国内初の「募集プロセス」で隣地に新設、群馬県昭和村のメガソーラー

落雷が頻発、遠隔監視が途絶える被害も

2019/11/05 06:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 群馬県昭和村は、赤城山の山麓に近く、キャベツやコンニャクといった野菜の栽培が盛んなことで知られる。その高原の一角に、太陽光パネルの合計出力が約5.6MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「サン・ファーム千年の森(昭和村太陽光発電所)」がある(図1)。

図1●3カ所のメガソーラーからなる
(出所:コムシスクリエイト)
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 このメガソーラーは、発電所名にある通り「千年の森」に立地する。ゴルフ場やサッカーの合宿施設などがある場所で、メガソーラーは工業用地を活用し、高圧配電線に連系している3つの発電所で構成されている。

 日本コムシスグループが開発して施工し、運営も担っている。同社グループは、NTTグループなどの通信設備の施工などを多く手がけていることで知られる。

 日本コムシスがEPC(設計・調達・施工)サービス、O&M(運用・保守)を担っている。発電事業者は、日本コムシスの新規事業開発を手掛ける子会社である、コムシスクリエイト(東京都品川区)となる。

 コムシスクリエイトによる太陽光発電事業は、19カ所・合計出力約61.2MWが稼働している。この19カ所で開発計画はひと段落し、現在計画中の案件はないとしている。

 昭和村のメガソーラーのほか、茨城県常陸太田市の出力約2.8MW(メガソーラー探訪の関連コラム)、栃木県那須塩原市の同5.7MW(同コラム)、兵庫県加東市の水上の合計約2MW(同コラム)、岩手県金ケ崎町の約20MW(同コラム)などがある。

 いずれも、昭和村の発電所と同じように、EPCやO&Mは日本コムシス、発電事業者はコムシスクリエイトとなる。太陽光パネルは長野県安曇野市の1.8MWでCIS化合物型を採用した以外は、いずれも結晶シリコン型を採用し、メーカーはさまざまだが、パワーコンディショナー(PCS)は、宮城県利府町の約12.7MWと北海道江別市の約2MWを除く17カ所は、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製で共通している。

入札で「上越幹線」を増強

 今回のメガソーラーは、標高約660mの場所にある。付近からは、谷川連峰をはじめ、上信越の山並みを一望できる。周囲一帯には、畑や山林が広がり、北海道にでもいるような印象を受ける(図2)。

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図2●高原に立地
(出所:日経BP)
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 昭和村は、農作が盛んで、日射量が豊富にある。しかも、標高が高いので、真夏でも比較的気温が低い。高温時に発電効率が低下する結晶シリコン型太陽光パネルの出力が低下しにくい。

 これらの条件から、太陽光発電に向く。周囲の畑や山林の合間には、太陽光パネルが並んでいる光景を所々で目にする。稼働ずみの発電所としては関東地方で最大規模となる、出力約43MWのメガソーラーも近隣に立地している(関連ニュース)。

 サン・ファーム千年の森は当初、2013年11月に、太陽光パネル出力が約2.419MW、連系出力が1.99MWで稼働を開始した(図3稼働当初のメガソーラー探訪)。コムシスクリエイトでは、この第1期のメガソーラーをAサイトと呼んでいる。固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価は、40円/kWh(税抜き)である。

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図3●Aサイト(左)、BサイトとCサイト(右)の概要
(出所:コムシスクリエイト)

 その後、隣の土地に、第2期となる2つのメガソーラーが、第1期の売電開始からほぼ4年後となる、2017年10月に稼働を開始した。この第2期は、Bサイト、Cサイトと呼んでいる。FITに基づく売電単価は、36円/kWh(税抜き)である。

 第2期では、2カ所合わせた太陽光パネル出力が約3.920MW、連系出力が3.240MWとなっている。Bサイトは、太陽光パネル出力が約2.305MW、連系出力が1.99MW、Cサイトは、太陽光パネル出力が約1.616MW、連系出力が1.25MWである。

 発電設備は、PCSはいずれもTMEIC製だが、太陽光パネルはAサイトがシャープ製、BサイトとCサイトが京セラ製と、2社の製品を使い分けている。

 基礎と架台については、Aサイトは鋼材とコンクリートを使ったタイプ、BサイトとCサイトでは杭基礎とアルミ架台にした。よりコスト効率を高めた手法に変えている(図4)。

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図4●Aサイト(上)、BサイトとCサイト(下)の基礎と架台
(出所:日経BP)

 BサイトとCサイトは、東京電力による「国内初の募集プロセス(系統容量増強のための入札)」を経て、連系の権利を獲得した。

 コムシスクリエイトが、Aサイトの隣の用地を活用できることが決まり、メガソーラーを新たに設置しようとした時点で、東京電力の送電網への連系で問題が生じた。

 当時、昭和村を含む地域において、太陽光発電所の連系の申し込みが急増したため、一帯の地域から首都圏に送電する15万4000Vの送電線である「上越幹線」の容量が不足する見通しとなっていた。

 このため、東京電力は2014年夏、昭和村を含む群馬県北部における再生可能エネルギー発電電力の連系に関して、入札を実施した(関連ニュース:送電線増強の負担金で、国内初の入札、群馬県北部が対象)。送電容量を増やすための工事に要する負担金の単価を入札し、高額の応札者から系統への接続権を与えた。

 コムシスクリエイトは、この入札で、昭和村における合計出力約3.24MWの連系の権利を得た。これによって、BサイトとCサイトを事業化できた。東京電力の送電網の増強に合わせて施工し、2017年10月に連系した。

 この応札額に関して、コムシスクリエイトは明らかにしないものの、東電にとって、想定していた以上の高額の応札額だったようだとしている。

 東電の発表によると、昭和村を含む募集エリア「I-4」では、55件・合計容量56MWの応札があった。応札の最低単価は1.35万円/kW、最高単価が8.50万円/kWだった。このうち契約に至ったのは、22件・合計容量19MWだった。

 この後、こうしたスキームは「募集プロセスと」と呼ばれ、電力広域的運営推進聞(OCCTO)が主催する形で全国的に実施されることになった。送電線の容量不足対策に関する工事費負担金を、複数の事業者が透明性を持って負担する仕組みとして広がっている。

落雷で遠隔監視が途絶える

 稼働後の発電量は、2013年10月に売電を開始してから、丸6年が経ったAサイトと、4年遅れて2017年10月に売電を開始してから丸2年のBサイト、Cサイトともに、似たような傾向で推移している。

 いずれも、月によるばらつきはあるが、年間を通してみると、事業計画時の予想に対して約1割、上振れする状況が続いている。

 中でも発電量が良好だったのは、2018年だった。コムシスクリエイトが運営している国内各地のどの太陽光発電所も、発電量が好調に推移した中で、昭和村のメガソーラーも特に好調な年になったという。

 除草や除雪は、当初から近隣地域のシルバー人材センターに依頼している。除草は、春と秋の1回ずつに加えて、夏は状況に応じて1~2回、依頼している。

 除雪は、2017年~18年にかけての冬は依頼回数が比較的多く、翌シーズンの2018年~19年の冬は依頼回数が少なかったなど、年によって降雪の状況が異なる。

 山あいに立地し、北側には森があり、この森の中がカラスの根城になっている。このため、カラスが石を咥えて飛来し、上空から太陽光パネルをめがけて石を落とすことによってパネルが割れる被害が多く起きるのではないかと心配していた。しかし、今のところ、それほどの被害ではないという。

 ただし、北関東では雷雨が激しいこともあり、年に数回、落雷によるとみられる系統の停電によって、売電が止まることがある。

 2019年夏には、PCSの遠隔監視を担う通信機能に異常が生じた。Aサイトの4台のうち1台から、発電量のデータが届かなくなった。売電用メーターからのデータは変わらずに届いており、そのメーターが示す売電量の数値から、このPCSも通常通りに発電を続けており、入出力の機能には異常が生じていない。

 コムシスクリエイトでは、この通信機能の異常は、落雷による影響と推察している。誘導雷によるサージによって、通信機能が損傷する場合があることが知られている(関連コラム:雷対策の盲点は「ネットワーク化」、気象センサーや遠隔監視システムから被災)。

 この通信の不通を解消するため、コムシスクリエイトでは、PCSメーカーや通信システムメーカーに対して、原因の究明と復旧への措置を求めている(図5)。

図5●PCSメーカーによる調査の様子
(出所:日経BP)
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 このプロセスが、必ずしも迅速に進んでいないようだ。

 PCSメーカーに、通信システムまで一貫で依頼している場合には、PCSメーカーが一元で対応する。しかし、今回、トラブルのあったPCSの場合、通信システムはPCSメーカーに依頼せず、個別に調達、設置した。

 これによって、PCS側に原因があるのか、通信システム側に原因があるのかの特定に際して、それぞれのメーカーが現地を訪れ、個別に調べることことなどが、時間を要することにつながっている。

●発電所の概要
発電所名サン・ファーム千年の森
(昭和村千年の森太陽光発電所 Aサイト)
所在地群馬県利根郡昭和村大字川額
敷地面積約5万m2
発電設備の設置面積約3万9000m2
太陽光パネル出力約2.419MW
連系出力1.99MW
年間予想発電量約240万kWh
投資額約8.1億円
発電事業者コムシスクリエイト(東京都品川区)
EPC(設計・調達・施工)サービス日本コムシス
O&M(運用・保守)日本コムシス
太陽光パネルシャープ製
(多結晶シリコン型、出力240W/枚・1万80枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格容量500kW機・3台、490kW機・1台)
アレイの構成7段、設置角 15度、間隔 4.2m〜5.0m
ストリングの構成14直列、720回路、接続箱 72台
売電開始2013年10月11日
固定価格買取制度(FIT)上の売電価格40円/kWh(税抜き)
売電先東京電力エナジーパートナー
●発電所の概要
発電所名サン・ファーム千年の森 II
(昭和村千年の森 II 太陽光発電所 Bサイト、Cサイト)
所在地群馬県利根郡昭和村大字川額
敷地面積約6万800m2
発電設備の設置面積約4万2300m2
(Bサイト:2万4800m2、Cサイト:1万7500m2
太陽光パネル出力約3.920MW
(Bサイト:2.30472MW、Cサイト:1.61568MW)
連系出力3.240MW
(Bサイト:1.990MW、Cサイト:1.250MW)
年間予想発電量約460万kWh
発電事業者コムシスクリエイト(東京都品川区)
EPCサービス日本コムシス
O&M(運用・保守)日本コムシス
太陽光パネル京セラ製
(出力270W/枚、Bサイト:8536枚、Cサイト:5984枚、合計 1万4520枚)
PCS TMEIC製
(Bサイト:665kW機・2台、660kW機・1台、Cサイト:750kW機・1台、500kW機・1台)
アレイの構成4段、設置角 15度
ストリングの構成22直列、660回路
売電開始2017年10月2日
固定価格買取制度(FIT)上の売電価格36円/kWh(税抜き)
売電先東京電力エナジーパートナー