「平成30年豪雪」に除雪せずに耐えた富山のメガソーラー

「処分場太陽光」で積雪対策、荷重制限にどう対応? 

2019/07/23 06:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 富山県の臨海部である、射水市有磯に、太陽光パネル出力が約5.251MW、連系出力が4.5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「富山新港太陽光発電所」がある(図1)。

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図1●富山新港太陽光発電所
見学用の施設も備える(出所:上2段は富山県企業局、下段は日経BP)

 発電事業者は富山県企業局で、2016年3月に売電を開始した。

 富山県企業局は、電気、水道、工業用水道、地域開発の4つの事業を開発・運営している。このうち電気事業は、富山ならではの特色が強く出ている事業としている。

 富山県は、日本海に面している北側をのぞく三方を、高い山々に囲まれている。この地形が、電気事業を独特のものにしてきた。とくに、立山連峰は、標高3000m前後の山々が連なり、加えて、富山平野からの距離が比較的近い。連峰からの雪解け水は、急な川を下り、平野に向かって一気に流れ込む。

 狭い平野に、急な河川に多くの水が流れることから、歴史的に水害に苦しんできた。治水を兼ねて、水力発電所が整備され、1920年から、産業向けの電気事業がはじまった。現在でも、電気事業の主軸は水力で、19カ所の水力発電所を運営している。

 小水力発電にも取り組んでいる。再生可能エネルギー発電電力の固定価格買取制度(FIT)がはじまる前から開発を手掛け、4カ所が稼働している。

 このほか、小水力では、農業用水路を活用して、県内各地の土地改良区が取り組む案件について、事業化の可能性調査への補助などを通じて支援している。

 太陽光発電については、住宅向けの補助などのほかに、県有地を民間企業に貸し、メガソーラー(大規模太陽光発電所)を誘致してきた。出力約7.7MWの「SGET富山メガソーラー発電所」(関連コラム:豪雪に備える北陸最大のメガソーラー)など、プロポーザル公募を経て、これまでに3カ所の県有地を貸している。

 ただし、県有地の中で、太陽光発電に向く土地であっても、特殊な立地や環境にある場合など、県が責任を持って直接、管理し続ける必要性が高い場合、民間企業に貸し出さず、県直営で開発・運営することにした。県の企業局による太陽光発電事業となる。

 こうした特殊な土地で最初に稼働したのは、まず、浄水場の敷地内の遊休地を活用した出力1.75MWの「神通川浄水場太陽光発電所」だった(関連コラム)。富山新港のメガソーラーは、神通川浄水場太陽光発電所に続く2カ所目となった。

 富山新港のメガソーラーは、廃棄物処分場の浄化期間中の土地を活用して開発された。富山新港臨海工業用地の一画に位置している(図2)。

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図2●火力発電の石炭灰を埋め立てた
下の画像の中央奥に富山新港火力発電所の煙突がみえる(出所:日経BP)
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 太陽光発電設備を並べた土地の地中には、石炭灰が埋められている。北陸電力が、火力発電所での発電で生じた石炭灰を埋めたてた。現在でも、土地の所有者は富山県だが、埋め立てた石炭灰などの産業廃棄物に該当する部分の地中の管理は、北陸電力が担っている。

 このような廃棄物の埋め立てが終わった後の土地を、浄化期間中に有効に活用する手法として、メガソーラーの用地とする例は多い。

 浄化中の土地は、廃棄物処理法などによって、浄化が終わるまでの期間は、建物の建築や人の立ち入りなどが制限されている。この制約によって、商業施設はもとより工場や倉庫といった建物が必要な事業所を誘致することは難しい。

 これに対して、太陽光発電所は、特別な例を除いて、基本的に「建築物」を建設しない。太陽光発電設備を並べても、「建築物」には該当しないので、理想的な活用法となっている。

 そこで、国内各地の地方自治体は、浄化中の産廃埋立地にこぞってメガソーラーを誘致したり、富山新港のメガソーラーのように、みずからが発電事業者となって太陽光発電所を開発・運営している。

 太陽光発電設備の設置では、浄化中の土地に特有の配慮事項がある。土地の浄化は、廃棄物の上に「覆土」と呼ばれる土を盛り、そこに雨を浸み込ませるプロセスを長期にわたって続けることで完了する。この浄化プロセスを阻害したり、悪影響を及ぼす恐れがあるような設置方法を避ける必要がある。

 例えば、「一定面積当たりの荷重を決められた範囲内に抑える」「コンクリート基礎の高さを一定以内に抑える」「地中を掘らない」「浄化のための設備の周辺に発電設備を設置しない」など、太陽光発電設備を並べる際に守るべきことも多い。

 「地中を掘らない」という条件によって、杭基礎を打ち込む工法は採用できない。面積当たりの荷重制限や構造物の高さ制限によって、コンクリート基礎には、面積当たりの重さを抑えつつ、必要な耐荷重性などの機能を満たすという、二律背反の条件を満たす設計が求められる。

 富山県の場合、太平洋側などの温暖な地域にはない条件が、さらにこれらの制約に加わることになる。積雪への対策である(図3)。

図3●積雪期の富山新港太陽光発電所
(出所:富山県企業局)
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 メガソーラーにおける積雪対策は、おもに2つある。1つは、太陽光パネルの設置高さを上げることで、パネルから地面に滑り落ちた雪が、山のように溜まっても、パネルの最低部には届かないようにすること。もう1つは、パネルの設置角を大きくとることで、パネルに積もった雪がより滑り落ちやすくすることである。

 しかし、2つの方法とも、基礎や架台にかかる荷重を大きくしてしまう。面積当たりの荷重や、基礎の高さに制約がある浄化中の土地では、基礎の設計の難易度をさらに高める要因となる。

 富山新港のメガソーラーでは、これらの条件を満たすコンクリートの置き基礎として、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の下の大部分を覆うような、広い長方形で、かつ、高さを20cmと薄めの面状の形を採用した(図4)。

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図4●長方形で薄い基礎
(出所:上は富山県企業局、下は日経BP)

 この基礎は、福井県と福島県の同じような環境の太陽光発電所で採用された例があり、富山新港のメガソーラーの設計時の参考にしたという。

 太陽光パネルの設置角は20度、太陽光パネル最低部の設置高は約110cmとした。設置角「20度」は、複数の要因を考慮した上でバランスを取った結果という。具体的には、雪の滑り落ちやすさ、パネル1枚当たりの発電量と敷地全体の設置枚数、沿岸部の強い風に十分耐えうる耐風圧性といった要素である。

 施工にあたっては、極力、積雪期は避けたい。そこで、2015年5月に着工し、2016年3月に稼働するという日程を組んだ。

 土地の表面は、2つの方法で改良した。地中を掘れないため、いずれの方法も、地表の改良にとどめた。

 1つは、地表に三つの層を構成することで、雑草の育成を抑える地表をつくる手法である(図5)。周辺から風に乗って種子や土が飛んできて、この地表の上に落ちた場合でも、雑草が成長しにくい。

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図5●外周部の地表の改良
(出所:上は富山県企業局、下は日経BP)
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 雨が降ると透水性を発揮して、地中にすばやく水を染み込ませるような状態にすることで、雑草の根付きを抑え、伸びにくくした。地表に水が溜りにくい利点もある。晴天時には、気化熱で温度上昇を抑え、高温による発電ロスを減らす利点もあるという。

 この手法による地表の改良は、敷地の外周部に適用した。

 もう1つは、太陽光パネルを並べた場所に施した。覆土の上に、砕石を敷き詰めた(図6)。これも、雑草の成長を抑える効果を狙ったものだが、外周部に施した三層構造の地表に比べると、相対的に雑草は根付きやすく、伸びやすい。

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図6●太陽光パネル設置区域には砕石
(出所:日経BP)
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 敷地内の地面は、長年の風雪に曝されていたことで、きれいな平坦ではなくなり、ところどころ凹凸が生じていた。そして、雑草が生い茂っていた。

 そこで、メガソーラーの施工時には、地表を覆っている覆土の深さを、場所ごとに測り、適切な深さを維持しつつ、凹凸の状態を地ならしするように整地した。この際、生い茂っていた雑草を除去する目的で、地表の土を一時的にはぎ、土と雑草に分離して、土は再び戻し、雑草は敷地外に搬出して処分した。

 設計や施工は、県内の関連企業に委託した。整地は分家工業(富山県射水市)、基礎や架台は四方組(同)、竹沢建設(同)、分家工業、牧田組(同)の4社が、工区ごとに分担した。電気関連は新栄電設(富山市)、連系点までの自営線は菅原電気(富山県高岡市)が担当した。

 菅原電気が担当した自営線は、約2.9kmにわたって敷設し、74本の電柱を立てた。

 太陽光パネルは、ネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ヶ根)製を採用した。多結晶シリコン型(出力255W/枚)を、2万592枚並べた。

 パワーコンディショナー(PCS)は、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。定格出力750kW・直流入力1000V対応機を6台、導入した(図7)。

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図7●6台のPCSで構成
(出所:上は富山県企業局、下は日経BP)
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 年間発電量は、一般家庭約1300世帯の消費電力に相当する、約480万kWhを見込んでいる。FITによる売電単価は32円/kWh(税抜き)で、北陸電力に売電している。

 運用をはじめてから、想定外の積雪に見舞われたこともある。2017~18年の冬は、日本海側の各地で「平成30年豪雪」と呼ばれる大雪が続いた。この大雪では、架台がつぶれるなどの被害が生じた太陽光発電所も目立った。

 その中で、富山新港のメガソーラーは、損壊などはなかった。積雪による荷重への対応を重視した設計が奏功したとみている。

 しかし、続けざまに2回ほど、一晩の間に想像以上の量の積雪が続いたことで、地上にたまった雪が、太陽光パネル低部までつながってしまった。この際、富山県企業局では、除雪などをせずに様子を見続けた。というのは、こうした状況を放置した場合、どのような結果になるのか、把握したかったからである。

 この結果、発電量には影響があったものの、アレイや太陽光パネルは損壊しなかった。

 富山県企業局が心配していたのは、下段の太陽光パネルほど、雪が滑り落ちるときに荷重が多くかかるため、下に引っ張られる力が働き、壊れてしまうパネルが出てくるのではないか、という懸念だった。結果的に、無事だった。

 通常の積雪量は、海に近いこともあって、県内のほかの地域に比べると、比較的少ないという。

 北陸に特有の冬季雷の影響とみられる送電線の停電によって、稼働がとまることも経験したが、売電事業に深刻な影響を与える回数ではないとしている。

 冬季雷は、日本海側に特有の雷で、冬の間、寒冷前線に沿って発生し、夏の雷に比べて、100倍以上の電気エネルギーに達することがある(関連コラム:夏の雷の100倍のエネルギーで直撃する「冬季雷」)。

 経済産業省は、該当する地域の風力発電所に関しては、冬季雷に対する特別な対策を求めている。

 また、富山市八尾町に立地しているメガソーラーでは、冬季雷によると推測されている損傷として、太陽光パネルのカバーガラスが割れ、大きくたわむという被害が起きている(関連コラム:北陸特有の強烈な「冬季雷」が直撃!? 富山市八尾のメガソーラー

●発電所の概要
発電所名富山新港太陽光発電所
所在地 富山県射水市有磯
土地所有者   富山県
設置面積6万9579m2
発電事業者富山県企業局
太陽光パネル出力  5.25096MW
連系出力4.500MW
年間予想発電量4806MWh
(一般家庭約1300世帯の消費電力に相当)
固定価格買取制度(FIT)上の売電単価32円/kWh(税抜き)
整地工事分家工業
基礎・架台工事四方組、竹沢建設、分家工業、牧田組
電気工事新栄電設
自営線工事菅原電気
O&M(運用・保守)富山県企業局
太陽光パネルネクストエナジー・アンド・リソース製
(多結晶シリコン型、出力255W/枚、2万592枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格出力750kW・直流入力1000V対応機、6台)
自営線       約2.9km(電柱74本)
売電開始2016年3月
売電先  北陸電力