アレイ間「1m」、セグウェイと乗用型草刈機が活躍、松阪の特高メガソーラー

発電量の最大化とO&Mの効率の両方を追求

2020/02/18 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 三重県松阪市にある「松阪中核工業団地」の隣に、太陽光パネルの合計出力約16MW、パワーコンディショナー(PCS)の出力(連系出力)12MWとなるメガソーラー(大規模太陽光発電所)「松阪山室メガソーラー発電所」がある(図1)。

図1●工業団地の隣に立地
太陽光パネルの増設前の画像(出所:三交不動産)
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 2015年12月に運転を開始してから、4年を超えた。

 発電事業者は、三重交通グループホールディングスの事業会社である三交不動産(津市)である。

 同社は、地元の三重県内に集中して多くの太陽光発電所を開発・運営している。稼働ずみの太陽光発電所は、24カ所(認定上の発電所数は27カ所)・合計出力約89MWに達している(関連コラム1:出力約3.6MWでも高圧配電線に連系する津市栗真町屋町の発電所、同コラム2:志摩市の2つの特高メガソーラー、同コラム3:防災訓練でも地域が活用する伊勢市二見の発電所)。

 太陽光発電所のサイト数と固定価格買取制度(FIT)の認定上の発電所数に、3カ所の差があるのは、開発時の土地の活用状況の変化や、発電設備の配置計画の変更に伴う経済産業省や中部電力との協議の結果、複数の発電所で構成することになった発電所が、2カ所・認定上では5カ所あるためだ。

 その一つが、松阪山室のメガソーラーである。

 当初の計画では、太陽光パネルの出力が約11.4MW、連系出力約8.8MWで、経産省から設備認定を取得した。同社にとって、特別高圧送電線に連系する初めてのメガソーラーでもある。

 その後、アレイ(太陽光パネルの設置単位)間の離隔距離を狭くし、設置する太陽光パネルの枚数を増やすことにした。

 三交不動産では、経験を積むにしたがって太陽光発電所のアレイ間の離隔距離を徐々に狭くしてきた。最初期は1.5mと1.25mの併用だった。松阪山室のメガソーラーでは、当初は約1.1mの間隔で設計していたが、途中で約1.0mまで詰める配置に変えた(図2)。

図2●列間は約1.0mまで狭めた
(出所:日経BP)
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 アレイ間を狭めるのは、約1.0mが限界と判断している。それ以上狭くすると、施工や保守時の作業性を損なうデメリットが大きくなり過ぎるという。

 太陽光パネルの設置角は、同社の他の太陽光発電所と同じ10度まで寝かせ、影の影響を抑えた。ただし、ここまで間隔を詰めると、冬には最下段に影のかかる時間が出てくる。この影による発電量のロスよりも、パネル設置枚数の増加による発電量の増加効果が大きいと判断した。

 同社が採用しているCIS化合物型パネルは、一部に影がかかっても、結晶シリコン型に比べて発電量の低下度合いが少ない。この利点を生かした配置である。

 三交不動産の太陽光発電所は、施工や設備については、ほぼ一貫して同じ企業と取り組み、関係を深めてきている。EPC(設計・調達・施工)サービスは千代田化工建設が担い、CIS化合物型の太陽光パネルはソーラーフロンティア製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用し続けている。

 同社によると、メガソーラーの設計を検討する際には、EPCや発電設備メーカーと関係を深めていることが奏功しているとしている。

 三交不動産では、太陽光パネルの出力と特高送電線への連系出力の両方を増やすことを検討し、経産省や中部電力と協議した。この結果、連系出力は、当初計画の約8.8MWから10.5MWに、太陽光パネルの出力は約11.4MWから約13.5MWに増えた。

 この計画変更でも、まだ土地に余裕があった。そこで、新たに設備認定を取得し、高圧配電線に連系する出力約1.9MWのメガソーラーを設置し、敷地の北端近くの高圧線に連系した。

 これによって、認定上の売電単価が40円/kWh(税抜き)で、特高送電線に連系する太陽光パネル出力約13.6MW、連系出力10.5MWの「第一発電所」、同32円/kWh(同)で、高圧配電線に連系する太陽光パネルの出力約1.9MW、連系出力1.5MWの「第二発電所」という構成で稼働する計画に変わった(2016年6月公開のメガソーラー探訪)。

パネル約4000枚、700kW分を増設 

 その後、売電を開始してからちょうど1年後の2016年12月に、出力170W/枚の太陽光パネルを約4100枚増設し、過積載の比率を上げた。太陽光パネルの出力は合計で約700kW増え、増設前の約15.4MWから約16.1MWとなった。

 特高送電線に連系している第一発電所は、636.48kW(3744枚)増設し、14.19296MW(8万3488枚)となった。高圧配電線に連系している第二発電所は、65.28kW(384枚)増設し、1.94208MW(1万1424枚)となった。

 この太陽光パネルの増設に伴って、年間発電量の予想は、稼働当初の約1890万kWh(一般家庭約5200世帯の消費電力に相当)から、約1979万kWh(同約5500世帯相当)に増えている。

 新たに増やした太陽光パネルは、第一・第二発電所内の空いていた場所に追加した(図3)。余裕を多めにみて太陽光パネルを配置していたために、パネルを積み増せる余地があった。

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図3●上の図の赤が増設分、連系設備の近くにも追加
左下は増設前の連系用の昇圧変圧器の周辺、右下が同じ場所の増設後(出所:上2段は三交不動産、下は日経BP)

 同社の案件に限らず、FITスタート初期に開発されたメガソーラーほど、余裕を持って太陽光パネルが配置されている傾向がある。

 三交不動産でも、多くの太陽光発電所を開発・運営していく中で、敷地内の余剰スペースを、現状より少し減らしても、適切な運用・保守が可能なことが分かってきた。そこで、その場所に太陽光パネルを並べることで、発電所の事業性を向上させることを検討してきた。

 多くの発電所で、こうした敷地内の状況を調べた上、そこに太陽光パネルを並べるための費用などとのバランスを検証し、パネルを追加した。

 この増設も、約1.0mのアレイ離隔距離の選択と同じように、影が多少かかる時間があっても、太陽光パネルを増やすことによる費用対効果の方が大きいことから実行した。

 松阪山室のメガソーラーでは、とくに第一発電所の外周付近に、太陽光パネルを増やせる余地があった。中でも、南端は山林と隣り合うために、影による影響を多めに見積もっていたが、実際に運営が始まってみると、想定していたよりも影の影響が少ないことがわかり、太陽光パネルを増設できるスペースとなった(図4)。

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図4●南端の山林近くに多く増設
(出所:日経BP)

 スペースが十分に空いているように見えても、太陽光パネルを増設しなかった場所もある。おもに、地中に排水設備が埋まっている場所である。

 松阪山室のメガソーラーでは、敷地内の複数の場所で、地中に1m角以下の小さな窪みを設け、そこに貯まった雨水を暗渠排水溝で排水路に流している。この暗渠排水溝が埋まっている場所には、杭基礎を打ち込むことができず、増設しなかった(図5)。

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図5●広い場所でも、暗渠があり追加できなかったスペースもある
(出所:日経BP)

セグウェイで目視点検を効率化

 発電量は、事業計画時の予想に比べて、上振れで推移している。CIS化合物型の太陽光パネルについても、目立つような劣化を感じることはないとしている。

 ただし、同社の他の太陽光発電所には、さらに発電量が予想を上回っているサイトがあり、とくに津や志摩にある案件と比べた場合、上振れの度合いは高くないとしている。この二つの地域は、とくに日射の条件がよく、飛び抜けて発電量が上振れしているようだ。

 また、松阪山室のメガソーラーでは、O&M(運用・保守)作業の効率化を目的に、立ち乗り式電動二輪車「セグウェイ」も導入した(動画)。

動画●幅1.0mの狭いところもセグウェイですいすい
(出所:日経BP)

 セグウェイは、乗った人の重心の移動によって、走行する方向や速度などを操作する仕組みで、アクセルやブレーキ用ペダルなどはない。ハンドルはあり、傾けた方向に進むが、あくまで重心の移動を促すための役割となっている。

 太陽光発電所は、出力規模が大きくなるほど、広い敷地に太陽光パネル、接続箱、PCSなどの設備が点在することになる。分散している発電設備を巡回する際、移動に要する時間を短くし、点検作業を効率化することが求められる。

 三交不動産は2016年に、セグウェイを採用した。導入により、メガソーラー内の移動時間を短縮し、歩行による移動に比べて、保守・保安業務に要する時間を大幅に短縮できた。

 例えば、「第一発電所」の点検において、太陽光パネルの目視点検に要する時間を、歩行による場合に比べて約4割削減して、約5時間に短縮できた。

 夏季などの暑い時期には、特に移動による消耗が大きくなるため、時間短縮の効用が大きいと見ている。

 草刈りでも、乗用型を積極的に採用し、同じように作業時間の短縮と作業者の身体的な負担の軽減を実現している。

 敷地内の一部には、土のうが置かれている(図6)。これは、地表の土が集中して吹き飛んだり、雨水の流れが集中して削れやすい場所への対策という。敷地内はほぼ平地だが、こうした地表変化の前兆が見られる箇所があり、先手を打って対策している。

図6●用意されていた土のう
(出所:日経BP)
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 太陽光発電所では、地面に土が露出していると、風で吹き飛んだり、雨水で浸食の進む場合がある。

 三交不動産では、除草剤などで雑草を根絶やしにするとこうしたリスクが大きくなると考え、ある程度、雑草が植生している環境を維持しつつ、乗用型草刈機で適度に刈る運用を採用し、浸食リスクを減らしている。

 松阪山室のメガソーラーでは、通常の土のうを置いているが、「植生土のう」と呼ばれる、特定の草を生やす機能も備える製品を採用している発電所もあるという。

●発電所の概要
発電所名松阪山室メガソーラー発電所
所在地三重県松阪市山室町字貝場
敷地面積約16.4ha
発電事業者三交不動産(津市)
太陽光パネル出力合計約16.13504MW(増設前:約15.43328MW)
 第一発電所:14.19296MW(増設前:13.556MW)
 第二発電所:1.94208MW(増設前:1.876MW)
パワーコンディショナー(PCS)定格出力合計12.0MW
 第一発電所:10.5MW
 第二発電所:1.5MW
年間予想発電量約1979万kWh
(一般家庭約5500世帯の消費電力に相当)
EPC(設計・調達・施工)サービス千代田化工建設
O&M(運用・保守)千代田システムテクノロジーズ
太陽光パネルソーラーフロンティア製(出力170W/枚、9万4912枚)
 第一発電所:8万3488枚(3744枚を増設)
 第二発電所:1万1424枚(384枚を増設)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力750kW・1000V対応機)
売電開始時期2015年12月1日
固定価格買取制度(FIT)上の売電単価(税抜き)第一発電所:40円/kWh、
第二発電所:32円/kWh
売電先第一発電所:新電力、
第二発電所:中部電力