八雲町に姿を現した国内最大の「蓄電池併設メガソーラー」

放牧場跡地に102MWのパネルと52MWの蓄電池を設置

2019/11/12 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

町を挙げて再エネを推進

 「日本で唯一、太平洋と日本海の両方に面している市町村はどこでしょう?」――こんな物知りクイズに出てきそうな問題の答えは、北海道八雲町だ。

 同町は、渡島半島の北部、函館と室蘭の中間に位置し、酪農が盛んで乳製品や牛肉を生産するほか、水産業では、ホタテガイの養殖が盛んだ。

 再生可能エネルギーの開発に熱心で、2017年に「八雲町再エネ導入促進ビジョン」を作成した。すでに山崎地区に2MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)が1カ所、畜産廃棄物を使ったバイオガス発電所(150kW)が4カ所稼働済みのほか、地熱や風力開発にも取り組んでいる。同町では、北海道電力との系統連系が難しくなっているため、熱利用や水素製造の形で、エネルギーの地産地消を進めていくことも検討している(図1)。

図1●八雲町・上の湯温泉郷では、地熱資源の利用が期待されている
(出所:日経BP)
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町の電力需要の3倍以上を発電

 こうした町を挙げての再エネ開発にとって、象徴的なプロジェクトが、太平洋岸沿いの山﨑地区と花浦地区で進んでいる。国道5号線をクルマで北上すると、右の車窓には約3kmに渡って、整然と並べられた太陽光パネルが延々と続いている(図2)。

図2●国道5号線沿いに延々とパネルが続く
(出所:日経BP)
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 これは、太陽光パネル出力102.3MW、連系出力75MWのメガソーラー「ソフトバンク八雲ソーラーパーク」だ。2018年3月に着工し、すでにパネル設置や変電設備はほぼ完成しており、年内には受電し、来年4月からは試験送電、10月には商用運転が始まる予定だ。

 発電事業の主体は、ソフトバンクグループで再生可能エネルギー事業などを行う SB エナジー(東京都港区)と三菱 UFJリース(東京都千代田区)が折半出資で設立するSPC(特別目的会社)「北海道八雲ソーラーパーク合同会社」となる。

 事業用地は、太平洋岸に面した平地で、南北に細長い。太平洋汽船(東京都千代田区)と太平洋農場(北海道二海郡)が所有・管理していた元放牧地で、約132 haに達する。現在では八雲不動産サービスの所有地となる。SPCが賃借して発電事業を行う(図3)。

図3●南北に細長い事業用地に30万5000枚のパネルを設置した。中央左の白い筐体が蓄電池システム
(出所:SBエナジー)
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 年間の発電量は約1億68万2000kWhを見込む。これは一般家庭約 2万7967世帯分の電力消費量に相当し、八雲町における全電力需要の約3.3倍に達する。

東芝とTMEICが設計・施工

 このプロジェクトでは、メガソーラーの短時間における出力変動(短周期変動)を平滑化させるため、容量27MWhの蓄電池システムを併設する。蓄電池を制御するパワーコンディショナー(PCS)の定格出力は52.5MW。リチウムイオン電池を採用する。

 パネル出力100MW、連系出力75MWという出力規模は、運転開始時点の稼働済みメガソーラーの中で、国内10位以内になる。さらに、「蓄電池併設型メガソーラー」としては、国内はもとより世界的にも最大級になりそうだ。

 EPC(設計・調達・施工)とO&M(運営・保守)サービスは、東芝エネルギーシステムズと東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が共同で担う。太陽光パネルは東芝製(72セル・335W/枚)、太陽光パネルと蓄電池のパワーコンディショナー(PCS)はTMEIC製を採用した。蓄電池システムは、韓国LG化学製蓄電池を使って、TMEICが構築した。13kmに及ぶ自営線は北海電気工事が担った。

 冬季の積雪に対応し、パネルの設置角は30度、地面からパネル最低部までの設置高は1.3mを確保する(図4)。

図4●東芝製パネルとTMEIC製のPCSを採用
(出所:日経BP)
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「変動率毎分1%」を蓄電池で対応

 蓄電池を併設したのは、2015年4月に北海道電力が公表した「太陽光発電設備の出力変動緩和対策に関する技術要件」に対応するため。この要件では、メガソーラー出力の変動幅を、蓄電池の充放電との合成出力で、1分間にPCS定格出力の1%以内に収める「変動率毎分1%」を求めている。TMEICの制御システムにより、この要件に対応するようにメガソーラーと蓄電池のPCSを連係制御する。

 再エネに併設する蓄電池に関しては、導入費の一部を国からの補助金で賄えるケースも多いが、今回は、こうした補助金制度を活用していない。

 加えて、同発電所は、北海道電力管内の「30日等出力制御枠」を超えて以降の接続申し込みとなったことから、「無制限・無補償の出力抑制」が系統接続の条件となった。今後、道内の再エネ導入がさらに進んだ場合、北電から年間30日を超える出力抑制の指令が課される可能性があり、発電事業の事業性にリスクが増すことになる。

 「蓄電池のコスト負担」に加え、「無制限の出力抑制」といった事業リスクを抱えながらも、今回は、プロジェクトファイナンスの組成に成功した。

 こうした背景には、将来の出力抑制に関する評価・分析が進んできたことに加え、蓄電池システムの低コスト化がある。また、通常、「変動率毎分1%」の連系条件の場合、PCS出力の8割程度の蓄電池出力(kW)が目安とされているが、今回は7割程度となっている。それが実現できたのは、メガソーラーと蓄電池のPCSが同じTMEIC製で、メガソーラー出力と蓄電池の充放電を統合制御する「TMBCS(TMEIC蓄電池コントロールシステム)」を採用したことも大きい(図5)。

図5●TMEICが蓄電池システムと制御システムを構築
(出所:日経BP)
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「仮組みヤード」で事前に組み立て

 加えて、今回のプロジェクトは、100MW越える規模ながら、大規模な土木造成をせずに土地なりにパネルを設置した。ほぼ平坦なため、同じパターンのアレイ(パネルの設置単位)構成に統一して設計・設置できるなど、施工効率を高めやすいという面もあった。

 アレイ構成は、太陽光パネル・横置きで3段9列(縦3枚・横9枚)を基本単位とし、これを設置角30度、アレイ最低部から地面までの設置高1.3mで設置した。

 アレイ架台の施工では、このアレイ架台を3分割したユニットをまず「仮組みヤード」で連続的に組み上げていった。これをクレーンで吊り上げてトラックに載せてサイト内の所定の工区まで運び、再びクレーンで吊り降ろして据え付けた(図6)(図7)(図8)。

図6●「仮組みヤード」でアレイ架台を組み立てる
(出所:SBエナジー)
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図7●トラックに載せて所定の工区まで運ぶ
(出所:SBエナジー)
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図8●クレーンで吊り下げて基礎の上に据え付ける
(出所:SBエナジー)
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 メガソーラー建設で、こうした「仮組み方式」は珍しい。一般的に特別高圧送電線に連系するクラスの大規模太陽光の場合、設置する地面の角度や各工区の形状などによって、複数のアレイ構成を用意しておき、かつ据え付け場所での調整が重要になる。

 その点、今回は、全体が平坦でほぼ四角の工区のため、設置した1万1312基のアレイ架台は1つのパターンで済んだ。そのため、事前に連続的に組み上げてから、所定の工区に運んで据え付け、最終的に微調整するという方式が効率的だったという。

特産のホタテ貝殻で土壌改良

 ただ、今回の事業用地は、海岸に近い泥炭地のため、基礎の施工には手間がかかった。地耐力を補うため、杭基礎を地中4~6mまで埋め込み、その周囲をコンクリートで固定する方式を採用した。そのため、事前に掘削した穴に杭を中空に固定しておくための治具を作成し、一度に8つの杭基礎を固定して、効率的にコンクリートを打設できるようにした(図9)。

図9●杭を固定する治具を作成して効率的に施工した
(出所:SBエナジー)
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 加えて、八雲町の面する内浦湾(噴火湾)で養殖されているホタテガイの貝殻を砕いて地表面の一部に撒き、土壌改良材として利用している。泥炭は酸性のため、貝殻の炭酸カルシウムによって中和されるとともに、土壌を乾燥させる効果がある(図10)。

図10●地域特産のホタテの貝殻を使い土壌改良
(出所:日経BP)
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 八雲町は、北海道の中では比較的、温暖な地域だが、一冬の最深積雪は平均して80cm程度に達する。そのため、太陽光パネルを30度まで傾けて設置し、パネルに積もった雪を滑り落ちやすくし、発電ロスを最小に抑える設計にした。

 アレイの前には雪の山ができるが、設置高を1.3m確保したことで、平年程度の積雪であれば、一冬にアレイ間を除雪しなくても、雪山とアレイがつながらない見込みという(図11)。

図11●冬季に建設中の「八雲ソーラーパーク」。パネルには雪が積もっていない
(出所:SBエナジー)
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町と連携して工事日程を調整

 八雲町は、早くから再エネの普及に取り組んできたこともあり、「ソフトバンク八雲ソーラーパーク」の開発から建設には、積極的に支援してきた。

 2018年5月に開催された着工式では、岩村町長が、「八雲町は、持続可能で自立できる安心・安全な町づくりを目指している。自立の柱は食糧とエネルギーで、再生可能エネルギーの開発に取り組んでいきたい。蓄電池を併設した約100MWのメガソーラーは、その第一歩になる」と、期待感を示した。

 町では、発電事業者と二人三脚で地元説明会を開催してきたほか、太陽光パネルや受変電設備のほか、13kmもの自営線の地下埋設工事などの工程スケジュールを発電事業者と共有し、地域のイベントや農作業などに支障がない日程をアドバイスするなど、緊密に連携してきた。

 SBエナジーの三輪茂基社長は、着工式で「ソフトバンクグループではインドで300MWを超えるメガソーラーを運営しているが、蓄電池併設型としては八雲町のサイトが世界的にも最大クラスになる。地域社会と密着した太陽光発電所という意味でも海外には例がない。八雲町を再エネの町として国内外にアピールしていきたい」と述べた。

●設備の概要
発電所名ソフトバンク八雲ソーラーパーク
住所北海道二海郡八雲町山崎および花浦
発電事業者北海道八雲ソーラーパーク合同会社(SB エナジーと三菱 UFJリースの折半出資によるSPC)
設置面積約132 ha
発電所出力太陽光パネルの出力約102.3MW、連系出力75MW
蓄電池出力容量27MWh、出力52.5MW
年間予想発電量約1億68万2000kWh
売電単価36円/kWh
EPC(設計・調達・施工)サービス東芝エネルギーシステムズ、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)、北海電気工事
O&M(運用・保守)東芝エネルギーシステムズ、TMEIC
太陽光パネル東芝製(72セル・335W/枚・30万5424枚)
パワーコンディショナー(PCS)TMEIC製(750kVA・100台)
蓄電池システムTMEIC製(LG化学製リチウムイオン電池、PCS・TMEIC製)
自営線工事北海電気工事(約13km)
着工2018年3月
運転開始予定2020年10月