水の噴射で、メガソーラーの雪を溶かし、夏は冷却

富山県企業局が太陽光発電に散水システム導入

2015/05/26 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所

 富山県は豊富な水力に恵まれ、その発電量は、県内の電力需要の7割を超える。富山県企業局も公営企業として、水道事業のほか、電気事業も営んでおり、19の水力発電所で年間約518万kWhを発電している。これは約14万世帯の電力消費に当たる。

 2014年3月、富山県企業局は、水力発電に加え、初めて太陽光発電所を稼働させた。出力1.75MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「神通川浄水場太陽光発電所」だ(図1)。休止中の神通川浄水場(富山市松木)の敷地内に7248枚の太陽光パネルを敷き詰めた。年間発電量は580世帯分に相当する208万9000kWhを想定する。建設費は7億2200万円。固定価格買取制度(FIT)を利用して全量を売電し、20年間の累計で約16億円の売電収入を見込む。

図1●「神通川浄水場太陽光発電所」の完成図(出所:富山県企業局)
[画像のクリックで拡大表示]

 太陽光パネルは、施設内の空き地のほか、河川水中の不純物を沈殿させて除去する「沈殿池」の上にも設置した。沈殿池上のパネルは、設置角5度とほぼ水平に並べ、散水装置を取り付けることで、冬には雪を解かし、夏には冷却効果で発電量を増やすという特徴的な仕組みを導入した(図2)。

図2●沈殿池とその上に設置した太陽光パネル、融雪装置(散水システム)の断面図(出所:富山県企業局)
[画像のクリックで拡大表示]

冬は融雪、夏は冷却して、発電量を増やす

 敷地内に取り付けた降雪センサーによって、雪が降り出したことを検知すると、自動的に噴射ノズルから勢いよく水を吹き付ける(図3)。パネルに降った雪は、水に吹き飛ばされながら解け、水とともに下の池に流れ落ちるという(図4)。稼働してすでにひと冬を超したが、「パネルの上に雪に雪が積もることはなく、除雪作業は全く必要なかった」と、富山県企業局水道課の山本誠二主幹は、この冬を振り返る。

図3●5度に設置したアレイの上から散水する(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図4●噴射した水はパネルの下の沈殿池に流れ落ちる(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 また、夏には、太陽光パネルの裏に取り付けた温度センサーが50℃を検知すると、1分間散水し3分間停止し、また1分間散水して3分間停止…という動作を、温度が50℃以下に下がるまで自動的に繰り返す。導入した結晶シリコン型太陽光パネルは、温度が上昇すると発電損失が増して、変換効率が下がるという特性を持っている。山本主幹は、「散水して温度を下げることで、変換効率が10%程度、上がる」と見ている。

休止した浄水場からお金を生み出す

 ここまでして売電量を最大化した背景には、神通川浄水場の休止に至る経緯がある。同浄水場は、1979年に開設したが、周辺地域に当初想定したほど工場が立地せず、設備能力の10分の1も稼働しないまま赤字が続いた。黒字化のめどが立たないことから、他の工業用水事業に統合し、神通川浄水場は2000年に休止し、負債だけが残った。企業局では、隣接する空き地でゴルフ練習場を経営するなど、遊休施設の収益化に躍起となっていた。

 FITの開始を機に、浄水場の敷地をメガソーラーに活用した場合の事業性を検討した結果、収益性は高いと判断、建設に踏み切った。建設費用は地方債を発行して調達した。その売電による収益は、浄水場建設時から残る負債の返済に充てるため、売電量の最大化が至上命題となった。そこで、沈殿池の上も含め、敷地内に最大限にパネルを敷き詰めるという設計に取り組んだ。

 とはいえ、雪国の限界もある。最近では、設置角を10度程度にして影の長さを短くし、パネルの間隔を詰めてより多くの枚数を設置する設計が一般的だ。しかし、富山市にメガソーラーを建設する場合、積雪対策が大きな課題になる。一度に50~60cmの雪が降ることも珍しくない。設置角を大きめにして、パネルに積もった雪を滑り落とすことが必須になる。そこで、パネルの設置角を20度、パネル下部と地面との設置高を1m空けることにした(図5)。

図5●沈殿池以外のパネルは、設置角20度、設置高1mで設置した(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

20年間で8000万円も売電収入が増加

 ただし、沈殿池の上にパネルを設置する場合、大きな設置角を確保することは構造上、得策ではない。また、沈殿池の上に設置角20度でパネルを設置した場合300枚しか設置できないが、5度に寝かせれば768枚と4割も多く敷ける。一方で、5度にした場合、積雪の重みでパネルが損傷してしまっては、元も子もない。そこで、5度で設置して、敷地内に豊富にある水をまいて雪を解かすというアイデアが出てきた。沈殿池の上であれば、散水しても池に流れ落ちるので、新たな排水設備が必要ないという利点もある。

 道路などの融雪に使われている噴射ノズルなどを転用し、5度に傾斜したパネルの上側から、水を噴射して雪を解かす仕組みを考案し、設置費用を試算したところ、配水管の設置に約1100万円、散水システムの設置に約2300万円など、合計で3500万円程度の費用と分かった。これに対して、沈殿池に5度で設置した場合のパネル枚数の増加分によって、20年間で約8000万円の売電収入の増加が見込まれた。十分に投資対効果があることから、散水設備の設置を決めた。

 浄水場に設置したパネルを想定した散水システムは、前例がない。富山県企業局は、地元企業の協力を得ながら独自に設計した。池の上にも、他のエリアと同様、南北に横向きに4枚を配置する大面積のアレイ(パネルの設置単位)を設置した。このアレイ全体に噴水が届くように、タイプの違う2つのノズルを交互に配置した。1つはスプレー角度の狭いタイプで、幅は狭いが長い距離に水を噴射できる(図6)、もう1つはスプレー角度の広いタイプで、距離は短いが幅広く噴射できる(図7)。富山県企業局は、こうした散水システムを含めたメガソーラー設備を独自に設計し、施工事業者に仕様発注した。

図6●スプレー角度の狭いノズルは、長い距離を散水できる(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図7●スプレー角度が広いノズルは、幅広く散水できる(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

パネルの隙間をポリウレタン樹脂で埋める

図8●パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図9●ポリウレタン樹脂材を挟んで隙間をなくした(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 太陽光パネルはシャープ製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用し、電気設備の施工は、北陸電気工事が担当した(図8)。

 課題となったのが、パネルとパネルとの隙間だ。噴射した水が、隙間から池に流れ落ちてしまうと、融雪効果が落ちてしまう。まず、テープを貼る方法を検討したが、劣化が早いことから、断念した。最終的には、耐久性と耐熱性を考慮し、ポリウレタン樹脂材をフレームの間に挟み込むようにして固定し、隙間を埋めた(図9)。

 稼働1年目の発電量は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の日射量データベースを使った予想発電量に比べ、約20%も上振れする好スタートとなった。水の噴射は自動的に作動停止して記録が残らないため、冬場の融雪と夏場の冷却に、何回作動したかは把握できないが、1年間で約3万tの水を消費したという。散水システムの作動パターンについては、やや過剰な可能性があるため、今後、条件設定などを見直す方針で、そうなれば水の消費量はもっと減らせる見込みという。

 山本主幹は、「排水をパネル下の池に流せるという利点を生かすことで、費用対効果の高い散水システムを構築できた。こうした周辺設備のない施設に散水装置を導入する場合、排水設備をいかに低コストで設置するかが大きな問題になる」とみている。

●設備の概要
発電所名神通川浄水場太陽光発電所
住所富山市松木 神通川浄水場敷地内
発電事業者富山県
総事業費7億2200万円
資金調達地方債を発行
土地所有者富山県
設置面積約2.9ha
出力2.101MW(太陽光パネル設置容量)、1.750MW(連系出力)
年間予想発電量2089MWh(約580軒分)
発電売上約16億円(固定価格買取期間20年の累計)
設計富山県企業局
施工北陸電気工事など(仕様発注)
O&M(運用&保守)富山県企業局
太陽光パネルシャープ製多結晶シリコン型(290W品)7248枚
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
売電開始日2014年3月