「実際には、ほかの建設の仕事の合間をうまく使いながら、数日かけて、すべての角度を変えるようにしている」(高山社長)という。

図7●稼働部分は「自在クランプ」というジョイントを使った(出所:日経BP)
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図8●パネル裏の支柱を固定する場所をずらすことで設置角を変える。固定する個所に目印を付けた(出所:日経BP)
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設備利用率が1ポイント上昇も

 今年2月上旬に、取材で「露藤発電所」を訪れた。積雪は約1m以上に達しているものの、垂直に並んだパネルは、雪の上に余裕をもって顔を出している(図9)。同日に近くに建設された設置角30度に固定した太陽光発電所では、パネルの上に雪が積もっていた(図10)。垂直にしたことによる積雪対策は、一目瞭然だ。「垂直に立てることで、風を真正面に受けることになるが、十分に強度計算しているので、これまでに破損などの不具合はない」と、高山社長は言う。

図9●1m以上積もっても、パネル全面が日射を受けられる(出所:日経BP)
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図10●同日に近くのサイトでは、パネルのほぼ全面に雪が…(出所:日経BP)
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 単管パイプやジョイント金具の耐久性については、「建設会社として、単管パイプとジョイントを使った建築案件を長年、手掛けてきた。多少の腐食はあっても、十分に20年以上の使用に耐えている」(高山社長)。

 高山工務店が、「露藤発電所」に先行して、可動式架台を導入した米沢市の太陽光発電所(約300kW)では、2013年9月~2014年8月までの1年間の設備利用率の結果が出ている。それによると、年間の設備利用率は13.3%と、雪国ながら全国平均並みの水準となった。同じ置賜地域の長井市にある1.9MWのメガソーラー(設置角20度固定、積雪期は除雪)における同期間の設備利用率は12.0%というデータがあり、それと比べると1ポイント以上、設備利用率が高いことになる。

除雪費用がゼロになる効果も

 長井市にある固定式架台のメガソーラーでは、積雪期の設備利用率は5%を下回るが、米沢市の可動式架台を採用したサイトでは、同8%程度を維持している。高山社長は、「固定式の場合、ひと冬の除雪費用は数十から数百万円かかる。それがゼロになるうえに、設備利用率が1ポイント程度、改善すれば事業性がかなり向上する」と話す。

 高山工務店は、自社発電所と建設を請け負った案件を含め、6サイトの野立ての太陽光発電所を稼働させた実績がある(図11、図12)。そのうち5サイトで可動式架台を採用した。同じように雪国での太陽光発電に取り組んでいる事業者からの見学が相次いでおり、積極的に情報を提供しているという。

図11●高山工務店が建設した可動式架台を採用したサイト(出所:高山工務店)
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図12●これまでに5サイトで可動式架台を採用した(出所:高山工務店)
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