30社のパネルが並ぶ「福島空港メガソーラー」の6年、発電量に違いは?

年間に1000人もの見学者を受け入れ、「レモン電池」実験も

2019/09/17 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ、

“ウルトラマン空港”の新名所

 別名「ウルトラマン空港」とも呼ばれる福島県の空の玄関・福島空港。同空港のある須賀川市は、ウルトラマンの生みの親、円谷英二の出身地であることから、空港内にはウルトラマンの立像や大型パネルなどを常設展示している。

 加えて、同空港には、ウルトラマンと並ぶ、「名物」がある。2014年4月に稼働した「福島空港メガソーラー」だ(図1)。出力1.2MWの規模で、福島県などの出資する福島発電(福島市)が主体となり、県内の官民から資金を集めて建設した。

図1●2014年4月に稼働した「福島空港メガソーラー」
(出所:日経BP)
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 固定価格買取制度(FIT)がスタートして以降、国内の空港では、敷地内の遊休地を生かしてメガソーラー(大規模太陽光発電所)を建設する動きが目立っている。福島空港メガソーラーもその1つだが、規模的には長崎空港の30MWなど、さらに大きなサイトもある。

 「福島空港メガソーラー」が特徴的なのは、国内外30社の太陽光パネルと、5タイプの架台を設置したことだ。パネルを納入した企業の国籍は、日本、中国、台湾、米国、韓国、カナダ、ドイツ、インド、ノルウェー、スペインと10カ国・地域になる(メーカー名は、「施設の概要」を参照)。現在、最も普及している結晶シリコン型のほか、非晶質(アモルファス)シリコン型と化合物半導体型の薄膜タイプも含まれる。

 架台システムは、国内太陽光発電所で採用の多い鋼製とアルミニウム製に加え、FRP(繊維強化プラスチック)製と木製も導入した。また、設置後に傾斜角を変えられる可動型タイプと太陽の動きを追尾する2軸式自動追尾タイプも設置した。

 1つのサイトで、これだけの種類の太陽光パネルと架台システムを見られるのは世界的にも珍しい。こうした仕様にしたのは、福島県のエネルギー政策が背景にある。

県内の太陽光産業をサポート

 同県は、東日本大震災に伴う原発事故を機に、「2040年をめどに県内の1次エネルギー需要量の100%以上に相当するエネルギーを再エネから生み出す」という目標を掲げた。こうした再エネ大量導入の目的は、原子力を代替できる温暖化対策に加え、再エネ関連産業で地域経済を活性化することも大きな狙いだ。

 「福島空港メガソーラー」は、県民に対して太陽光発電をPRするとともに、県内で太陽光発電事業や建設事業に取り組む会社をサポートする役割を担っている。さまざまなパネルや架台を取り入れ、特性などを比較・検証しているのもその一環だ。

 同メガソーラーは、4つのエリアからなっている。東芝製の太陽光パネル、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナー(PCS)を設置した「北発電所」(出力500kW)、30社のパネルと田淵電機製小型PCSを配置した「ソーラーパーク」(出力169kW)、フジプレアム製の追尾式太陽光発電システム(22.5kW)とそれを制御するオムロン製PCS、そして「南発電所」(501kW)だ(図2)。

図2●東芝製の太陽光パネル、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナー(PCS)を設置した「北発電所」
(出所:日経BP)
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 このうち30種のパネルを設置した「ソーラーパーク」と追尾式太陽光発電システムは、空港の駐車場に隣接しており、空港の利用者が気軽に見学できるようになっている。駐車場端の東屋から、見下ろすように30種類のパネルを眺められる。発電所の説明と発電量を示す掲示板もある。

 敷地内を巡ると、設置高50cm程度にアレイ(パネルの設置単位)を設置しており、パネルが見やすい。加えて、全30社のパネルごとに社名と方式を表示しているため、それぞれの特徴がよくわかる(図3)(図4)。

図3●30社のパネルごとに社名と方式を表示している
(出所:日経BP)
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図4●化合物半導体型の薄膜パネルも設置した
(出所:日経BP)
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3社のパネルに「スネイルトレイル」

 運転開始から6年目に入り、設置した30種類の太陽光パネルの発電量にどのような違いが出てきたのか。太陽光発電産業に従事する人ならば、誰でも関心のあるところだ。

 福島発電では、産業技術総合研究所・福島再生可能エネルギー研究所(FREA)とも連携しつつ、30種類のパネルの性能に関して、検証してきた。

 最大の注目点は、「設備利用率」の違いだ。設備利用率とは、定格出力で発電し続けたと仮定した時の年間の発電量に対して、実際の発電量がその何割になるかを示したもの。日照の違いに左右されるが、同じ日照の場合はパネル間の発電特性の違いが出る。定格出力は、一定の条件下での変換効率を示すが、設備利用率は時々刻々と変化する日照条件を通じて、いかに発電するかを示す。日射量が減る朝夕の時間帯や曇りでも発電量を稼げると、高くなりやすい。発電事業者にとっては、収支を計算する重要な指標になる。

 「ソーラーパーク」では1つの敷地内に30種のパネルを同じ向き、同じ角度で設置しているため、ほぼ同じ気象条件下で、設備利用率を比較できる。

 福島発電では、空港メガソーラー全体の設備利用率については年間で約14%としているが、パネル30種個別の設備利用率は公表していない。ただ、大まかな傾向は明らかにしている。福島発電で空港メガソーラーに駐在・管理している阿部美幸さんによると、「パネル30種の設備利用率の違いに関しては、発電特性の異なる薄膜系を除いた結晶シリコン系では、年間を通じてみると、概ね1ポイント内に収まっており、大きな差がないことがわかってきた」と話す。

 今年7月末に、「ソーラーパーク」で30種のパネルを見学したところ、日本の伊藤組モテック(多結晶シリコン型・250W/枚)と中国ハレオンソーラー(多結晶シリコン型・250W/枚)、インドのモーザーベア・ソーラー・リミテッド(多結晶シリコン型・245W/枚)の太陽光パネルには、部分的に「スネイルトレイル」の現象が見られた(図5)(図6)(図7)。

図5●福島空港メガソーラーで見られる「スネイルトレイル」の一例
(出所:日経BP)
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図6●「スネイルトレイル」の一例。マイクロクラックが原因で発生する
(出所:日経BP)
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図7●「スネイルトレイル」の一例。いまのところ発電量に変化は見られないという
(出所:日経BP)
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 「スネイルトレイル」とは、太陽電池セル(発電素子)の表面に、黒色、または白色の線状の模様が発生する現象を差す。カタツムリ(スネイル)が、はうように歩いた跡(トレイル)のように見えることから、「スネイルトレイル」と呼ばれている。

 セルのマイクロクラック(微細な割れ)に沿って発生するが、すぐに発電量が減少することはない。ただ、将来的に発電量の顕著な低下につながる恐れがあるため、O&M(運営・保守)の現場では、「要経過観察」とされることが多い。

 福島発電の阿部さんによると、「スネイルトレイルの発生しているパネルに関しても、いまのところ目立った発電量の変化は見られない」と言う。

木製架台に「割れ」が多発

 一方、架台に関しては、すでに一部のタイプに不具合などが現れている。

 追尾式太陽光発電システム(4台・合計22.5kW)は、可動部分があるだけに不具合が起きやすいという。今年7月末に見学した時にも、追尾システムが故障し、太陽の動きを追わずに1日中、水平のままになっていた。太陽の動きを感知するセンサーが故障しているのが原因とみられ、メーカーに修理を依頼中という(図8)。

図8●追尾式架台システムは故障して、常に水平のままだった
(出所:日経BP)
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 木製の固定式架台では、腐食の兆候はないものの、多数の割れが起きている。稼働して3年目ぐらいから目立ち始め、架台メーカーに依頼し、すき間を補修剤で埋めたという。割れは、柱と梁の両方で広範に起きており、補修部分は、10カ所以上に及ぶ。

 今のところ、割れは、すべて木の繊維に沿ったもので、強度上、すぐに問題があるものではないという。乾燥により木材が収縮したために生じたと見られる(図9)(図10)。

図9●木製架台の割れを補修した
(出所:日経BP)
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図10●乾燥による収縮が原因と見られる
(出所:日経BP)
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 「福島空港メガソーラー」で設置した木製架台は、地域産業の活性化にも配慮し、国内の林業から排出された間伐材を活用した。割れが発生したのは、間伐後の生木を建材に加工する際、乾燥工程が不十分だったのが原因ではないかという。十分に乾燥させた建材を使った木製架台であれば、こうした割れは起きにくいだろうという。

動物にケーブルをかじられ断線

 運営上、予想外の原因で不具合が起きたのが、ケーブルの断線だった。稼働後、2年目に太陽光パネルの発電量をストリング(パネルの直列回路)単位で監視するための通信ケーブルに異常が発生し、データが得られなくなった。

 発電所内を詳しく調べたところ、樹脂製のケーブル保護管に入れて地中埋設した通信線が、架台下の地面から地上に出て、保護管から電線が露出した部分が損傷していた。阿部さんが最初にこの被害を見つけた時、人によるいたずらと思ったという。

 しかし、「その後も、たびたび起きることから、ほかに原因があると考えた。周辺には豊かな自然が残っており、空港内にもタヌキやハクビシン、ウサギの侵入が見られることから、これら小動物による仕業の可能性が高い」と言う。

 阿部さんは、その対策として、トゲの付いた樹脂製の「ネコ避けマット」をホームセンターで購入し、通信線の露出している箇所に巻き付けた。その効果は抜群で、対策後には、通信線の損傷は見られなくなったという(図11)(図12)。

図11●「ネコ避けマット」を巻き付けてケーブルの露出部分を保護した
(出所:日経BP)
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図12●この対策で小動物によるケーブル被害はなくなった
(出所:日経BP)
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太陽電池の後は「レモン電池」

 「福島空港メガソーラー」の見学者は、事前に予約して訪れ、阿部さんなど福島発電の担当者が解説しながら案内したケースだけでも昨年、約800人だった。稼働当初は年間1000人以上が予約見学していたことと比べると減少気味だが、それでも自由見学を加えると年間1000人を超える人たちが、訪れていると見られる。

 見学者には、県外、さらには海外からの視察も多いという。今年7月26日には、JICA(国際協力機構)を通じて11人が視察に訪れた。参加者は、世界的にも珍しい木製架台やFRP製架台について興味を示しつつ、太陽光の台風対策や日本における太陽光発電のコスト動向、メガソーラーの工期などに関して、熱心に質問していた(図13)。

図13●海外からの視察も多い
(出所:日経BP)
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 また、7月30日には福島県喜多方市の公民館が主催・募集した環境学習イベントで約20人の小学生が福島空港を訪れ、メガソーラーを見学後、「レモン電池」を作った。

 まず、メガソーラーの見学では、太陽光発電の説明の後、検電器と放射温度計を使って、太陽光パネルの電流や太陽電池セルが発熱している状態を測定するなど、太陽光発電所の点検業務を体験した。当日の検査ではパネル表面は60度近くになっていた(図14)。

図14●太陽光発電所の点検業務を体験した
(出所:日経BP)
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 見学の後は、福島空港ビルにあるセミナールームで4グループに分かれて、「レモン電池」を作り、電池の実験を通じて、発電の仕組みを勉強した。

 「レモン電池」とは、レモンに銅板とアルミニウム板など異なる金属板を差し込んで、電線をつなぎ、電球などを点灯させるもの。電位差のある2枚の金属板が電極、酸性であるレモン果汁が電解質になって、イオンを溶かして電流が流れる。

 今回の実験では、金属板をキッチンペーパーで挟んで電極間の間隔を狭め、レモン果汁の内部抵抗を減らしたり、食塩を加えたりして、小学生による実験でも、うまく発電できるように工夫していた(図15)。

図15●グループに分かれて1人1個、レモン電池を作った
(出所:日経BP)
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 一般的に「レモン電池」は4個を直列につなげばLED電球が点くという。ただ、当然ながら1カ所でも接触不良などがあれば、通電しない。今回は、グループ全員の5個のレモン電池を直列につないだが、そう簡単には点かなかった。先生役の福島発電社員の助けにより、最後には4グループ全部でLED電球が点灯した(図16)。

図16●5個の「レモン電池」を直列につないでLED電球が点灯した
(出所:日経BP)
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 「福島空港メガソーラー」では、希望に応じて、こうした座学講習も提供しており、太陽光発電の見学と合わせ、環境学習の効果や発電の仕組み理解を高めている。

●施設の概要
名称福島空港メガソーラー
住所福島県石川郡玉川村大字北須釜字懸金沢16番地(福島空港)
出力約1.2MW(福島空港北発電所500kW、ソーラーパーク169kW、追尾型太陽光システム22.5kW、福島空港南発電所501kW)
発電事業者福島発電(福島市)
総事業費約4億円(県民参加型ファンド1億円)
EPC(設計・調達・建設)ユアテック
太陽光パネル(ソーラーパーク)伊藤組モテック、トワダソーラー、エスパワー、GMG、三菱電機、京セラ、パナソニック、カネカ、フジプレアム、シャープ、長州産業、ジャパンソーラーファクトリー、東芝、ソーラーフロンティア、カナディアンソーラー、インリーグリーンエナジー、アップソーラー、ソプレイソーラー、トリナ・ソーラー、ハレオンソーラー、レネソーラー、トッパーサン、デルソーラー、ソーラーワールド、モーザーペア・ソーラー・リミテッド、LS産電、ハンソル・テクニクス、RECソーラー、イソフォトン、サンエジソン(社名は建設時点のもの)
架台奥地建産、日創プロニティ、AGCマテックス、セテック、大日本木材防腐、SUS
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)、田淵電機、オムロン、KACO
竣工日2014年4月14日