大雪には耐えるも、「二枚貝」でパネル数十枚が割れた、松江のメガソーラー

クローバーによる土砂・雨水対策は機能、雑草を防ぐには至らず

2019/09/24 06:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 島根県松江市の里山沿いに、太陽光パネルの出力が約2.3MW、パワーコンディショナー(PCS)出力が1.99MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「エクシオ松江 ソーラーファーム」がある(図1)。JR松江駅から東に、中海に向かう途中の山間部に位置する。

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図1●松江駅から東に向かった里山沿いにある 「エクシオ松江 ソーラーファーム」
(出所:協和エクシオ、下は日経BP)

 電気通信関連インフラを手がける協和エクシオが開発・運営している。同社は、本業の知見を生かせる太陽光発電所のEPC(設計・調達・施工)サービスに加えて、発電事業にも取り組んでいる。国内で10カ所以上の太陽光発電所を運営している(関連コラム:7つの古墳を抱える、東金市のメガソーラー、同ニュース:甲府で6カ所目、同コラム:茨城県小美玉市の出力約1.175MW)。

 松江のメガソーラーでも、自社で設計を担当し、施工は地元の佐藤組(松江市)に委託した。太陽光パネルはシャープ製を採用し、単結晶シリコン型(265W/枚)を8784枚並べた。PCSは、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用し、直流入力1000V対応の出力665kW機を2台、同660kW機を1台、設置した(図2)。

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図2●シャープ製の太陽光パネル、TMEIC製のPCSを採用
(出所:日経BP)
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 松江市朝酌町に約2万5000m2の土地を借り、事業用地とした。南向きの斜面で、太陽光発電に向く一方、元々は農業振興地域に区分される第1種農地だった(メガソーラー探訪の2016年2月の掲載記事)。こうした条件を乗り越えて太陽光発電所を建設し、2015年11月に売電を開始した。

 売電を開始して約4年、発電量は月によってばらつきはあるものの、年間を通してみると年によって大きく振れることはなく、約254万kWhという結果が続いている。事業計画時の予想に対して、約5%の上振れという。

 日本海側は、相対的に日照に恵まれないだけでなく、積雪によって発電量が下がる恐れがある。とくに、2017~18年にかけての冬は、鳥取県や島根県において、記録的な大雪が続き、道路や鉄道の通行にも大きな影響を及ぼした。

 こうした積雪の影響は、当初想定していたよりも小さいという。これまでのほとんどの年では、多く積もった場合でも、1~2日の間に溶けたり、太陽光パネルから滑り落ちたりして、発電には大きく影響しなくなった。

 記録的な大雪が続いた2017~18年の冬も、連続して発電量がゼロとなった日は、4日間で済んだ。もっとも、4日間連続で発電量ゼロは、このシーズンで2回あった。それでも、太陽光パネル低部まで、地面から雪がつながった日はなかったという(図3)。

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図3●2017~18年の冬は大雪が続いた
2018年2月8日の様子(出所:協和エクシオ)

 事業計画では、積雪期の発電量を保守的に見積もっており、12~2月の3カ月間の予想発電量は、年間の約9%しか見込んでいない。実績値は、概ねこうした予想より多いことから、新たな積雪対策の必要性は低いと考えている。

 積雪対策に関し、松江のメガソーラーでは、太陽光パネルの設置角を当初の設計から変更した経緯がある。設計の初期段階では20度だったが、最終的に10度まで寝かせた。

 当初、設置角20度で検討していたのは、積雪時にパネルから、雪をできるだけ早く滑り落とすためだった。しかし、松江市の積雪量はそれほど多くない。しかも、冬季の日射条件が悪く、雪を早く落としたところで、発電量の増加効果は限られる。

 そこで、設置角を10度とし、冬季に発電量のロスを多少、減らすよりも、敷地内の太陽光パネルの設置枚数を増やし、発電量の多い時期に出力をより増やしたほうが、事業性が高くなると判断した。

 実際には、記録的な大雪の際でも、発電ロスは予想したほど多くなかったことから、年間を通じてみると、発電量は上振れするという、プラスの効果が大きかった。

 大雪の際の画像を見ると、太陽光パネルの上に、はんぺんのように厚く降り積もっている。日本海側の雪は、北海道のようにサラサラではなく、湿って重いことが予想される。

 こうした場合、雪の重みで架台が歪んで倒壊したり、太陽光パネルが架台から外れる、割れるといった損傷が生じることがある。

 しかし、松江のメガソーラーでは、こうした損傷は生じていない。アレイの構成や基礎・架台の選択の工夫が生きたといえる(図4)。

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図4●コンクリート製の杭基礎を、現地で傾斜にあわせて切った
(出所:日経BP)
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 このメガソーラーの太陽光パネルの設置区域は、すべて斜面となっている。しかし、地面の傾きを吸収しながらパネルを設置する手法として一般的な、杭基礎や、東西方向への傾斜に対応した架台は採用していない。強度や信頼性に不安を感じたためだった。

 協和エクシオが、斜面に対応しながら、必要な強度を実現できる方法として採用したのは、シンエイテック製の「Hパイル」と呼ぶコンクリート2次製品による杭と、日創プロニティ製の架台だった。

 シンエイテック製のHパイル杭は、斜面に対応しやすい上、架台と組み合わせた際の強度や信頼性に優れていたという。コンクリート杭の内部には、鉄筋が入っていて、強度が高い。地中では杭として、地上では柱として利用できる強度を持つ。

 場所によって異なる傾斜への対応は、現場で切断することで対応した。切断後は、一般的なコンクリート基礎と同じように、コンクリートに後から打ち込むアンカー(固定具)で架台と接合できる。結果的に基礎と架台を「剛接合」できる利点があった。

 また、事業性の面で、電力購入先を、中国電力から新電力に変えた。メガソーラーでは、発電していない夜間に、PCSを適切な温度に保つための空調の電力は、購入することになる。松江のメガソーラーでは、空調電気代が年間で70〜80万円に達しており、少しでも安くしたかったとしている。

 予想外のトラブルにも遭遇した。2018年春に、突然、36枚の太陽光パネルを割れているのが見つかった(図5)。

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図5●36枚の太陽光パネルが割れていた
(出所:協和エクシオ)
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 このメガソーラーでは、2カ月に1回、全設備を目視で点検している。2018年4月の点検時に確認したことから、前回に点検した同年2月からの間に集中しておきたと思われる。それまでに、こうした集中的な太陽光パネルの割れはなかった。

 原因は、現場の状況から、カラスが二枚貝を上から落とし、その衝撃で割れたと推測できた(図6)。カラスの石落としによるパネル損傷は、国内の多くの太陽光発電所で起きているが、「二枚貝」というが特徴的で、海と湖に近い地域に特有とも言える。

図6●取材時にも、二枚貝が落ちていた
(出所:日経BP)
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 その後、カラス対策として、フラッシュ光をLEDで上空に向けて発する機器を設置した(図7)。

 
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図7●カラスが嫌がる光を、嫌がるパターンで上空に発する
下は、割れた太陽光パネルの場所と、フラッシュ光を発する機器を設置した場所(出所:日経BP、下の図は協和エクシオ)
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 東神電気(大阪市淀川区)製の「ビー・ビー・フラッシュ」で、カラスの嫌がる光で撃退する(関連コラム:カラス対策にフラッシュ光の「新兵器」)。電柱の営巣対策向けに開発・製品化された。電力会社に広く採用されているだけでなく、国内のメガソーラーで採用が広がっている(関連コラム:琵琶湖のリゾートホテルの約2MW、同コラム:岡山の山あいの約2MW)。

 導入したのは10個で、割れた36枚の太陽光パネルが集中している、敷地の南西部に集中的に取り付けた。その後、割れたのは、機器を取り付けなかった東側の2枚に留まり、今回のカラス対策は一定の効果があったと評価している。

 松江のメガソーラーでは、土砂流出の抑制と保水効果を高める手法として、敷地内にクローバーとシバを植えている。こうしたカバープランツは、根付く場所と根付かない場所がはっきりすることが多いが、松江の発電所では、ほぼ全面に根付いた。一般的な排水溝も備えている。

 かつて水害に遭った地域のため、周辺地域からの関心や要望が、特に多かった項目だった。現在のところ、台風の際などにも、土砂が流れたり、濁水が敷地外に流れ出ることはなく、うまく機能しているという。

 クローバーやシバには、雑草の抑制効果も期待したが、この点では五分五分なのが実情で、機能している場所と、あまり機能していない場所に分かれる(図8)。全体的に、雑草は予想以上に伸び続け、当初の計画にはなかった草刈りを年2回、加えた。

図8●雑草が多く生えている場所の一つ
(出所:日経BP)
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 敷地内の草刈りは、乗用型草刈機と鎌などによる手刈りを併用している。乗用型草刈機をできるだけ多く使い、効率化しているが、基礎のまわりと、電線を地上に敷設している場所では、手刈りすることで設備の損傷を防いでいる。

 電線を地上に敷設している場所は、すぐにわかる。赤と白に塗り分けられたポールを立てて目印にしている(図9)。このポールは、除草時の安全確保を目的に立てたのではなく、積雪時の点検作業時の目印に立てたものである。

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図9●積雪期の点検のためにポールを立てている
(出所:日経BP)
 

●発電所の概要
発電所名 エクシオ松江ソーラーファーム
所在地島根県松江市朝酌町1194番 ほか
設置面積2万5281m2
太陽光パネル出力2.327076MW
パワーコンディショナー(PCS)出力1.990MW
年間予想発電量約254万kWh
発電事業者協和エクシオ
設計協和エクシオ
施工佐藤組(島根県松江市)
O&M(運用・保守) NTTファシリティーズ
太陽光パネルシャープ製
(単結晶シリコン型、出力265W/枚・8784枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(1000V入力対応、出力665kW機・2台、同660kW機・1台)
工事期間2015年5月1日~ 11月30日
売電開始2015年11月2日
固定価格買取制度(FIT)上の買取価格36円/kWh(税抜き)
売電先中国電力