豪雪に備える北陸最大のメガソーラー

東京都の官民連携インフラファンドが出資

2015/04/28 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所

 北陸新幹線を降りると、LRT(次世代型路面電車)が待ち受け、市街のあちこちで自転車を共同利用できる――富山市は、環境負荷の少ない先進的な交通システムで知られる。加えて、再生可能エネルギーの開発も進んでいる。4月10日、市街からクルマで30分ほど、富山市舟倉の山間で、北陸で最大規模となる出力7.7MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「SGET富山メガソーラー発電所」の竣工式が行われた(図1)。

図1●北陸最大規模となる「SGET富山メガソーラー発電所」(出所:スパークス・グループ)
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 「舟倉の県有地をどう活用するかは、大きな懸案だった。今回、メガソーラーが完成したことで、県が進める再生可能エネルギーの推進にも貢献することになった…」。竣工式に参加した石井隆一・富山県知事は、こうあいさつした。同県は水力に恵まれ、その発電量は、県内の電力需要の7割を超え、さらに小水力発電の新規開発にも力を入れている。

 富山県や富山市は、いまでこそ自他ともに認める環境先進地域だが、1910年代以降、「イタイイタイ病」で苦しんだ歴史を持つ。実は、石井知事が祝辞で述べた「有効活用が懸案だった県有地」とは、カドミウム汚染からの脱却で残された負の遺産ともいえた。

汚染農地の復元に客土を採取

 富山県では1979年から、神通川流域のカドミウム汚染農地の復元に乗り出した。汚染土壌を埋めた上に、他から運んだ汚染されていない土を入れるという工法を採用し、33年後の2012年、763haに及ぶ土地の復元が完了した。復元工事では、県内の複数の場所から客土を採取した。メガソーラーに生まれ変わった舟橋の県有地も、その1つだった(図2)。

図2●カドミウム汚染農地の復元工事に必要な客土の採取場だった(出所:日経BP)
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 山を切り崩し、客土を採取した後は、階段状に平らに均されているが、山間のため他の用途が見つからなかった。ただ、太陽光発電なら、ほとんど土木工事をせずに、パネルを設置できる利点がある。雨水の排水路やため池なども、すでに備えているなど、太陽光パネルの設置には向いた条件が揃っていた。県は、跡地利用をメガソーラーに決定し、事業者を公募した。その結果、スパークス・グループ(東京都品川区)の子会社、スパークス・グリーンエナジー&テクノロジーと、東芝、熊谷組の3社による連合体が選ばれた。

 発電事業の主体は、「SGET富山メガソーラー」。総事業費は約28億円で、そのうち約9億円を東京都の立ち上げた「官民連携インフラファンド」が出資している。残りは、あおぞら銀行と富山第一銀行によるプロジェクトファイナンスを組成し、融資を受けた。

東京都が北陸のメガソーラーに出資

 官民連携インフラファンドは、社会資本投資における長期的かつ安定的な資金循環システムの構築に、都が先導的な役割を果たすことを目指して始まった(図3)。電力の安定供給と再生可能エネルギー促進に寄与する事業に都が出資し、それを呼び水に民間資金を促す。ファンドは2つからなり、そのうちの1つが「スパークス・グリーンインフラファンド」(スパークス・官民連携グリーンエナジー投資事業有限責任組合)で、東京都が15億円、その他の投資家が73億円を出資し、総額88億円の規模を持つ。スパークス・グループ子会社のスパークス・アセット・マネジメントが、都から運用委託を受けている。

図3●官民連携インフラファンドの投融資案件。赤字は2014年6月公表分を示す(出所:2014年6月東京都発表資料)
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 北陸地域は、日照条件で見れば、相対的に太陽光発電の適地とは言えない。九州のように大手のメガソーラー開発企業が殺到するという状況ではない。実際、今回の公募に企画提案を出したのは2件だけだった。スパークス・グループの連合体が選ばれたのは、発電量の多い事業計画に裏打ちされた、相対的に高い土地貸付希望額(年額50円/m2)が評価されたからだ。もう1件の提案内容は、同15円/m2だった。提案力と資金力のある官民連携インフラファンドの果たす役割は大きい。

「雪を知らない東京の会社で大丈夫か?」

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、東芝と熊谷組が担当した。太陽光パネルは東芝製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。パネルの最大出力は7.7MW、PCSの定格出力は6MWとなっている。稼働済みのメガソーラーとしては北陸地方で最大規模という。稼働後の運営管理は、北電テクノサービス、メンテナンスは東芝が担当する。

 富山県は全国有数の豪雪地帯(図4)。「雪を知らない東京の会社に建設を任せて大丈夫なのか」。2012年11月に公募によって、発電事業者と建設会社が決まった後、富山県議会の議員の中には、こうした懸念の声もあった。実は、スパークス・グループは「東京の会社」ではあったが、すでに秋田県北秋田市に2.6MWのメガソーラーを運転しており、雪の影響を経験していた。富山市でのメガソーラー設計では、そこでの教訓を生かし、雪対策を大きな課題として取り組んだ。

図4●建設中の「SGET富山メガソーラー発電所」(出所:スパークス・グループ)
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 北秋田市のメガソーラーでは、パネルの設置角を30度、地面からパネル下側までの設置高を1mにした。その結果、パネルを滑り落ちた雪が、山になってパネルとつながり、それ以上、落ちなくなってしまった。「除雪作業が必要になるなど、たいへん苦労している反省から、富山市のメガソーラーの設計では設置高を2mに伸ばした」。スパークス・アセット・マネジメントの出路貴規クリーンエネルギー投資室長は、こう打ち明ける。

「設置高2m」で除雪作業を回避

図5●最も高い位置は4mにもなる(出所:日経BP)
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図6●スクリュー型杭基礎を地中に2.5mまでねじ込んだ(出所:日経BP)
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図7●自営線を2kmにわたって敷設した(出所:日経BP)
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 富山市では、過去20年で約130cmの最深積雪を記録したことがある。「設置高を2m確保すれば、除雪しなくても、パネルまで雪が届かない」との読みだ。ただ、設置高を2mも取ると、鋼材コストが膨らむことに加え、施工時の作業負荷が増す。パネルの長辺側を横向きにして縦3段に設置したため、最も高い位置は約4mにもなる(図5)。「施工会社には大きな負担だったが、運用面の必要性を理解してもらい、頑張ってもらった」と、出路投資室長は感謝する。加えて、設置高2m、設置角30度にすると、積雪荷重に加え、風圧荷重も大きくなる。架台には長尺のスクリュー杭を使い、地中2.5mの深さまでねじ込んで、十分な強度を確保した(図6)。

 設置角30度の太陽光パネルに雪が積もると、パネル上部の雪が徐々に滑って、アレイ(パネルを固定した際の1つの単位)の下側に細長く残ることが多い。そこで、下の列を1つのストリング(直列に接続したパネルの単位)とし、雪の影響を受けるストリングス数を最小限に抑えるように配慮した。

 太陽光パネルの出力7.7MWで約28億円という総事業費は、1MW当たり3億円とされるメガソーラー建設費用の相場に比べ、高めになっている。その背景にはこうした架台の設置コストに加え、特別高圧の送電線に連系するため、約2kmもの自営線を敷設したことも要因となった。市道に沿って、64本のコンクリート柱を立てた(図7)。

「こどもエネルギーサミット」を開催

 スパークス・グループでは、運営を担っているメガソーラーを活用し、「こどもエネルギーサミット」と名付けた地域貢献イベントを開催している。同社社員が企画し、実際に先生役や司会・進行役を務める。「SGET富山メガソーラー発電所」では、建設中の2014年11月7日に開催した。富山市立船峅小学校の全校児童77人が参加した。子供たちは、メガソーラーを見学した後、小学校の体育館でエネルギーについて学んだ。

図8●「こどもエネルギーサミット」でのメガソーラー見学の様子(出所:スパークス・グループ)
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図9●クイズ大会を通じて再生可能エネルギーについて学んだ(出所:スパークス・グループ)
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 1時間目は、小学校からバスに乗ってメガソーラーを訪れ、展望所からの見学のほか、サイト内に入って間近に見たり、サンプルの太陽光パネルに触ったりしながら、太陽光発電の仕組みを勉強した(図8)。

 2時間目は「クイズの時間」。体育館に戻って、未来のエネルギーに関するクイズに答えながら、絵本や映像を通じて楽しく学べるクイズ大会を行った(図9)。次の3時間目は「体育の時間」。太陽電池にライトを当てたり、発電する風車を団扇であおいだりするなど、5つの小型発電機を使った「発電体験」を通じ、電気を作ることの大変さと楽しさを体験した。

 最後の4時間目は「発想の時間」。それまでに学び、体験したことを元に、「夢の未来エネルギー」を発想した。班ごとに分かれて、復習したり、考えを出し合ったりして、最後に各自でアイデアシートにまとめた。

 「雷発電」「降雨発電」「馬の走る力で電気をつくる」「腕相撲をして発電」――など、アイデアシートには子供ならではのユニークな発想がたくさん描かれていた。こうした子供たちが成長し、やがて地域社会を担っていく。全国各地に再生可能エネルギーが身近に普及することで、地域に合った新しい発想のエネルギー社会が生まれてくるかもしれない。

設備の概要
発電所名SGET富山メガソーラー発電所
住所富山市舟倉向山割36番地ほか
発電事業者SGET富山メガソーラー
総事業費約28億円
出資者スパークス・官民連携グリーンエナジー投資事業有限責任組合、運用受託者:スパークス・アセット・マネジメント、約9億円出資
融資あおぞら銀行と富山第一銀行によるプロジェクトファイナンス
土地所有者富山県(賃借料:年額50円/m2
設置面積20.4ha
出力7.7MW(太陽光パネル設置容量)、6MW(連系出力)
年間予想発電量697.4万kWh(約1900軒分)
EPC(設計・調達・施工)サービス東芝、熊谷組
運用北電テクノサービス
保守東芝
太陽光パネル東芝製
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
架台スクリュー式の杭基礎
着工日2014年8月
売電開始日2015年2月