北陸最大のメガソーラー、「直流1500V」でコスト下げて効率アップ

ファースト・ソーラーが開発とO&Mを担う

2019/10/01 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

宝達志水町に約71MW

 石川県の中部、能登半島の付け根に位置する宝達志水町は、加賀藩ゆかりの城跡や建築物のほか、能登地方の最高峰「宝達山」(標高637m)を有する(図1)。

図1●能登地方の最高峰「宝達山」
(出所:宝達志水町)
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 2018年12月、同町にこちらも北陸で最大規模となるメガソーラー(大規模太陽光発電所)が稼働を始めた(図2)。

図2●宝達山に連なる丘陵に建設した「石川沢川太陽光発電所」
(出所:ファースト・ソーラー・ジャパン)
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 宝達山から東に連なり、富山県富岡市までまたがる丘陵に建設した、出力約71MWの「石川沢川太陽光発電所」だ。ファースト・ソーラー・ジャパン(東京都千代田区)の出資するSPC(特定目的会社)が事業主体で、2019年7月には落成式が開催された。ファースト・ソーラー・ジャパンは、米パネル大手、ファースト・ソーラーの日本法人だ。

 連系出力は59.52MW、太陽光パネルの出力で71.208MWに達する。

 約71MWもの太陽光パネルの出力規模は、北陸の太陽光発電所で最大というだけでなく、全国的にも稼働済みメガソーラーのパネル出力規模で8番目になる。年間の発電電力量は、7880万kWhを見込み、これは一般家庭約1万8000世帯の消費電力に相当する。

 約163haに達する事業用地は、主にゴルフ場の開発跡地で、建設の途中で頓挫して放置され、荒地となっていた。ゴルフ場開発の際に、林地開発許可を取得していたため、用途を変更した上で、既存の調整池など利用しつつ、新たな排水施設を増設した。

 約163haのうち、主に宝達志水町の約70haに太陽光パネル59万3400枚を並べた。残りの半分以上、主に富岡市側の事業用地は、残置森林として、そのまま残すことで環境保全に配慮した。

黒色パネルが湖面のように並ぶ

 EPC(設計・調達・施工)サービスはレイズネクストが担当した。同社は、新興プランテックとJXエンジニアリングが2019年7月1日に経営統合して発足した。「石川沢川太陽光発電所」は、旧JXエンジニアリングが手掛けてきた案件となる。

 米ファースト・ソーラー製の化合物系太陽光パネル「シリーズ4」(120W/枚)、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナー(PCS)を採用した。完成後のO&M(運営・保守)は、ファースト・ソーラー・ジャパンが担当している(図3)。

図3●米ファースト・ソーラー製太陽光パネル、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナー(PCS)を採用した
(出所:ファースト・ソーラー・ジャパン)
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 「石川沢川太陽光発電所」を訪れ、南側の高台から全体を眺めると、緩やかな南向き斜面のくぼみに、鏡のような澄んだ湖面が広がっているような印象を受ける。黒いパネルが一面につながって見え、所々に日光が反射したり、上空の雲が映ったりしている(図4)。

図4●南側の高台から眺めると、黒色のパネルが連なって湖面のように見える
(出所:ファースト・ソーラー・ジャパン)
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 こんな光景に見えるのは、米ファースト・ソーラー製のパネルが、黒色の薄膜系パネルで、しかも、フレームのないタイプだからだ。これをパネル横置きで縦方向に10段(10枚)の大面積アレイ(パネルの設置単位)を基本とし、設置角25度で並べた。

 北陸というと豪雪地帯というイメージがあるが、宝達志水町は、比較的温暖な気候で、最深積雪量は約45cmに留まる。ただ、風の強い海岸沿いに比べると、山あいは雪が積もりやすい傾向がある。そこで設置角を25度まで傾けて、パネルから雪が滑り落ちやすくした(図5)。

図5●10段の大面積アレイを25度で設置した
(出所:ファースト・ソーラー・ジャパン)
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除雪車を敷地内に常備

 ただ、パネル最低部から地面までの設置高は1m程度なので、アレイ下に落ちた雪が山になってパネルとつながってしまう可能性もある。そうなると、雪が滑り落ちずに長時間パネルを覆ってしまい、発電ロスが増えるとともに、パネルを損傷させるリスクもある。

 そこで、ファースト・ソーラー・ジャパンでは、所内に除雪車を常備し、積雪後にはアレイ前の雪山を取り除くことにしている。建設中も含めると、パネル設置後、すでに2度の冬を越している。そうしたなか、予想以上に除雪が必要と分かり、除雪車の作業性を高めるため、所内のU字排水溝に蓋をするなどの改善工事を進めているという(図6)。

図6●除雪車を所内に常備した
(出所:日経BP)
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 また、パワーコンディショナー(PCS)と昇圧器を備える中間変電所(サブステーション)では、PCSを折板屋根の下に収納した。導入したTMEIC製の2.5MW機(SOLAR WARE /2500ER)については、本来、筐体は不要で屋外に設置できる仕様だが、積雪時の作業性や直射日光による温度上昇を緩和する効果なども考慮し、慎重を期して屋根を設けたという(図7)。

図7●TMEIC製の屋外型PCSを折板屋根の下に収納
(出所:ファースト・ソーラー・ジャパン)
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直流1500Vでコスト削減

 米ファースト・ソーラーは、世界有数の太陽光パネルメーカーで、同社製の化合物系太陽電池は、一般的な結晶シリコン系に比べて製造時に排出する二酸化炭素が少ないことが特徴。世界各国で、メガソーラー開発と建設にも取り組んでおり、太陽光発電のEPC事業者としても世界最大規模の実績を持つ。日本法人のファースト・ソーラー・ジャパンは、メガソーラー開発のほか、完成後のO&Mも手掛けている。

 同発電所は、太陽光パネルとPCSなどに1500V対応製品を採用し、直流側の回路構成を1500V仕様で設計した。国内のメガソーラーでは、固定価格買取制度(FIT)スタート時、直流600V仕様が一般的だったが、数年前から1000V仕様の設計も増えていた。「石川沢川太陽光発電所」では、さらに直流電圧を上げ、1500Vの最新技術を採用することで、システム効率の向上と工事費の削減を実現した。

 採用した太陽光パネル「シリーズ4」は、公称最大出力120W、公称最大出力動作電圧70.8V、公称開放電圧88.7V。このパネルを15直列・5並列で1ストリング・75枚の回路構成にした。そして、14回路を1つの接続箱に入力している(図8)。

図8●15直列・5並列で1ストリング・75枚の回路構成にした
(出所:日経BP)
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 薄膜系の太陽光パネルは、結晶シリコン系に比べて1枚当たりの電圧が高いため、1500V仕様との相性がよいという面もある。1ストリングの回路に並列が加わるため、3分岐コネクターによって効率的に施工するなどのノウハウが蓄積されてきたという。

 メガソーラー設計における直流(パネル)側の高電圧化は、送電ロスの低減によるシステム効率の向上ほか、ストリング枚数の増加による工期短縮やO&Mコストの削減につながる。加えて、EPCを担当したレイズネクストによると、「高電圧化により同じ電力量を送るのにケーブルを細くできる利点も大きい。ケーブルの細線化により、線材や施工コストが低減する」と言う。

 ここ数年、国内の太陽光関連設備メーカーも、直流1500V対応の機器を製品化しているが、「石川沢川太陽光発電所」が着工した当初は、1500V対応の早かったTMEIC製のPCSを除いて、電設部材のほとんどは海外製しかなかったという。同発電所でも接続箱はドイツ・ワイドミュラー製を採用している(図9)。

図9●独ワイドミュラー製の接続箱
(出所:日経BP)
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 また、完成後のO&Mを手掛けるファースト・ソーラー・ジャパンによると、定期点検に必要な検査機器に関し、当初1500V対応製品が少ないという課題もあったが、ここにきて、複数メーカーが1500V対応の検査機器を製品化しているという。

 

自営線が3つの橋を渡る

 「石川沢川太陽光発電所」は、太陽光パネルからの直流1500Vの電流を、中間変電所でまず交流2万2000Vに昇圧する。25カ所の中間変電所から第1変電所に送られ、そこでさらに6万6000Vに昇圧後、11.5kmの自営送電線を経て、第2変電所で15万4000Vに昇圧して、北陸電力の特別高圧送電線に連系して、売電している。11.5kmもの自営線は、県道75号線の舗装下に地中埋設した(図10)。

図10●北陸電力と接続する連系変電所
(出所:ファースト・ソーラー・ジャパン)
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 ファースト・ソーラー・ジャパンの平澤憲・エンジニアリング部プロジェクトマネージャーによると、「石川沢川太陽光発電所」では、太陽光パネルの設置工事と並んで、11.5kmもの自営線の敷設もプロジェクト実現の大きなポイントになった」と振り返る。

 というのは、自営線を敷設する県道75号線のルートの途中に、河川にかかる3つの橋があったからだ。県道の下にケーブルを地中埋設するには県から道路占有許可を得る必要がある。加えて、河川を越えたり、超える際に既存の橋を活用できるかどうかなどに関しては、道路占有許可とは別に、河川や橋を管理する自治体と協議することになる。

 平澤プロジェクトマネージャーによると、「自営線の敷設に際しては、地域住民などから理解を得られるよう、完成後の美観や景観などに配慮した」と言う。

 例えば、道路下への地中埋設では、ケーブルを埋めるために道路端を細長く掘り起こして敷設後、再舗装するのが一般的。だが、その場合、完成後には、道路端だけ新たな舗装面になって、道路の美観が損なわれる。

 そこで、今回は、ケーブル敷設工事の際、道路の片側車線全部を新しく舗装し直した。「地域住民からは、道路がきれいになったと好評」と言う(図11)。

図11●ケーブルの埋設工事の際、道路の片側車線全部を舗装し直した
(出所:ファースト・ソーラー・ジャパン)
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 一方、河川を超える際、ケーブルが目立たないように、橋桁の裏側に敷設することを目指したものの、小さな橋の場合、橋の強度を維持するため、こうした手法が使えなかったという。そこで、橋桁のすぐ脇に新たに配管を渡して、そのなかにケーブルを通した(図12)。

図12●11.5kmの自営線は3つの橋を渡る
(出所:ファースト・ソーラー・ジャパン)
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 実際の工事段階では、11.5kmの敷設ルートには5つもの自治会が関わってくることから、それぞれと協議して、工事日程や車線規制などに理解を求めていったという。

みずほ銀などプロファイ組成

 「石川沢川太陽光発電所」の建設資金に関しては、みずほ銀行をアレンジャーとする銀行団から約270億円(約2.4億ドル)のプロジェクトファイナンスを組成して調達した。

 このファイナンススキームは、11.5kmの自営線敷設における諸課題が解決し、最終的に県から道路占有許可を取得したことで、ようやく可能になったという。

 平澤プロジェクトマネージャーは、「太陽光のデバロッパーでは、地域への説明や対応をすべてEPCに任せているケースも見られるが、ファースト・ソーラー・ジャパンでは、重要な事案に関しては、自ら前面に立つとともに、完成後は、自社でO&Mを担っていくことを基本にしている」という。

●設備の概要
発電所名石川沢川太陽光発電所
住所石川県宝達志水町沢川、富山県高岡市福岡町沢川
発電事業者特定目的会社(SPC)・FS Japan Project 12合同会社(ファースト・ソーラー・ジャパン出資)
事業用地約163ha(パネル設置面積・約70ha)
出力連系出力59.52MW、太陽光パネルの出力71.208MW
年間予想発電量7880万kWh
EPC(設計・調達・施工)サービスレイズネクスト(旧JXエンジニアリング)
O&M(運用・保守)サービス ファースト・ソーラー・ジャパン
太陽光パネル米ファースト・ソーラー製(120W/枚・59万3400枚、1500V仕様)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(2.5MW機・25台、1500V仕様)
接続箱独ワイドミュラー製(14回路/箱、1500V仕様)
着工2015年7月
商用運転開始2018年12月1日