発電事業者が町に公園を寄贈、地域から信頼される鳥取大山のメガソーラー

古刹の町と外資系事業者が共感し共生を目指す

2019/09/10 06:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 鳥取県大山町において8月23日、地域住民の憩いの場となる公園「大山カナディアン・ガーデン」の贈呈式が開催された。

 大山町は、中国地方の最高峰「大山(だいせん:標高1729m)」一帯に位置する(図1)。山中にある「大山寺」の開創は718年で、奈良の法隆寺(開創:607年)などと並び、古代までさかのぼれる古刹で、「出雲国風土記」に記述されている。

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図1●中国地方を代表する名峰・大山と、中腹にある大山寺
(出所:日経BP)

 大山町内の地名には、「坊領」「今在家」など、お寺に関連したものが多く残っている。大山寺が、いかに地域に影響力を持っていたかがうかがわれる。

 「大山カナディアン・ガーデン」は、そんな大山のふもと、県道305号沿いにある(図2)。蛇行するように流れている阿弥陀川の橋を渡った北側にある。中央にコンクリートによる四角の大きな構造物。端に記念碑のあるシンプルな公園である。

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図2●「大山カナディアン・ガーデン」
(出所:日経BP)

 整備・贈呈したのは、太陽光パネル大手のカナディアン・ソーラーの関連法人である。施設名には、同社名の一部を冠した。近隣には、合計出力約27.3MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「CS鳥取大山太陽光発電所」がある。同社関連の太陽光発電所の開発・運営会社であるカナディアン・ソーラー・プロジェクト(東京都新宿区)が特定目的会社(SPC)を通じて開発した。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは東芝が担当し、太陽光パネルは自社製の320W/枚、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製の出力750kW機を採用した。

 「大山カナディアン・ガーデン」が立地している県道沿いの場所は、このメガソーラーから連系点まで約7kmを結ぶ自営線の鉄塔の隣にある。

 公園は、地元の大山町に引き渡された。寄贈したのは、カナディアン・ソーラーの関連法人と、地主の大山前畑である。大山前畑は、地元で不動産業を営んでいる(図3)。

図3●贈呈式の様子
(出所:日経BP)
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 式典には、贈授与側からカナディアン・ソーラー・プロジェクトのジェフ・ロイ代表取締役、大山前畑の松原誠代表取締役、大山町の竹口大紀町長のほか、鳥取県の平井伸治知事、鳥取県選出の赤沢亮正衆議院議員、金融や建設関係、その他の地元の地権者など約40人が参加した。

 ジェフ・ロイ代表取締役によると、ガーデンを建設し、町に贈呈するのは、メガソーラーが立地する地域への感謝と共生の意向を示す一環という。地元地域にとっては、長年の懸案だった広大な土地の有効活用が、メガソーラーの開発によって実現できた。

 カナディアン・ソーラー・プロジェクトにとっては、開発過程で直面したさまざまな難関に克服し、支援してくれた地元地域に、発電事業とは異なる形でも寄与したいという、感謝が基底にあるようだ。

 CS鳥取大山太陽光発電所は、約1km離れた場所に、2つのメガソーラーがあり、一つの連系点から中国電力の特別高圧送電線に接続している(図4、関連コラム:鳥取大山のメガソーラー、農地転用で27MW、オオタカに配慮)。

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図4●CS鳥取大山太陽光発電所
(出所:上はカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人、そのほかは日経BP)

 大山町の竹口大紀町長によると、ガーデン付近の阿弥陀川沿いの土地と、約1km離れた休耕地の土地は、いずれも有効活用に課題を抱えていた。また、財政状況が厳しいなかで、地域の憩いとなる公園をいかに新設・再整備するか、検討を始めていた。今回のガーデンの整備と贈呈は、町の構想を先取りするものだったという。

 メガソーラーは、おもにガーデン付近の阿弥陀川沿いの豊房地区の細長い土地と、清水原地区の近辺の幅広い休耕地からなる。

 地主を代表し、メガソーラーの誘致に尽力してきた大山前畑の松原代表取締役によると、有効活用の起死回生策として、約40年前にリゾート地として整備するという「西の軽井沢化」構想が浮上し、地域全体が期待を膨らませた時期があった。

 しかし、この計画は頓挫した。理由は、大きく2つあった。1つは、オオタカなどが生息している地域だったことだった。オオタカは、希少野生動植物種に指定されて保護対象となった(2017年8月に保護対象からの解除が決定)。このため、オオタカへの配慮が開発上の制約となった。もう一つは、バブル経済の崩壊という、経済的な理由だった。

 ガーデンに近い、阿弥陀川沿いの土地は、面積が約11haある。阿弥陀川は、かつては度々氾濫し、「暴れ川」だった。こうした川のとなりにあり、残土処理場として使われた後、活用が課題となっていた。

 ここから約1km離れた清水原地域のメガソーラーは、休耕地を活用した。面積は約34ha。農地としての活用を試みられてきたものの、難しかった。地元地域にとって、有効活用が望まれていた土地だったことから、メガソーラーの開発にあたり、農業振興地域の整備計画からの除外や、農地転用手続きなどは、地域が主導して進んだ。

 大山前畑の松原代表取締役によると、メガソーラーの開発は、地元地域のこうした意向に加えて、ジェフ・ロイ代表取締役が率いるカナディアン・ソーラー・プロジェクトの開発の取り組み方や思いに共感できたことが、成功に繋がったのではないかとしている。

 ジェフ・ロイ代表取締役は、「大山は、故郷のカナディアン・ロッキーに似ていて、懐かしい」とよく口にし、地域への親近感を示していた。また、発電事業者との土地関連の契約には、発電事業の終了後に設備の撤去費用を、全額積み立てることを含んでいた。こうした企業姿勢が好感を持って受け入れられたようだ。

 大山カナディアン・ガーデンにある、日差し 兼 モニュメントのような四角いコンクリート構造物は、「逆さ大山」を模ったものだと、ジェフ・松原両代表は語る。

 ジェフ・ロイ代表取締役は、「贈呈したガーデンからは、春は桜、日々の大山、冬は隠岐島まで展望できる。ここで、地域の皆さんが、眺望を楽しみながら日々、懇親を深めていくことで、われわれも末長く地域の一員であり続けたい」としている。

 メガソーラーは、カナディアン・ソーラー・プロジェクトの特定目的会社(SPC)である、CLEAN ENERGIES XXI(鳥取県大山町)が開発した。当初は同社が発電事業者だった。

 現在、カナディアン・ソーラー・プロジェクトは日本で最も活発に太陽光発電所を開発している事業者の一つである。同社の開発案件を基盤とするカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(東京都新宿区)は、東京証券取引所のインフラファンド市場に上場している。

 鳥取大山のメガソーラーも稼動後、インフラ投資法人に所有を移管した(関連ニュース)。2018年9月に発表した。これにより、資産運用は、同インフラ投資法人の所有案件を担当するカナディアン・ソーラー・アセットマネジメントが、O&M(運用・保守)はカナディアン・ソ-ラーO&Mジャパンが、それぞれ担う体制に代わった。

 インフラ投資法人によると、鳥取大山のメガソーラーの取得年度の設備利用率は11.18%としている。取得額は約104億4700万円、投資比率は22.00%としている。

 インフラ投資法人は、毎月の発電量を公開している(図5)。それによると、鳥取大山のメガソーラーの発電量は、やはり冬の積雪量に左右されるようだ。

図5●2018年9月以降の月ごとの発電量、オレンジは予想値、赤が実績
(出所:カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人)
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 稼働してすぐの2017~18年にかけての冬は、日本海側の地域で大雪が相次いだ。この時には、設備の損壊などはなく、無事に発電を続けた。

 ただし、地上に落ちた雪の塊が、太陽光パネル低部まで繋がり、発電量に影響したようだ。

 この翌年、2018年12月の発電量の実績として、投資法人は大山町のメガソーラーについて、積雪の影響と月間の日照時間が短かったことを理由に、月間の予想発電量を下回ったことを明らかにしている。予想の119万4987kWhに対して、65.42%となる78万1800kWhにとどまった。

 一方で、2019年5月には、予想の316万4285kWhに対して、131.72%となる416万8100kWhと大幅に上振れしているなど、年間を通じて見ると上振れ傾向にあるようだ。

 また、雑草では、ツル性植物に苦闘している(図6)。フェンスの外から伸びてきて絡まり、最終的には、フェンスを倒すような圧力をかけかねない。そのリスクを防ぐために、ツルの絡まり具合を見ながら、ハサミで切って倒壊のリスクを下げているという。

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図6●フェンスに絡みつくツル性植物
(出所:日経BP)
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●発電所の概要

発電所名CS鳥取大山太陽光発電所(CS大山清水原発電所、CS大山豊房発電所)
所在地鳥取県西伯郡大山町豊房
面積清水原:約34ha  豊房:約11ha
連系出力清水原:15.75MW 豊房:5MW
太陽光パネル出力清水原:約20MW 豊房:約7MW
年間予想発電量2万6259MWh
開発・当初の発電事業者CLEAN ENERGIES XXI
(鳥取県大山町:カナディアン・ソーラー・プロジェクトの特定目的会社)
現在の所有者カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人
現在の発電事業者ティーダ・パワー01合同会社
(東京都新宿区:カナディアン・ソーラー・プロジェクトの特定目的会社)
現在の資産運用者カナディアン・ソーラー・アセットマネジメント
EPC(設計・調達・施工)サービス東芝
O&M(運用・保守)カナディアン・ソ-ラーO&Mジャパン
太陽光パネルカナディアン・ソーラー製
(320W/枚:約8万5320枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力750kW・直流入力1000V対応機)
太陽光パネルの直列接続数18枚
太陽光パネルの設置角、設置高さ25度、1.5m
アレイ間隔約3.2m
自営線の設置距離合計約8km
着工2016年4月
売電開始時期2017年8月10日
売電価格(税抜き)40円/kWh
売電先中国電力