北陸特有の強烈な「冬季雷」が直撃!? 富山市八尾のメガソーラー

積雪が年間売電量を左右、ツル性植物やイノシシと苦闘

2019/06/25 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 富山県富山市八尾町の山あいに、太陽光パネルの出力が1.416MW、連系出力が1.260MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「NiX 八尾ソーラーパワー」が立地している。2014年10月1日に売電を開始してから、約4年半が経つ(図12015年1月のメガソーラー探訪の掲載コラム)。

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図1●太陽光パネル出力は約1.4MW
(出所:日経BP)

 このメガソーラーの立地している土地は、かつてカドミウム汚染田を復元するための土を採取していた。この跡地である市有地を活用して、建設コンサルタントの新日本コンサルタント(富山市)が開発した。発電事業者は、同社の再生可能エネルギー発電子会社である、ニックスニューエネルギーとなっている。

 新日本コンサルタントは、建設コンサルタントの傍ら、再エネ発電を軸とするエネルギーマネジメント事業を展開している。国内の発電事業では、小水力を2カ所開発・運営している。2015年5月に稼働した、出力198kWの平沢川小水力発電所と、2019年1月に稼働した出力804kWの湯谷川小水力発電所である(図2)。

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図2●湯谷川小水力発電所の建屋と発電機
(出所:新日本コンサルタント)
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 海外でも、インドネシアのスマトラ島において出力約13MW、年間発電量約8万3100MWhの水力発電所の開発につなげている(関連ニュース)。

 発電による収益は、アジアにおけるインフラ関連や再エネ発電など、次の事業の柱の確立に回す原資となっている。

北陸の気象など「三重苦」の克服

 八尾町でのメガソーラー開発では、収益性を低下させる、3つの負の要因を克服する必要があったという。このうち2つは、北陸の太陽光発電所に特有の条件だった。

 1つ目は、北陸という立地上、国内の他の地域に比べて日射量が少ないこと。2つ目は、積雪地域にあることだった。

 3つ目は、南北に細かく分散した土地で構成されていることだった(図3)。北側、南側の区画に分かれている上、道路を挟んだ飛び地となり、かつ、敷地形状の多くは、きれいな長方形ではなかった。太陽光パネルを効率的に並べにくいだけでなく、電線の総延長や、外周に設置するフェンスの総延長が長くなる。相対的に設備投資額が増すことになる。

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図3●細長い土地が分散している
(出所:新日本コンサルタント)
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 こうした「三重苦」を克服できたのは、パネルの配置を工夫して発電量を最大化するとともに、太陽光発電システム全体の効率を高めることで、設備コストの低下にもつなげたことなどによる。

 借地料は25円/m2、総投資額は約3.9億円、売電額は36円/kWhで、年間予想売電額は約4400万円となっている。設備容量当たりの建設費は27.5万円/kWと、当時の相場で太平洋側のメガソーラーと同等まで抑え、約14年間で投資を回収する計画を立案した。

 定格出力630kW、1000V対応という、当時としては大容量のパワーコンディショナー(PCS)を採用した。その結果、北側(749.3kW)と南側(666.7kW)を、それぞれ1台で賄えた。ストリング(太陽光パネルを接続した単位)あたりのパネルの枚数を増やし、パネルからPCSまでの直流回路を1000V対応で構成することで、接続箱の台数を減らし、電線の総延長を短くできた。送電中の電力損失も少なくなる。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、ゼネコン(総合建設会社)の佐藤工業が担当した。富山で創業した佐藤工業は、富山市に拠点がある。新日本コンサルタントにとっては、本業の建設コンサルタント事業で連携することが多い上、富山市の公募の条件に、地域に根差した企業に施工を委託するという条件があった。

 太陽光パネルは、ネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ヶ根市)製を採用した。多結晶シリコン型(295W/枚)を4800枚並べた。PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用し、出力630kW・直流入力1000V対応機は、北陸地方で初めての導入だったとしている。

北陸の雪を知っているか否か

 稼働後、これまでの発電量は、年間で見るとどの年も事前の予想を上回り、堅調に推移しているという。ただし、年間を通じて見ると、年によって発電量が10%程度の幅で増減している。この幅で上下している理由は、積雪の状況にある(図4)。

図4●除雪の様子
(出所:新日本コンサルタント)
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 大まかに、例年の1~2月は、積雪により発電量が低しやすいことから、事業計画において、元々、発電量を低めに見積もっている。そのため、この両月に積雪が少ないと、上振れしやすくなる。

 一方で、初年度の2014~15年にかけての12月~1月は、予想以上に積雪が多く、1月は事業計画を38%も下回った。一晩で30cmくらい積もるような積雪が、10日間で3~4日間も続いた。アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)に山のように積み上がり、太陽光パネルの上まで繋がりそうな状況だった。

 太陽光パネルの最低部は1.5mに上げている。それでも滑り落ちた雪が山になってパネルにつながる恐れがあったため、社員約20人を動員し、アレイの前に山のように積み上がった雪を、突いて崩し、別の場所に移す作業を実施した。

 富山の雪は、北海道などとは異なり、水分を多く含むために、パネルに積もったままにしておくと、凍りついて落ちにくくなってしまう。これを防ぐための措置だった。

 3月は、雪が残る季節ではあるものの、年間を通じて最も発電量が多い月の一つとなっている。気温が低く、パネルの変換効率が高い時期であることも影響しているとみている。

 例えば、2017~18年の冬は、日本海側の各地で大雪が続いた。1月の発電量は予想に対して25%減、2月は42%減など、雪の影響を大きく受けた。それでも、3月に予想を28%も上回ったことで、大雪による落ち込みを打ち消すような状況となった。

 この大雪では、周辺地域の太陽光発電所では、架台がつぶれるなどの被害も生じた。その中で、新日本コンサルタントの発電所は、損壊などを免れた。積雪による荷重への対応を基準値以上に重視した設計が奏功したとみている。

北陸特有の「冬季雷」が直撃か

 大雪に見舞われる前年の2016年12月~2017年1月には、太陽光パネルに、あまりみられない損傷が生じた。カバーガラスが割れているだけでなく、大きくたわんでいた(図5)。

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図5●たわんでいた太陽光パネル
(出所:新日本コンサルタント)
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 この時期には、遠隔監視システムを通じて、直流回路に地絡が生じているという内容の警報が届くことが頻発していた。2016年12月6日に1回、2017年1月5日~6日に3回、そして、同年1月12日には12回も警報が発された。

 こうした警報が届くと、電気主任技術者が現地に向かい、状況を確かめる。この巡回時に、太陽光パネルが大きくたわんでいることを発見した。

 その後、起きた現象や当時の気象状況などを照らし合わせることで、2016年12月5日~6日に「冬季雷」がメガソーラー内を直撃したのではないかと推測している。この両日は、周辺地域で「冬季雷」が多く発生していた。

 冬季雷は、日本海側に特有の雷である。冬の間、寒冷前線に沿って発生し、夏の雷に比べて、100倍以上の電気エネルギーに達することがある(関連コラム:夏の雷の100倍のエネルギーで直撃する「冬季雷」)。

 経済産業省は、該当する地域の風力発電所に関しては、冬季雷に対する特別な対策を求めている。

 新日本コンサルタントのメガソーラー内で起きた現象は、おもに2つのシナリオが推測されている。

 1つは、冬季雷の落雷によって、たわんだ太陽光パネルの周辺の温度が上昇し、水蒸気爆発によって、このパネルのカバーガラスが破損したのではないか。もう一つは、冬季雷が生じた電磁力によって、太陽光パネルのアルミフレームの外側方向に過剰な応力がかかって、カバーガラスが破損したのではないか、というものである。

 いずれの現象の場合も、この破損の影響で絶縁破壊が生じ、その後、雪の重みによる応力によって、パネルが湾曲した。

経年劣化に関心、北電グループに依頼しドローン点検

 冬季雷による損傷も含み、これまでにカバーガラスが割れ、交換した太陽光パネルは3枚にとどまっている。割れを発見すると、すぐに交換する。費用は保険で賄っている。

 同社の方針として、発電設備の損傷は、発電事業の収益から見ても対応に要する費用はわずかで、交換しないことによる売電損失の方が多いことから、迅速に対応している。

 本業が建設コンサルタントであることからも、事業計画は堅く、修繕費などは保守的に見積もっている。万が一、事業計画を下回る収益が続いたり、計画以上の修繕の必要が出てきた場合、その評判が知れ渡り、本業に影響を及ぼすようなことを避けたいという理由からでもある。実際には、想定したほど修繕費を支出していない状況という。

 太陽光パネルの経年劣化にも、大きな関心を持っている。この一環として、2017年8月には、ドローン(無人小型飛行体)を使って、現状の太陽光パネルの異常を調べた(図6)。

図6●ドローンによる点検
(出所:新日本コンサルタント)
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 同社では、パネルに関連する点検として、目視による外観の点検のほか、接続箱の入力端子を介したストリング単位の絶縁抵抗と、I-V特性を測定している。

 しかし、これらの点検では、ホットスポットなどの過熱や、変換効率が劣化しているパネルを特定できないといった問題意識を抱えていた。そこで、ドローンによる点検を委託した。

 ドローンによるパネル点検は、小水力で取引が深い北電テクノサービス(富山市)に委託した。同社は社名の通り、北陸電力グループの技術系子会社である。現場作業は、ジャパンビジュアルサポート(富山県中新川郡上市町)が担当した。

 この点検によって、約4800枚の太陽光パネルのうち、52枚に温度分布の異常がみつかった。

 温度分布の異常を把握した52枚のパネルは、その後、手持ち型の赤外線カメラを使い、地上からも改めて熱分布の画像を取得した(図7)。

図7●地上でも裏面から熱分布画像を取得して確認
(出所:新日本コンサルタント)
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 ここでは、裏面から撮影した。積雪対応型のメガソーラーでは、パネルの設置高が高く、設置角も大きいため、表面側から撮影したのでは、適切なデータを取得しにくいためである。このメガソーラーでは、低部の設置高さは1.5m、設置角は30度である。

 この結果、52枚のうち21枚に、ホットスポットによる大きな温度差を確認した。ただし、I-V特性の測定結果では、パネルメーカーが示している基準を下回っていないために、メーカー負担による交換対象にはならなかった。

頭を悩ますツタとイノシシ

 事業計画時の想定よりも、手間や費用がかさんでいることもある。例えば、雑草対策である。当初の事業計画では年2回の草刈りが、それでは足りず、年3回に増えている(図8)。

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図8●取材時にも除草していた
(出所:日経BP)
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 最大の問題は、敷地外から伸びてきて、外周フェンスに絡みつくツル性植物である。これを放置していると、フェンスの空隙を埋めて壁のようになってしまい、強風が吹き付けた際に倒れてしまうといった損壊を招く。また、敷地内まで伸びてきて、アレイに絡みつくと、発電量の低下にもつながる。

 敷地内のアレイ下なども除草しているが、これはパネルの設置高が1.5mと高いこともあり、必要性はそれほど高くない。

 もう1つは、イノシシの出没である。これも、敷地内ではなく、今のところ、敷地外での行動が問題となっている。

 敷地外の法面の一部を、大きく掘り込んでいる(図9)。このまま放置していると、法面の大きな損壊などにつながる可能性もあると懸念している。

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図9●土が見える部分が掘られた跡
(出所:日経BP)
●発電所の概要
発電所名NiX 八尾ソーラーパワー
所在地 富山県富山市八尾町上笹原地内
土地所有者   富山市(カドミ汚染田客土母材採土跡地)
発電事業者ニックスニューエネルギー(富山県富山市)
(新日本コンサルタントの100%子会社)
設置面積約3.0ヘクタール
太陽光パネル出力  1416kW
連系出力1260kW
投資額約3.9億円
kWあたりの建設単価27.5万円
年間予想発電量約1233MWh(一般家庭約300世帯分の消費電力に相当)
固定価格買取制度(FIT)上の売電単価36円/kWh(税抜き)
年間予想売電額4400万円
投資回収期間約14年間
EPC(設計・調達・建設)サービス佐藤工業
太陽光パネルネクストエナジー・アンド・リソース製
(多結晶シリコン型、295W品、4800枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力630kW機、直流入力電圧1000V対応、2台)
太陽光パネル低部の設置高さ  約1.5m
太陽光パネルの設置角     30度
売電開始日2014年10月1日
売電先  北陸電力