「浮島」と「扇島」、東電の2メガソーラーで発電量に明暗、パネルの現地点検も実施

羽田空港が目前、浄化中の廃棄物処理地を活用

2019/07/09 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 京浜工業地帯の一角にある浮島と扇島は、海に面した埋立地で、神奈川県川崎市に属する。この両島に、東京電力ホールディングス(以下、東電HD)が開発・運営している合計出力20.0MWの2つのメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある。出力7.0MWの「浮島太陽光発電所」と、同13.0MWの「扇島太陽光発電所」である(図1)。それぞれ2011年8月、同年12月に稼働し、7年間以上が経過している。

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図1●浮島(上)と扇島(下)のメガソーラー
(出所:川崎市、左下は東京電力HD)

 旧一般電気事業者各社は、固定価格買取制度(FIT)の始まる直前、経済産業省からの全額補助金によって、自社管内にメガソーラーを建設した。「浮島太陽光発電所」と「扇島太陽光発電所」もこうしたメガソーラーで、両発電所は、それらのなかでも最大規模で、特高クラスの太陽光発電所としては国内で最も早く稼働したものだ。

 浮島、扇島ともに、日本の経済成長を長く支えてきた工場の集積地の一角にあり、現在でも多くの産業の主力工場が操業している。重厚な鉄の塊、密集するパイプや煙突といった、いかにも工場らしい風景が続く地域として、最近では、工場の景観を愛好する、いわゆる「工場萌え」たちの撮影スポットとしても知られるようになった。屋形船による工場夜景クルーズでも必須の場所となっている。

 2つのメガソーラーは、川崎市と東電HDによる共同事業として開発・運営されている。川崎市が、浮島のメガソーラーの土地の提供と、広報・教育用施設である「かわさきエコ暮らし未来館」の管理・運営による啓発活動を担う一方、東電HDは、2つのメガソーラーの建設・管理・運営を担っている。扇島のメガソーラーが建つ土地は、東電HDが所有している。

 浮島のメガソーラーは、地球温暖化、再生可能エネルギー、資源循環の3つのテーマを中心とする広報・教育用施設と隣接している。電力消費やCO2排出の多い工業都市ならではの共同事業で、こうした視点から見ると、絶好の立地ともいえる。首都圏からの交通アクセスが良い上、羽田空港と海を挟んで向かい合う位置にある。離陸後や着陸間近の飛行機から、メガソーラーが見える(図2)。

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図2●離着陸する航空機が見える
(出所:上は日経BP、下は川崎市)
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 浮島のメガソーラーが建つのは、ごみの焼却灰を埋め立てた土地である。埋め立てが終わった後の20年間の浄化期間中の土地の有効活用として、川崎市が東京電力(現・東京電力HD)に提案し、メガソーラーの用地となった。

 川崎市によると、この土地は、廃棄物処理法(廃掃法)によって、土地が浄化されるまでは建物の建築などが制限されており、「建築物」に該当しない太陽光発電所は、理想的な活用法だった(関連コラム:川崎・浮島、臨海工業地帯で飛行機が飛び交う発電所)。

 東電HDとっては、電力供給設備としては、初のメガソーラーとなった。また、FITの開始後に、さまざまな地域の地方自治体が、廃棄物の最終処分場跡地に開発し始めた、いわゆる「処分場太陽光」の先駆けとも言える。

 浮島のメガソーラーの発電設備の設置では、浄化中の土地であることに配慮している。土地の浄化は、廃棄物の上に盛り土を築き、そこに雨を浸み込ませ、浸み込んだ水をポンプで吸い上げて浄化後、東京湾に流すサイクルを20年間続けることで完了する。

 このため、太陽光パネルの設置では、地盤が不均質に沈下する不等沈下への対策が重要になった。その対策として、1つの架台に設置する太陽光パネルを6枚と少なくした。これによって、不等沈下が起きた場合でも、その影響を受けるパネルの数が限定的になるようにした(図3)。

図3●基礎の形状にも工夫
(出所:川崎市)
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 基礎や太陽光パネルの設置では、土地の浄化を促すため、雨水の浸透に配慮した。基礎は、平面状に固めたコンクリートの中央部を空洞にし、パネルに降った雨を、できるだけ多く地面に浸み込むようにした。パネルについても、雨が地面に到達しやすいように、水平方向の隙間を確保して設置した。

 浮島のメガソーラーは、単結晶シリコン型の太陽光パネルを18枚、直列で接続し、直流600V対応の回路としている。このストリング(太陽光パネルを接続した単位)を7~8回路分を1個の接続箱に送電する。接続箱は280個を設置している(図4)。

図4●浮島のメガソーラーの概要
(出所:東京電力HD)
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 280個の接続箱から、56個の集電箱に送電されている。集電箱1個あたり、5個の接続箱から送電されている。集電箱からパワーコンディショナー(PCS)に送電されて交流に変換し、210Vで出力される。PCSの隣にある中間的な昇圧変圧器で、210Vから6600Vに昇圧し、さらに連系用の昇圧変圧器で6万6000Vに昇圧して、系統に送電されている。

 浮島のメガソーラーのEPC(設計・調達・施工)サービスは、東芝が担当した。太陽光パネルはシャープ製を採用し、単結晶シリコン型(出力198W/枚)を3万7926枚並べた。

 PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用し、定格出力250kW機を28台導入した。

 扇島のメガソーラーは、EPCサービスは日立製作所が担当した。太陽光パネルは京セラ製を採用し、多結晶シリコン型(出力220W/枚)を6万3792枚並べた。PCSは日立製作所製の定格出力500kW機を26台導入した。

好調続く「浮島」、予想値からの下振れの激しい「扇島」

 稼働して8年間の発電量の推移は、浮島と扇島のメガソーラーで大きく異なる。年間発電量は、太陽光発電電力から制御装置、PCSの空調設備などの消費電力、および敷地内での送電ロスなどを差し引いた値を公開している。

 浮島のメガソーラーは稼働後、一貫して事業計画時の予想値を大きく上回っている(図5)。

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図5●浮島のメガソーラーの発電量の傾向
(出所:東京電力HD)
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 年間予想発電量の約7400MWhに対して、実績値は、稼働期間4カ月の初年度(約5340MWh)以降、2012年度・約9690MWh、2013年度・約9510MWh、2014年度・約9300MWh、2015年度・約8920MWh、2016年度・約8910MWh、2017年度・約9360MWh、2018年度・約9210MWhとなり、すべて大幅に上振れしている。

 一方、扇島のメガソーラーは、6年目以降、事業計画の予想を大きく下回っている。その下げ幅も、年々広がってきている。

 年間予想発電量の約1万3700MWhに対して、実績値は、稼働期間1カ月間の初年度(約3760MWh)以降、2012年度・1万5330MWh、2013年度・約1万5350MWhと3年目までは上振れしたものの、4年目の2014年度は約1万3900MWhと事業計画の予想値と同水準に留まり、5年目以降は、2015年度・約1万2530MWh、2016年度・約1万1930MWh、2017年度・約1万1630MWhと、予想値に対して10〜15%下回り、8年目の2018年度は約1万420MWhと同24%の下振れまで落ち続けている。

 2つのメガソーラーは隣接しているため、周辺環境や気象条件は、ほとんど同じだと考えられる。にもかかわらず、経年による発電量の推移で、ここまで明確な開きが出てくるというのはたいへん興味深い。東電HDは、発電実績の公開以上の情報に関して、取材に応じていないため、「扇島太陽光発電所」の発電量が4年目以降、急低下している理由については不明だが、現在、要因分析に取り組んでいるようだ。

破損パネルを「PVテストカー」で検査

 浮島と扇島のメガソーラーでは最近、太陽光パネルの状態を現地で調査した。目視点検で見つかった、破損している太陽光パネルを対象に、I-V(電流-電圧)特性の測定と、EL(エレクトロルミネセンス)検査を実施した(図6)。

図6●扇島のメガソーラーにおける点検時の様子
(出所:アドラーソーラーワークス)
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 この2つの検査は、横浜環境デザイン(横浜市)グループのアドラーソーラーワークス(横浜市)が受託した。同社は、O&M(運営・保守)サービスや太陽光発電所の技術的なデューデリジェンスを手がけている。

 現地でのI-V特性の測定やEL検査は、ドイツ製の「PVテストカー」を使って実施した。I-V特性の測定では、ストリングごとの出力特性を評価する。EL検査では、太陽光パネルのセル(発電素子)に生じているマイクロクラック(微小な割れ)の有無や状態を評価する(関連コラム:「PVテストカー」がサイト現場でパネルを診断)。

 今回の浮島と扇島のメガソーラーでは、セルに生じているマイクロクラックが、出力にどのように影響しているかを確認することが主な目的だった。

 扇島のメガソーラーではさらに、太陽光パネルのカバーガラスの汚れが、出力にどの程度、影響しているのか、についても確認した。パネルの洗浄前後の出力を測定した。

 東電HDは、今回の検査結果を、今後のメガソーラーの適切な運用のためのデータとして活用する。

 アドラーソーラーワークスのサービスでは、I-V特性の測定やEL検査の結果から、セルごとに生じているマイクロクラックの影響の深刻度を「A」から「D」の4段階に分けて評価し、顧客に提示している(図7)。

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図7●色の違いで評価も示す
浮島と扇島のメガソーラーとは異なる発電所における例(出所:アドラーソーラーワークス)
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 「A」はほぼ良好なレベル、「B」はクラックの数とI-V特性でAに劣るレベル、「C」や「D」は不良に該当するレベルという。この評価を、緑や黄色、赤といった色分けで示している。

 同社によると、「PVテストカー」を使った現地での太陽光パネル点検の依頼は、徐々に増えてきている。とくに2018年夏以降、稼働が高まっている。

 例えば、北陸の2カ所のメガソーラーからの依頼がある。前年の2017~18年の冬、日本海側では記録的な積雪となった地域が多く、架台の倒壊や太陽光パネルの損壊などの被害が相次いだ。この2カ所も、積雪でパネルが割れるといった被害が生じていた。2カ所で合計約6000枚のパネルを現地で点検した。

 東北地方では、斜面崩壊で発電設備が損壊したサイトに出向き、約3000枚の太陽光パネルを点検した。また、パネルの上に乗るなど、施工方法に不信感を持った発電事業者に納得してもらうため、EPCサービス事業者から、引き渡し前に全パネルの点検を受託した例もあったという。

●発電所の概要
発電所名浮島太陽光発電所
所在地神奈川県川崎市川崎区浮島町
発電事業者東京電力ホールディングス
土地所有者川崎市
敷地面積約11万m2
太陽光パネル出力約7.509348MW
パワーコンディショナー(PCS)出力7.0MW
年間予想発電量(設計当初の推定値)約7400MWh
(一般家庭約2100世帯の消費電力に相当)
EPC(設計・調達・施工)サービス東芝
O&M(運用・保守)東京電力ホールディングス
太陽光パネルシャープ製
(単結晶シリコン型、出力198W/枚、3万7926枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格出力250kW機、28台)
発電開始2011年8月10日
●発電所の概要
発電所名扇島太陽光発電所
所在地神奈川県川崎市川崎区扇島
発電事業者東京電力ホールディングス
土地所有者東京電力ホールディングス
敷地面積約23万m2
太陽光パネル出力約14.03424MW
PCS出力13.0MW
年間予想発電量(設計当初の推定値)約1万3700MWh
(一般家庭約3800世帯の消費電力に相当)
EPCサービス日立製作所
O&M東京電力ホールディングス
太陽光パネル京セラ製(多結晶シリコン型、出力220W/枚、6万3792枚)
PCS日立製作所製(定格出力500kW機、26台)
発電開始2011年12月19日