大型重機3台を常備して除雪、七戸町のメガソーラー

土木造成の工夫で雪国でも過積載率1.3倍を確保

2020/02/10 05:00
金子憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

雪国に20MWのメガソーラー稼働

 青森県東部に位置する七戸町は、かつて七戸城の城下町として栄え、現在は町のほぼ中央に東北新幹線・七戸十和田駅があり、八甲田連峰や十和田湖観光の玄関となっている。馬の産地として知られるほか、ニンニクやナガイモの生産も盛んだ。

 七戸町では、「地域新エネルギービジョン」を掲げ、地球環境と緑豊かな自然を守るため、再生可能エネルギーの普及に力を入れている。道の駅や町役場庁舎や学校など、公営施設に太陽光発電設備を導入している。

 このほか、町内には、民間企業による高圧や特別高圧送電線に連系するメガソーラー(大規模太陽光発電所)が複数サイト、稼働している。

 太陽光やバイオマス発電の開発・施工を手掛けるシン・エナジー(神戸市)は、オリックスと共同で七戸町に太陽光パネルの出力19.6MW、連系出力15MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「七戸町卒古沢太陽光発電所」を建設し、12月3日に竣工式を開催。2020年1月に運転を開始した(図1)。

図1●出力19.6MWの「七戸町卒古沢太陽光発電所」
図1●出力19.6MWの「七戸町卒古沢太陽光発電所」
(出所:シン・エナジー)
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5工区に分けて設置

 同町北部の卒古沢地区の原野・山林・雑種地約48haに太陽光パネルを約5万8000枚設置した。年間発電量は約2万MWhを見込み、これは一般家庭約5550世帯分の電力消費量に相当する。事業主体の青森七戸メガソーラー発電所合同会社は、オリックスが65%、シン・エナジーが35%を出資する。

 施工は大林道路・シン・エナジー共同企業体が担当した。太陽光パネルは韓国LGエレクトロニクス製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した(図2)。

図2●太陽光パネルは韓国LGエレクトロニクス製、PCSはTMEIC製を採用した
図2●太陽光パネルは韓国LGエレクトロニクス製、PCSはTMEIC製を採用した
(出所:日経BP)
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 七戸町の東部は、比較的平坦な高台で、広大な田畑や森林が続く。完成した「七戸町卒古沢太陽光発電所」は、段上に整地された平地にA~Eの5つの工区を設け、林の間に整然と太陽光パネルが敷かれている。

 それぞれの工区はほぼ長方形で、北端のA工区から、南東方向に少しずつ南にずれながらBとC工区が続き、DとE工区は、C工区の東側に隣接している。

C工区は調整池の機能も

 実は、5つの工区のうち、B工区は、元々は谷状の窪地になっていて、隣接するC工区で掘削した土を運び込んで盛土し、平らに造成した。C工区は、大量の切土によって、5工区のなかで最も低いレベルに造成し、調整池の役割も持たせている(図3)。

図3●A~Eの5つの工区に分けてパネルを設置した
図3●A~Eの5つの工区に分けてパネルを設置した
(出所:日経BP)
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 こうした大規模な造成工事により、運んだ土量は約50万m3に達した。切土と盛土を同量にして敷地外からの残土の出し入れがないようにするため、事前に綿密に造成を設計した。こうした緻密な造成工事の設計・管理は大林道路が中心に担ったという。

 調整池の役割も兼用するC工区は、大雨で短時間に雨量が増した場合、他の工区の表面流水も含めて、同工区全体に最大20cmの深さまで貯水できるようになっている。

 相対的に日照量の少ない積雪地域のメガソーラーでは、連系出力を上回る出力のパネルを設置する「過積載(積み増し)」の比率を上げることが、設備利用率を上げる手法として、より重要になる。「七戸町卒古沢太陽光発電所」が、限られた用地面積で1.3倍を超える過積載率を確保できたのは、こうした造成面の工夫が背景にある。

設置角30度、設置高1.2mに

 七戸町の属する青森の県南地域は、日本海側の津軽地域に比べると比較的、雪は少ない。ただ、七戸町は、県南地域のなかでは西側に位置し、西部は八甲田山系に連なる山地になっており、雪は多めだ。最大積雪深は1m前後になり、全国的に雪の多かった2018年には1.4mに達した。町には七戸町営スキー場があるなど、冬は雪と共に暮らすことになる。

 「七戸町卒古沢太陽光発電所」では、パネル横置き4段(4枚)のアレイ(パネルの設置単位)構成とし、雪対策として、設置角を30度に傾け、アレイの最低部と地面までの設置高を1.2m確保した。パネルに積もった雪が滑り落ちやすくし、パネル下にできる雪山がアレイ最低部につながりにくくするためだ(図4)(図5)。

図4●地面からアレイ最低部の設置高を1.2m確保した
図4●地面からアレイ最低部の設置高を1.2m確保した
(出所:日経BP)
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図5●設置角30度でパネルを設置
図5●設置角30度でパネルを設置
(出所:日経BP)
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 また、架台設計では、通常よりも、太陽光パネルを裏から支える垂木を増やし、積雪時にパネルにかかる応力を軽減するようにした。こうした垂木部材の追加は、積雪の重みで損傷するパネルが多いことから、雪国の設計仕様では一般的になってきているという(図6)。

図6●架台設計では垂木を追加した
図6●架台設計では垂木を追加した
(出所:日経BP)
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 国内の野立て型太陽光発電所では、パネルの設置角を10~15度まで寝かせ、アレイの高さを低くする設計が一般的になっている。これによりパネルの影を短くし、アレイの離隔距離を狭めることで単位面積当たりのパネル設置枚数を増やせる。

 そんななかでも雪国のメガソーラーでは、設置角を30度前後まで傾ける設計が多い。面積当たりの設置効率を高めるよりも、少しで早く雪を滑り落とす方が、冬場の発電量を増やすとともに、パネルへの荷重を減らし損傷を防げるからだ。

離隔距離4.2mで大型重機を活用

 実は、シン・エナジーでは2017年12月、岩手県滝沢市に「滝沢市太陽光発電所」を稼働している。パネル出力8.82MWで同社として初めての特別高圧送電線に連系するメガソーラープロジェクトだった。

 「滝沢市太陽光発電所」でも、太陽光パネルは韓国LGエレクトロニクス製、PCSはTMEIC製を採用したが、パネル1枚の出力は315Wから340Wに伸び、PCSは、定格出力750kW機から同1667kW機になっている。TMEIC製PCSの750kW機では筐体に収納するタイプだったが、1667kW機では、屋外設置可能なタイプになっている。

 同発電所の架台は、パネル横置き4段のアレイ構成で、設置角30度、設置高は約1.1mに設計していた。「七戸町卒古沢太陽光発電所」は、この滝沢サイトの設計をベースに、さらに設置高を10cm高くした。

 滝沢市は、七戸町ほど雪が多くないことから、こうした仕様でも、冬の間に1回も除雪作業をしないという前提で設計した。

 だが、実際には、大雪が続くとパネル下の雪山を取り除く作業が必要になることがあり、その際、滝沢サイトでは、アレイとアレイの離隔距離が3m台のエリアもあり、大型重機が使いにくいことがわかっていた(図7)(関連記事)。

図7●岩手県滝沢市に稼働中の「滝沢市太陽光発電所」
図7●岩手県滝沢市に稼働中の「滝沢市太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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大型重機3台を常備

 そこで、「七戸町卒古沢太陽光発電所」では、アレイとアレイの離隔距離を4.2mまで広げたうえで、ブルドーザー2台、除雪ロータリー1台の合計3台の重機を敷地内に常備しておき、冬期には日常的に除雪作業を行うことにした。七戸町では、最大積雪深が1mを超えることもあり、それにパネルから滑り落ちる雪が加われば、アレイ前の雪山は、容易に設置高1.2mを超えることが予想されたからだ(図8)。

図8●ブルドーザー2台、除雪ロータリー1台の合計3台の重機を敷地に常備
図8●ブルドーザー2台、除雪ロータリー1台の合計3台の重機を敷地に常備
(出所:日経BP)
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 約20MWもの大規模な発電所だけに、冬期は、ほぼ毎日、敷地内のどこかで除雪作業をする頻度になるという。昨年12月下旬に取材で現地を訪れた際にも、重機が稼働して除雪作業をしており、雪山がアレイ下に達しているエリアはほとんどなかった(図9)。

図9●重機を使いパネル下の雪山を取り除いている
図9●重機を使いパネル下の雪山を取り除いている
(出所:日経BP)
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 こうした除雪作業は、地元の事業者に委託している。アレイ下の雪山とアレイ上の雪がつながらずに維持することを求め、除雪の回数や時期などは任せているという。一冬で必要になる除雪回数を概算し、それを前提に定額で契約している。異例の積雪量になり、大幅に想定作業量を上回った場合などは、その都度、協議することになっている。

 ちなみに、「七戸町卒古沢太陽光発電所」に面した道は、地域の主要道のため、自治体が除雪作業を行うことになっているという。

 同じ青森県内でも、さらに雪の多い十和田市の山間にある太陽光発電所では、サイトに通じる道が除雪されず、頻繁に除雪できないケースもある。シン・エナジーにはこうした立地にサイトはないものの、他社でこうした場所に太陽光発電所を建設した例はあり、その場合、パネルを45度まで傾け、アレイの設置高を2.7mも確保している例もあるなど、さらに積雪対策を徹底する必要がある(図10)(関連記事)。

図10●東京組が八甲田連峰の山麓で運営する「蒼星の森太陽光発電所」
図10●東京組が八甲田連峰の山麓で運営する「蒼星の森太陽光発電所」
(出所:東京組)
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東北地方で15カ所57MW

 シン・エナジーは、省エネ関連のベンチャー企業として創業し、太陽光やバイオマス発電など再エネの開発、設計・施工を手掛けるとともに、電力小売りにも参入している。地域産の残材などを活用した小規模なバイオマス発電や、自治体との連携に取り組むなど、地域に根差した事業スキームを重視している。

 太陽光分野では、EPC(設計・調達・施工)サービスの受託に加え、自社発電事業として開発中を含めて65件で合計出力110MW以上を手掛けている。なかでも、東北電力管内では、15カ所・約57MWを開発・運営するなど、重点的な開発地域となっている。

 同社では再エネ事業と農業の相乗効果も目指している。そのためにはハウス農業のノウハウが必要と考え、2019年4月には秋田県大仙市で地元企業と協業し、ブランドミニトマト「恋ベリー」の栽培を開始した。

 将来的には、バイオガスプラントから排出する消化液や排熱、木質バイオマス発電から排出する排熱をハウス農業に活用するなど、再エネと農業を連携させた地域循環、地域共生型のビジネスモデルを目指している。

 同社は、2018年4月に社名を洸陽電機からシン・エナジーに変更した。新社名の由来は、共生(Symbiosis)とエネルギー(Energy)を融合したもので、エネルギーを礎に、人、自然、生物が共生できる社会の実現を企業理念に掲げている。

●設備の概要
発電所名七戸町卒古沢太陽光発電所
住所青森県上北郡七戸町字卒古沢
発電事業者青森七戸メガソーラー発電所合同会社(オリックス65%、シン・エナジー35%出資)
設置面積約48ha
出力太陽光パネルの出力19.6MW、連系出力15MW
年間予想発電量約2万MWh
EPC(設計・調達・施工)サービス大林道路・シン・エナジー共同企業体
O&M(運用・保守)シン・エナジー
太陽光パネル韓国LGエレクトロニクス製(340W/枚・約5.8万枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(定格出力1667kW機・9台)
架台エスアールジータカミヤ製
着工日2018年4月
売電開始日2020年1月